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第三十一幕 いろいろ未消化のまま残る疑問

王族や貴族に生まれれば、命を狙われるのも不思議じゃない。

やっぱり王位継承争いとかいろいろあって、邪魔者を闇へ葬ろうと暗殺者などを使い暗殺を企てるケースがある。


もちろん私も何度も暗殺者に襲われたり、食事に毒が混ぜられたりした。

私の場合は、銀の悪魔わたしの存在を邪魔に思う連中にだけどね。


だからリクが狙われても不思議ではない。

ギルアぐらいの大国なら余計だと思う。

だけどその分、普通なら警備を強化したりしてなんらかの対策を打っているはずだ。

それなのにまさか、侵入されていたなんて――


「安心していいよ。彼女は城下町の外れまで転送魔法で飛ばしてあげたから。僕、覗かれるの好きじゃないもん」

「それでその暗殺者とやらは、どっちを狙っているんだよ。うちのじゃじゃ馬姫かそれとも王子か?どうせお前の事だから、もう探っているんだろ?」

「うん、もちろん。だって気になるじゃんか。大方この異常事態を、飼い主に知らせると思ったから、最初から使い魔を彼女に尾行させたんだ」

猫目は残ったワインを飲み干すと、またボトルからグラスへと注いだ。

結構なシリアス展開なのにまだ飲むのか、お前は。


「結論から言って、二人共今すぐ命狙われるとかそういう問題ないと思うよ。ただし、この国にとって邪魔になる存在になったら話は別だけどね」

「国?国って、ギルアのことなの?」

「うん。――ってもう王子は気付いたようだね。誰が飼い主なのかを」

リザーの言葉を聞いて、リクの方を見るとなんか機嫌悪そう。

眉間に皺寄せてむすっとしている。

その飼い主とやらが、誰なのかわかったのかしら?


「おい、王子。誰なんだよ?」

マギアも私と同じ考えだったらしく、リクに問う。

「心配しなくても、あいつらはシルクを気に入っているから問題ない。大方、俺がシルクの部屋に行くからつけてきたんだろ。……迂闊だった。まさか、あいつら『影』の他に『監視者』まで使っているなんて」

「へ~。キミ、彼らに好かれてるの?すごいね。あの彼らを手なずけるなんて」

リザーの視線を受けながら、私は首を左右に振る。

いや、そんな聞かれても知らないって!!

っていうか、その監視者とやらの雇い主は一体誰なんですか?


「ねぇ、リク」

「お前は知らなくていい。この事は忘れろ」

「はぁ!?」

忘れろだと?いや、無理でしょ。

その後も押し問答が続いたけど、全然口を割ってくれなかった。

リクがこんなに頑なに口を割らないのは、もしかしたら私の身近な人なのかもしれないって思う。

思うって言うか、リザーの話とリクの話を合わせると確かな真実だ。


「優しいんだね、王子は」

リザーは口元を綻ばせながら目を細めてリクを見つめたかと思うと、ゆっくりと今度はリクから私の方へと視線を向ける。

その視線はほんの数秒にも満たない物だったかもしれないけど、私には数分に感じた。

そのあまりの視線に耐えられなくなり、私は口を開く。


「なに?」

「……ううん、なんでもない。そろそろ帰ろうかなって思って」

少し寂しそうに笑ったリザーに、私はなんだか妙な感じがした。

それはリザーが彼らしくない表情を見せたからなのかもしれない。


「ねぇ、マギア。少し僕に付き合ってくれない?聞きたい事があるんだ」

「俺?まぁ、いいけど」

「じゃあ、姫。マギア借りて行くね」

「え。あ、うん」

私が返事をすると、マギアとリザーの足元に魔法陣が光を発しながら浮かびあがってきた。

リザーが来た時は捕まえる気でいたんだけど、今はなんかその気がなくなっている。

どうしたんだろう?なんか、胸がざわめく。


「――リクイヤード王子。その子……ハイヤードの姫から離れないで。姫の事気をつけて見てあげていてね。じゃないと、キミは死ぬほど後悔するよ」

「おい!!それどういう……――」

リクの言葉が全て紡ぎだされる前に、リザー達は転送魔法で消えてしまった。

後に残されたのは、私とリクだけ。

なんか急に静かになったなぁ~。

二人っきりになってみると、静寂がやけに気になる。


リザーってば、ほんと何しに来たの?

猫のように気ままなリザーの行動についていくら考えてもわからない。

しかもマギア連れて行くし。

というか、そもそもマギアは何で実体化なってんの?

今日満月じゃないのに……――って!?


さっきまでリザーとマギアが居た場所を眺めていたのに、急に強い力に腕を引かれ視界が変わってしまう。


「ちょっと!!何っ!?どうしたの!?」

私はなぜかリクの胸の中にいた。

背にリクの手が回され、痛いぐらいに抱きしめられている。


これは俗に言う、抱擁ってやつじゃ……?

リザーもわかんない奴だけど、リクもわかんないよ~っ!!









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