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第二十三幕 リクの居ぬ間に

「ここは一体何処なんですの……?」

フリージア様はキョロキョロと辺りを見回している。


フリージア様の緩やかな栗色のウェーブのかかった髪は二つに結わえられ、いつも身に纏っている華やかなドレスじゃなく、今回はメイド服を着用していた。

顔バレしているため変装させるにも限界があったので、もういっその事と思い私がメイド服を着せてみたのだ。


だってまさか姫がメイドするなんて思いもしないじゃん。

私達もそうだけど、貴族なんかのメイドもお使いなどでメイド服で街に出るから別に珍しい光景じゃない。


もちろん、最初はフリージア様も猛反対。

こんなもの着れませんわってブチギレ。

でも、「エールさんのためですよ?」の一言にぶつぶつ言いながら着替えてくれた。

可愛いとこもあるんだよね。フリージア様。


「ここは中央教会の地下ですわ。御覧の通り、あまり使用されてませんけど」

辺りを見回しながら、私はそう告げた。

私達の周りには、重なった木箱やロープ、それから長年使ってない事が一目でわかる古びた椅子などが置かれている。


煉瓦作りの室内は少しでも動くと埃が舞う状態。

はっきり言って、掃除をしてやりたいぐらいのレベルだ。

ここに箒とちりとりと雑巾あったら、完璧に元通りになるように掃除するのに!!

仕事のせいか、掃除したくてうずうずする。


「中央教会ですって……?」

「えぇ」

ここ中央教会はその名の通り、城下町の中央に位置する大きな教会。

メイン通りにある上に建物と広大な敷地のため、ギルアに住んでいれば知らない人は誰もいないというぐらい有名。


「まさかあの離れの塔が、ここに繋がっているなんて誰も思わないだろうな」

騎士服に身を包んでいるロイは、床にある隠れ階段を見ながら呟く。

彼は今回非番だったため、護衛がてらに連れてきた。


ロイは最初予想通り、最初は大反対。こいつ堅物だし。

ちゃんと上に報告しなきゃ駄目だと言い始めた。

でもちょうどバルト様もリク不在だったので、無理やり連れてきたのだ。

しかし、リク居なくてちょうど良かった~。

だってあいつに許可願っても、絶対許可おりないもん。

バルト様なら条件付きで許可下さりそうなのに。


「だろうね。でも城だから、あっても不思議じゃないよ」

城には避難用に抜け道を作っている場合が多い。

ギルア城にもあって、私達はそれを利用してここまでやって来たのだ。


今回は中央教会に抜けるルートを使わせて貰った。

この隠し通路の事は、元々はオリンズ様に教えて貰ったのだ。

オリンズ様は隠し通路の存在を城内探検と称し遊んでいるうちに見つけ、いつしか街に脱走する用に使用していたそう。

だから誰の目にもつかない間に脱走出来たため、いつも発覚が遅くなったみたい。

私がバルト様に報告するまで、バルト様もその存在しらないぐらい使用されてなかったから、リクはきっと知らないはず。

今度から城から抜け出したくなったら、ここ使おうっと~。

リク外出すると護衛つけろとかうるさいんだもん。


「さて、さっさと参りましょう。リクが戻るまでに城に戻らないと……――」

私たちは限られた時間のため、さっそく街に行く事にした。







すごい。やっぱ品ぞろえが違うわ~。

私はすっかり目の前に並んでいるそれを見て、テンションが上がっていた。

前後を棚に挟まれ、それぞれの棚には瓶が数十種類飾られている。

棚一つでこれだけだから、店のもの全てを合わせれば数百種類にも及ぶかもしれない。

それは花を乾燥させたものや茶葉。

お茶の他に使用法としては、単品で薬として使用されるものそれから料理などにスパイスとして使用する。


ここは城下町にある、ノアというお茶専門のお店。

フリージア様はエールさんのお見舞いに、お茶を買う事に決めたそう。

そこでロイにこの街で一番大きいお店に連れて来て貰ったのだ。


これならどの国の商品でもあるかもしれないな~。

もしかして、ハイヤードの物もあるかしら?

後で探して買って帰ろうっと。


「フリージア様。ありましたか?」

「こんなにいっぱいあって、探せると思ってますの?」

苛立っているのか元々口調が強いのに、今はそれより強くなっている。

そうだよね、時間限られてるし。やっぱ探すの無理か。

なら――


「おじさん~」

私はカウンターにいる店主を呼ぶ。

見つからないなら、場所を聞けば簡単。

私の呼びかけに、ぽっちゃりとしたおじさんは本からこちらに視線を移すと、人の良さそうな笑顔を浮かべながらこちらにやって来てくれた。


「お嬢ちゃん達、何かお探しかい?」

「はい。えっと……――何をお探しになっているんですか?」

隣りのフリージア様に伺うと、「マッシェ」と答えた。

何?マッシェって?

私とロイは、聞いた事のないお茶に首を傾げるけど、一方の店のおじさんはそれに対し「おや、マッシェかい。珍しいね」と呟いてた。


「ずいぶん珍しいの知っているね。もしかして、シャルダン出身かい?」

「……えぇ」

フリージア様は、目を少し伏せ弱々しく頷く。


あれ?フリージア様シャルダン出身って言った?

てっきりギルアで生まれたと思ってたのに。




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