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第三十三幕 癒されます

やっぱ薔薇園はいいなぁ~。

そっと一輪の薔薇の花を撫でるように触れながら、顔を近づけて香りをかぐ。

気品のある華やかな香りだけど、どことなく甘さを含んでいた。


あ~、癒されるわ。

薔薇のおかげか、私の気分はふんわりと軽くなった気がする。

なんだか、さっきまでの疲れがどっかに吹き飛んだみたい。


あのリクとのお茶会をしてから、私は良くここに足を運ぶ。

それは一人でふらっと立ち寄ったり、リクと一緒の時だったりいろいろ。

リクには「飽きないのか?」って聞かれるけど、飽きるわけがない。

だってそこは、私にとっては心地いいのだから。

周りは薔薇の垣根に目隠しをされるように囲まれてるし、少し先に進んだ所にある噴水の流れる音が耳に届きでリラックスできるしね。

ほら、なんか水の音って癒されない?

川のせせらぎとかもそうだけど。


「――そうしていると、まるで1枚の絵のようだ。きっとリノアちゃんの美しさには、女神スティーアもたじろぐよ」

「え?」

急に聞こえたその歯のうくような声に振りかえると、にこにこ笑ったバルト様が立っていた。

人払いをしているのか、護衛をつけてないよう。

なんの前触れもなく突然現れたバルト様に対し、ロイは頭を下げ数歩後ろに下がり、スレイア様は唇を引き攣らせてバルト様を見ている。

その視線は何処となく冷たさを含んでいる気がするのは何故だろう?


「バルト様、こんにちは。そんなに毎回お世辞言わなくても大丈夫ですよ」

「やぁリノアちゃん、こんにちは。お世辞ではなく、本心だよ。それよりもどうしてここに?まさか、もうドレスのが決まったのかい?」

「あ~、ドレスですか」

そのフレーズに、私のテンションは急降下。

だって、あれのせいですごく体力的にも精神的にも疲れたからここに来たんだもの。

はぁ~、思いだしたくもないわ。


あの後、無理やり脱がされてドレスの採寸をしたかと思うと、今度はドレスのデザインを決めると言われたのだ。

はっきり言って、流行のドレスなんてわかんない。

だってドレスなんて滅多に着ないし。


……まぁ、ハイヤード(じっか)に戻れば、必然的に着るかもしれないけど。


でも普段は着ないでしょ?ほとんどメイド服だし。

休みの日は動きやすいワンピース着用だしさ。


だから、そんな事言われてもわからないので「おまかせで」と告げた。

そしたら、どうなったと思う?

メイドのみんなから非難されまくったっうの。

しかも、メイド長にまで。


「一生に一度のことでしょうが!!」とか散々言われてさ。

「なんで一生に一度のこと?」って思ったけど、余計な事言ってまた何か言われるのもあれだし、大人しくながされたわ。

だから「なるべく動きやすいような感じでお願いします。裾長いやつだと転んじゃうかもしれないので。それ以外は流行とかわからないので、おまかせいたします」とだけ言って、早々に退散してきたというわけ。

おまかせでよかったと思う。私だと、きっとやぼったいドレスになっちゃってるだろうし。

そう考えると、ドレスに詳しい人に頼めば、ちゃんとしたドレスに仕上げて貰えるはず。


「ドレスはおまかせしました。私、ドレスとか詳しくないので」

「そうか。でもきっと良いドレスが出来ると思うよ。あのキキが作るドレスだからね。楽しみだね、ドレス。リノアちゃんのようなプラチナの髪には、やっぱり白いドレスが映える」

「白ですか?汚れちゃうので、白はちょっと……もしかして、作って貰うのって白色のドレスなんですか?珍しいですね。白いドレスなんてウエディングドレスみたい。さすが新進気鋭のデザイナー」

あ~、だから針子さん白布系いっぱい持ってきてたんだ~。どうしよう。色変えて貰わなきゃ。

せっかく作って貰ったのに、汚れちゃったら大変だもの。

結構私、動き回るし。


「え?」

「え?」

どうやら私とバルト様との話に食い違いがあったらしく、二人じっとお互いの顔を見合わせたまましばし動かない。

だがすぐにバルト様の方は視線をはずし、スレイア様の方に視線を向けた。

二人とも一言もしゃべらないでアイコンタクトというか、目で会話をしている。

時々首を横に振ったり、縦に振ったり。

さすが親子。


「……そうだな。ここは触れずにリクイヤードに任せよう」

「何をまかせるんですか?」

「いやいや何でもないよ。それより、リノアちゃん。明後日からちょっと旅行に出かけてみないかい?リクイヤードには内緒で」

は!?り、旅行っ!?あの~、ドレスの話は何処へ――?





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