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第三十二幕 流れに逆らうも結局流される

たとえば周囲を無数の敵に囲まれたとしても、私は往生際が悪いと言われようが最後の悪あがきぐらいする。

たとえ逃げ場がないとしても。


だって、もしかしたらの可能性があるじゃん?

ほんの少しでも希望があるかぎり、私はここから逃げるために行動するわ。


……敵じゃなく、お仕事仲間からだけど。


前方からじわじわと距離を縮めて包囲して来るのは、メイド長を筆頭にした私のお仕事仲間のメイド達。

そしてその後ろには、おろおろとこちらの成り行きを見守るスケッチブックを持った女性と純白の布を持った女性の二人組。

髪をアップにして緑色のドレスを着ている方が、ドレスデザイナーのキキさん。

そして純白の布を持っているレモンイエローのワンピースを着ている方が、針子のコーアさん。

と先ほどメイド長に紹介を受けた。


たぶん初対面の彼女らに助けを求めたとしても、無駄だろう。

というか、誰かに助けを求めるという事に酷く失望していた。

だって身内がこれじゃあさ~。

私の左右は、がっしりと裏切り者のスレイア様とロイに掴まれている。


薄情すぎるわ。スレイア様もロイも。

そもそも護衛騎士って守ってくれるんじゃないんですか?


それなのに、「すまない。今ここで彼女達に従っておかなければ、私にも別の方角から火の子が飛びそうなのだ」なんてスレイア様はまさかの裏切りに走るし。

ロイもロイで、上司がそうならと潔く裏切るし。


そもそも、これも全てリクが悪いのよ!!

いきなり私に護衛をつけるなんていいはじめてさ~。

そんなのいらないって断ったのに、リクの奴が「断るならこいつらクビにする」なんて脅すんだもん!!

だから仕方なく怪我が治るまでっていうことで、ごねるリクをなんとかねじ伏せて話をまとめたのに。

こんなまさかの裏切りにあうなら、無理やりでも断ったわよ……


「リノア。無駄なあがきはやめて、早く採寸をしなさい。お二人共、わざわざ貴方のために時間を割いて来て下さっているのですよ?」

メイド長はそう言うと、一歩踏み出す。

たったそれだけの行動に私の肩がビクつく。

メイド長って普段仕事に厳しいお人だから、条件反射で体が緊張してしまう。

別に「まだ掃除終わってないの!?素早く丁寧に綺麗にっていつも言ってるでしょ!!」なんて怒られるわけじゃないのに。


「そうよ~、リノア。キキ様にドレスを作って貰いたい人が、どれだけいると思っているの。キキ様は超人気のデザイナーで、一年先まで王族や貴族の予約いっぱいだから普通なら作って貰えないのよ!!今回は特別に、来て頂いてるの」

「いきなり来て採寸ってなんですか!?私、頼んでませんよ!?」

というか、そもそもドレスなんていりません。

着ていくところがないですし。


「当たり前じゃない。それに、私たちが頼んだ所で来てくれないわ。今回の依頼主は五大貴族の皆さまだから特別に来て下さったのよ」

「……え?おじいちゃん達?リクイヤード様じゃなくてですか?」

てっきり、リクだと思ってたのに。

だって前も無理やり採寸され、ドレスを贈られた事があったから。

だからてっきり今回もと思ったんだけどな~。


「いくらリクイヤード様でも無理よ。お金も権力もコネも持ちまくっているあの方達じゃなきゃ、予約も無しにキキ様になんて作って貰えないわ。今回は、アスラ公爵様がキキ様の恩人という縁でお願いを聞いて下さったのだもの」

「貴方達無駄なおしゃべりは辞めて、さっさとリノアを脱がせて採寸させなさい。まだリクイヤード様の採寸も残っている上に、ドレスのデザインも布地も決めてないから時間が足りないのよ。急ぎなさい。ロイ様は殿方なので、外へ」

「あ、はい」

「ちょっと、ロイ!!」

メイド長の指示に従うロイを止めるが、ロイは眉を下げ「すまない、リノア」と言い残しあっさりと扉の外へと消えて行った。

ロイ、後で覚えてろよ……








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