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第二十八幕 姫君、忘れ去られる

「シルクが二人……!?」

返事がなかったのを不思議に思ったのかそれとも待てなかったのか、入室許可を出してないのに扉が開けられ男が入ってきたんだけど、この光景を見て中途半端に扉を開け放ったまま動きを止めている。

彼の視線は左右に動かされ、目の前で起こっている不可思議な現状を把握しようと私と私に変装しているリザーを見比べていた。


あれ?リクだ。

どうしたんだろう、こんな時間に。

私は首を傾げて扉の所にいる男――リクを見つめた。

深夜に人の部屋に来る用事なんて思い浮かばない。

しかもリクはなぜか片手にワインボトルを抱えているし。


いろいろと疑問は浮かぶけど、私は頭を切り替え自分が取るべき動きを考える。

だってリクが来てくれたから、この状況から逆転出来るかもしれないじゃん。

ほら、一人より二人って言うしさ。


これで朝までリザーとお茶会の可能性が無くなるかもしれない。

リクに拘束を解いて貰い、リザー捕獲出来るじゃん。

リクの出現で私の心はちょっと浮上してきていた。

だが、次のリザーの言葉とリクの反応にその浮上は海底へと沈められる。


「リクっ!!ちょうど良かった。人を呼びに行こうって思ってた所なの」

……え。

偽者の私から出されたその声に、顔が引き攣る。

リザーが変えたのは声だけじゃない。

いつの間にか瞳の色まで私と同じにしている。


冗談じゃないわ。こいつの思いのままにさせてたまるかっうの。

リザーが何を考えているか私にはすぐにわかった。

――こいつ、私になりすます気だしっ!!

リクに伝えて阻止しようと口を開くが、それが音となることはなかった。

なんで声でないの!?リザーの奴、魔法使いやがったな!!

苛立つ私をリザーのウィンクが余計苛立たせる。


「あのね、猫の盗賊って知ってる?」

「あぁ、ログ家ゆかりの物ばかり盗むやつだろ。たしか、ログ家の生き残りの王子だって言われてるな」

リクはこの状況に最初は戸惑った物の、そう口を開く。


「そいつが私に変装して部屋に忍びこんできたの。だから、捕まえちゃった」

――やっぱな。

想像通りの展開に私はうな垂れた。


大体、なんでリク気づいてくれないのよ?

まだ月日が浅いとは言え、リクとは毎日顔を合わせる。

だから気づいてくれてもいいのに。


「お前な、あんまり危ない事するな。そういう時はすぐに人を呼べ。仮にも姫だろうが。怪我してないだろうな?」

「うん、それは大丈夫。ありがと」

歩み寄るリクに、リザーが微笑む。

そんなリクに対し、私は気付いてという意味を込めた視線を送るが全くこっちを見てくれない。

……酷ぇ。こっちが本物なのに。無視かよ。


最低、リクの馬鹿っ!!

今度お茶入れる時、すっごく苦いの出してやるんだから!!

私はリクへの恨みつらみを言葉を発せない分、心の中で吐き出した。

その時だった。「てめぇ、猫目がっ!!」という怒鳴り声と共に、バンッと扉が開け放たれたのは。


「えっ、マギアっ!?」

……あ、声が出た。

扉を乱暴に開けて入って来たのは、銀色の長い髪を靡かせた端正な顔立ちの男。

着用している衣装は目をそむけたくなるような派手なやつで、色鮮やかな宝石なんかか着いている。

そして、腰にはマギアの本体で私の愛剣を携えていた。


マギアは元々人型。

でもそれは古代の神話の時代の話だ。

今ではマギアを作った精霊王の力が弱まり、人型になれるのは満月の夜だけ。

今日は満月じゃないのに、マギアはなぜか人型になっている。

一体どうして?まさか力がもどったの?……まぁ、そんな事は後回していいや。

取りあえず助かったわ。

マギアの登場にほっと一安心した。


「よくもこの俺様を落としてくれたな。俺様の美しさに傷でもついたらどうしてくれんだよ!!」

ちょっと待て~。まずあるじを心配するのが普通じゃない?

それなのに、自分の美しさかいっ!!ナルシストすぎるだろうが。

味方は増えるが一向に助かる気配のないって……

頭を抱えたいが、両腕拘束中のためそれが出来ない。


「俺様を傷物にしょうとした罪、今すぐ償え」

マギアは剣を抜くと大股で部屋に入って来て、リザーに刃を向ける。

だがそれが彼の首元まで届く事はなかった。


「辞めろ、マギア!!」

リクはマギアの攻撃を自分の剣で受け止め、マギアの攻撃を止めたのだ。

あのさ、そいつ偽物なんですけど。


「おい、王子。何でそいつを庇うんだよ」

「偽物はそこに縛られているだろ。少し落ち着け。リノアに攻撃してどうするんだ。切られれば、怪我じゃすまされなくなる所だったんだぞ」

「はぁ?王子何言ってんだよ。リノアはこっちの縛られている方だぞ?」

「……は?」

リクは口をぽかんと開けマギアを見ていたが、やがてマギアに頷かれゆっくりと縛られている私の方へと視線を向けた。

あのさ、一つ言っていい?

気づくの遅いんですけど。








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