第五幕 祝 脱出
「ちょっと姫様! これなんとかして下さいよ!」
「そうですよ。なんで俺達までこんな目に!」
だってしょうがないじゃない。私、無意味な戦いは好まないもの。
ガリガリと氷の削られる音があちらこちらで聞こえる。
みんな涙目になりながら剣を片手にひざ下まで覆っている氷を削っていた。
私に剣を向けたのは、スレイア様。
スウイいわく、珍しい剣を見ると戦いたくなるらしい。
いるよねたまにそういう人。
これ以上体力奪われたくないし、面倒な事にもなりたくなかったので、マギアに密かに埋め込んでおいた氷の魔石の力を発動させたのだ。
いやぁ、やっぱ勝手にマギアを改造しておいて良かった。
そのおかげで今、まったりと馬を強奪……じゃなくて借りる為に荷物とかいろいろ準備が出来るし。
「姫ご自分がやってる事がわかってるんですか!? 国宝級の代物を勝手に改造したんですよ!?いくら姫だからってやりすぎです!」
わかってるよ。だからマギア見つけても連絡しなかったんじゃん。
「別に良くないですか? 魔石だって国宝級の代物ですし。それに今魔石を所持してるのは、『漆黒の魔女』ぐらいですよ」
「だよね〜」
もうすでに剣を放り投げ諦めたスウイ様が、フォローしてくれた。
だって滅多に手に入らない魔石を貰った上に、ついでに改造する? って聞かれたから、する! する!!ってノリで言っちゃうに決まっている。
「しかし貴方達は羨ましいですね。こんな美しい人の護衛が出来るなんて」
「なら交換するか? 一日で辞任したくなるぞ」
未だ諦めていない騎士たちはせっせと剣を動かしている。
頑張って! 私、陰ながら応援してるから!
さてと、そろそろ行こうかな〜。脱出されると面倒だし。
馬車にまたがると、積んでいた荷物を確認する。
よし、準備万端!!いざ出発〜!!
『姫様』
馬を走らせようとした時に呼ばれたので振り返ってみると、綺麗な服に身を包んだ教会の女神像にも負けない美人が教会の下で膝をついている。
――精霊だ。
『姫様がまたここにお越しになるのをお待ちしております』
「ありがとう。誰かの式に呼ばれたらまた来るよ」
『いいえ。今度こちらにいらっしゃるときは、貴方様の式です』
――は? 私の? 無理だよ。
だって私は――銀の悪魔だから。
「……それじゃあ、もう行くね。バイバイ」
結婚式ねぇ。絶対ない。ない。
可能性ゼロな事がこの先、ゼロじゃなくなるなんて事この時の私はまだわかんなかった。