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第三十五幕 重なる予想とダルディガの伝言

宝石の国として名高いアルル。

面積こそかなりの広さを誇るが、この国はハイヤードと同じように長閑な田舎の国。

それはもう、見渡す限りの田畑と山々ばかり。

そんなこともあって私たちが通っている道も、全く人が通らず民家すらも見当たらない。

でもそんな景色も、ハイヤードと似ていて懐かしかしいのよね。


「こういうのもたまにはいいな。空気がうまい」

反対側の馬車の座席に座るスレイア様は、開けられた馬車の窓から入って来るそよ風に、頬づえをつきながら目を瞑っている。


たしかに空気がおいしく感じる気がするわ。

自然豊かなだけじゃなく、標高のせいもあるかも。


「お世話になる別荘の近くには、大きな湖があるそうですよ。日ごろの疲れを癒してリフレッシュできますね」

「そうだな。ここには煩い王子もいないから、リノアもゆっくり休むといい」

スレイア様のその言葉に、私は思わず噴き出してしまう。

煩い王子。浮かんだあの王子は、私の頭の中でもお小言を言っている。


たしかに――


クスクスとスレイア様と笑っていると、私の隣りから「笑えない」という、ものすごく暗いじめじめとした声が降り注いできた。


「何よ、ロイ。どうしたの?」

「やっぱ、リクイヤード様に黙って出てきたのはマズイって……」

彼は馬車の側面にうな垂れたまま、弱々しく呟く。

視線はずっと下を向いたまま。

も~。せっかくなんだからこの景色楽しめばいいのに。


「そりゃあ、誰でもそうだけど、急に居なくなったら心配するよ。でも、今回はバルト様が事情知ってるから大丈夫だってば」

「心配とかそういうのじゃない。いいか?女の嫉妬も怖いけど、男の嫉妬も怖いんだ。リクイヤード様、あの鬼畜王子と似ている気がするんだよ……二人のタイプはまるっきり違うけど、何をしでかすかわかんないっていうかさ……」

「はぁ?なんでリクが嫉妬するの?っていうか、鬼畜王子って誰よ?」

結婚してるって言っても、契約結婚だし。

リクが私のことを好きってこともないもん。

だって私はリクが関係を持っていた、女性の魅力溢れる貴族令嬢達達とは違う。

だからリクの好みじゃないのは確定してるから。


リクが妬くとしたら、恋人にでしょ。ロイってば、何言ってんの?

そう言えば、リクにもう新しい人出来たのかな?

あれって、一月前ぐらいかな。

リクが女性全員と別れたってササラさん達に聞いたのよね。

みんな何を興奮しているのか、「リクイヤード様が女性全員とお別れなさったのよ!!」と私に力説してくれてたっけ。


「鬼畜王子なんて決まってるだろ。あのシス……――いい。なんでもない。お前に言うと、俺の身が危なくなる」

ロイは青ざめた顔のまま自分の身を温めるように両手で体を抱きしめるようにすると、ぶるぶると震えだした。

なんか、こんな光景前にみたことあるような無いような。


「そう深く考える事はないだろ。事情を知っている父上がなんとかなさるはずだ。それにリクイヤードに知らせなかったことに私は賛成だ。事情が事情にしろ、間違えなくこちらに着いて来たからな」

「えぇ、絶対に着いてきてますね」

「その場合の護衛を増やさなけらばならないし、そうなったら他の騎士にリノアのことも話さなければならなくなるしな。だから父上も黙っていたのだろう。まぁ、何かあれば父上が対処するだろうし、リクイヤードも大人だからわかるだろう」

「そうですよね。国王様がいら――」

『シルク様』

――え?

今までロイ達の話に耳を傾けていたんだけど、なんか名前を呼ばれたような気がして、右窓の辺りを見回す。

すると馬車の金色の窓枠のところに真っ白い鳥がとまっていた。


『突然のご無礼をお許し下さいませ』

「いいよ、気にしないで。ねぇ、貴方はもしかしてちょっと前に通った湖の精霊?気配が同じような気がするから」

『さようでございます。まだ私の力が届く範囲ですので、こうして鳥に姿を変え飛んでまいりました。姫はダルディガという者をご存じですか?』

「ダルディガ?うん、知ってるよ」

ダルディガっていうのは、リクの愛剣。

なかなかの年代物で、ギルアの歴代の王は代々継承されてきたそう。

いろいろ条件が重なり、ダルディガは精霊化しはじめていて言葉を話せるようになっている。

まだまだ力が足りなく姿を形づけることは出来ないけどね。


あ、そう言えば私ダルディガが精霊化してるのリクに言ってなかったわ。

私、ダルディガと話す時は言葉に出さないから、リク絶対に気づいてない。

だってダルディガが黙ってて欲しいって言うんだもの。

あのあいさつしかしてくれない無口なダルディガの頼みだし。


私達は精霊と話す時は、人間に対するように言葉を発してしゃべる場合と、テレパシーのように口に出さずにしゃべることが出来る。

ラズリなんかはどっちも同じって言うけど、私は後者場合には、頭が少し疲れる。

だから私はほとんど口に出してしゃべっちゃう。

なんか、勉強ぶっつけで2時間やったぐらい脳が疲労するんだよね。



「もしかして、リクに何かあった?」

『はい。ハイヤードのダルディガと名乗る者より伝言が私の方にも伝わってまいりました。お伝えしてもよろしいでしょうか?』

「お願い」

『リクイヤード様がバルト様の命により、西の塔の地下牢に閉じ込められたとのこと。そのため一刻も早くギルアへの帰国をお願いいたしますと』

「はぁ!?」

私がギルアを出発して、2日半。

一体ギルアで何があったっていうのよ!?









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