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第二十二幕 こっそりと

退屈だなぁ~。

私は窓際に椅子を持って行きそこに座りながら、ぼーっと窓から中庭にある庭園を見つめている。

中庭ではちょうど薔薇が満開で、見ごろを迎えていた。


こうして景色を見るのも嫌いじゃない。

でも、これを何時間もっていったら苦痛だ。


なんか、じっとしているのって性に合わないんだよね。

左手でも仕事出来るのに、駄目だって言うんだもん。

私は右腕を骨折しているため、リクや他のメイド長に仕事を禁止させられているので暇なのだ。

ほらでもさ、骨折しててもタオル畳んだりとかできるって思わない?

それなのに許可下りず、メイド長に仕事を回して貰えない。



「ひ~ま~だ~っ!!――……ん?」

叫びながら足をバタつかせていると、後方にある扉から控えめなノックをする音が聞こえてきた。

誰だろう?またお見舞いの人かな?

もしそうなら、出来れば手ぶらの方が嬉しいんだけど。


部屋中元老院のおじいちゃん達からのお見舞いの品物で溢れかえってしまっているため、広いゲストルームが狭くなり始めている。

中にはまったく知らない貴族や騎士の人からのもあった。


その品物のほとんどがお菓子や花束。

もちろんお菓子や花などはメイド仲間や女官さん達に御裾わけ済み。

だけど、やっぱ増えちゃうんだよね。

気持ちは嬉しいけど、お返しの額を考えるとちょっと困惑する。


「どうぞ」

私が声をかけても、室内に入ってくる気配がまったくない。

あれ?もしかして気のせい?

たしかに聞こえたって思ったんだけど……


不審に思った私は扉の方に行くと、取手を持ち引く。

するとそこにはフリージア様が一人で立っていた。

扉が開くと思わなかったのか、驚いた顔を見せると俯きだした。

共も着けずにどうしたんだろう?


「これはフリージア様。どうなさったのですか?こんなところで立ち話もなんですから、お入りになって下さいませ。すぐにお茶を用意いたしますわ」

取りあえず部屋に招き入れようとするが、彼女は首を横に振ると、何かを小声で呟くように言った。

なんて言ったんだろう?

その声は小さすぎて私の耳には届いてこない。


「申し訳ありません。聞きとれなかったので、もう一度お願いしてもよろしいでしょうか?」

「だから。お見舞いに何を送れば良いのかって聞いてるのですわ!!ちゃんと聞いてなさいよ!!」

「お見舞いですか……?」

なぜ急に?

ほんの数秒間止まった頭が回ると、納得した答えが出てきた。

あぁ、もしかしてエールさんにか~。


エールさんの体調はだいぶ回復したそうだけど、まだ本調子ではないそうだ。

過労の他に風邪も引いていたらしく、熱が昨日下がったばかりだそう。

そのため、まだ部屋で休んでいる。


「そうですわね。一般的な答えとしては、お花やお菓子などですかね。あと、本人の好きな物とか。ですがフリージア様の気持ちがこもっているものでしたら、きっとエールさんも御喜びになりますわ」

「だっ、誰がエール宛てだと言ったのよ!?私はただ聞いただけですわ」

顔を真っ赤にさせて抗議しても、今なら可愛いと思ってしまう。

しかしなんで彼女はエールさんに対しての優しさはあるのに、他のメイドにはないのだろうか?

もしかしたら、ただの我儘姫って感じじゃないかもしれない。


「そうだわ。フリージア様」

「なんですの?」

「もしよろしかったら、私と一緒に買いに行きませんか?」

「買いに行くって何処に……?」

「――もちろん、街に決まってますわ」

「ま、街にですって!?」

呆気にとられるフリージア様の気持ちもわかる。

だって許可下りるかわかんなし。

それに、護衛の関係もあるからね。


だが、そんなフリージア様に私はにっこりと微笑みを浮かべた。

許可が下りないなら、脱走すればいい。

さてそうなったらルートは『あの道』を利用させて頂かこうかしら?

護衛はそうね……マギアとやっぱり――






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