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第二十九幕 いや、本人だから

ほんと、いい加減にして欲しい。

なんて言ったって本人が本物って言ってるんだし、第三者のマギアも本物だって言ってるんだしさ。

それにリクの後方にいるリザーはもうすでに術を解き、私の姿ではなく通常の自分の姿をしている。

だから後ろを振り向けば、数秒ですぐにわかるんだよ?


もうすでに白黒はっきりついて、普通なら私が本物だってわかってもいいはずだ。

それなのに本人チェックに余念のないリクはリザーが元の姿に戻った事すら気づかずに、私の顔をペタペタとラインを確かめるように何度も撫でている。


「リク。しつこい」

意味のないチェックに私は心底うんざりしたまま、リクを見上げた。

後ろ見ろよ、後ろ。もう一発だから。っうか、リザー。お前、くつろぎすぎ。

リクの後方にいるリザーは、リクの私に対するチェックが長すぎたせいか、リクの持ってきたワインを空けて飲み始めている。


「ちょっとマギア!!リクの事なんとかしてよ!!」

……って、おい。

助けを求めた肝心のマギアは私の状況なんてどうでもいいとばかりに、蝋燭の明かりで本体を照らしていた。

たぶん、傷を確かめているのだろう。

この状況でも自分大好きかよ……


「よし、傷ついてないな。宝石も魔石も欠けてないし。まったく、俺に傷でも付いたらどうしてくれるんだよ。美しさが半減してしまうじゃないか。しかし、俺ってなんでこんなに美しいんだ?」

自分の体をいたわるように、マギアはうっとりと眼を細めながら、布で自分の本体を磨き上げていく。

今ならリザーの隙をついて捕まえられるかもしれないんですけど。

だが彼はそんな事よりも自分の事の方が優先らしい。


もういっそリクの気のすむまで触らしてやろうかな~。

なんかもうどうでも良くなっちゃって、そんな事を思った時だった。

以外な人物の言葉が私をリクのチェックから助けてくれたのは。


「ねぇ、もうそろそろ離してあげたら?いくらハイヤードの姫に触れたいからってさ、ちょっと触りすぎだと思うよ」

「はぁ!?誰がこいつなんかに触れ……――」

リザーの言葉にリクは後ろを振り向き、固まった。


「――……誰だ、お前。なんで俺がシルクに持ってきたワイン飲んでんだよ」

だからリザーだってば。

やっとこの時になってリクはリザーが術を解いた事に気付いたようだ。


「初めましてじゃないよね。さっき執務室で会ったから」

「……執務室だと?あれはお前だったのか!!やっぱりおかしいと思ったんだ。シルクがあんな事言うわけ無いって!!」

「言うわけ無いって思っても来ちゃったんだ~。こんな高いワインまで持って来てくれて。下心丸出しだね」

「うるさい!!」

クスクス笑うリザーに対しリクは剣を抜きかけるが、まるでリクだけ時間が止まったかのように動けなくなってしまっている。

あ~あ、また魔法使ったし。


「体が――」

リクはなんとか動こうとするが、思うように動かない体に顔を歪める。

「王子さ、愛が足りないんじゃない?」

「はぁ?なんだよ、愛って」

「僕ならハイヤードの姫がカエルになったってわかるよ。ねぇ、マギア。キミもわかるでしょ?」

「まぁな。このじゃじゃ馬姫がどんな姿をしても俺はわかる。俺はこいつと血の契約を交わしているからな」

あら、いつの間に。

てっきりまだ自分(本体)を眺めていると思っていたのに。

声がしたと思って視線を隣に移すといつの間にかマギアが立っていた。


「俺だってこいつがカエルになろうが蝶になろうがわかるぞ!!」

「いや、わかんなかったじゃん」

なぜこの二人に対抗意識燃やしてんのよ?

さすがにこのリクの発言に、私達三人の声が重なったのは言うまでもない。







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