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第二十一幕 ある意味似たもの同士

……――シルク。

浮遊する意識の中で遠くから聞こえて来るのは、必死で私の名前を何度も叫んでいる声。

それが誰の声なのかは、少しずつ覚醒していくにつれて確信をおびていく。

ゆっくり瞼を開けると、やっぱり想像していた人物が目に飛び込んできた。


「――……リク」

やっぱそうだ。あの声はリク。

彼の顔にはいつもの無表情が消え失せ、何か不安な事があるのか眉を下げ青い瞳を揺らしている。


「シルク!!」

リクの瞳は大きく見開かれ、珍しく大声で叫んでいる。

どうしたんだろう?

あまり見た事ないリクの様子に、起き上がろうと体を動かそうとした瞬間、リクが行き成り私に覆いかぶさるようにして抱きついて来た。


……って、えぇっ!?な、何事っ!?


急にそんな事をされ、動けなくなるのは当然。

過去いろいろなブラックな修羅場潜って来たから、ある程度肝は座っている。

そんな私だけど、さすがにこれには慌てふためく。

それは当然。

だって、なんでリクが私のこと抱きしめるのっ!?


誰か状況を!!

室内に感じる他の人の視線に見回すと、私を囲むようにしてバルト様もロイが立っていた。

この時になって、私は初めて室内に他の人達がいる事を知る。

二人とも私と同じように目を大きく見開き、私というよりはリクを見つめている。


ちょっ、ロイ!!これ何!?

目でロイに会話をしかけると、ロイはそれに気づきぶんぶんと首を振った。

わかんないの!?じゃあ、バルト様は?

バルト様を見ると顎に手を当てて、「まさか、こんなに思った通りいくなんて」とかなんとか呟いている。

もう駄目だ。二人共あてになんないじゃん。


「あのさ、リク。一体どうしたの?」

「……良かった」

耳元で囁かれるリクの声と頬や首に当たる髪がくすぐったく、思わず笑ってしまいそうになる。

ちょっと髪だけでもいいから退いてくれないかなと、手でリクの髪を撫でる様にして梳く。

うわっ、こいつすげぇ髪サラサラじゃん。


「本当に良かった。お前の意識が戻って」

「あ~。私、途中で気ィ失ったからな~」

エールさんを抱きとめようとして失敗。そして、一緒に階段から落下。

……ってとこまで覚えてる。でも、そっからまったく記憶がない。

鈍い痛みを感じで最後そこでフェードアウトしちゃったもんな。


「なんでお前はそういつも言い方が軽いんだ!!意識不明だったんだぞ!!しかも3日間も。その間俺がどんな思いだったかわかるか?」

リクは私から体を離すと私の肩に手をおき、揺さぶりながら声を荒げる。

その鬼気迫る様子を見て、理解出来た。

こいつすごく心配してくれたんだ。


「ごめん、心配かけて。私、怪我もあんましなかったし平気」

ただなんとなく見るのが嫌で見てないが、右腕は負傷している。

他にあるかわかんないけど、右腕だけは少しでも動かすと痛い。

それに布団に隠れてわかんないけど、何かに固定されているみたい。

これ、骨いったな。


「もう大丈夫だから。ありがとう、リク」

笑みを浮かべリクに微笑むと、リクは顔を顰めた。

はぁ?なぜそういう反応をする?

そう思った私の反応は正しかった。

なぜならその後リクは、理解不能な言葉を発したのだから。


「……俺、なぜお前の心配したんだ?」

「はぁ?」

さすがにその言葉に室内にいたリク以外の全員がハモった。


「お前が意識不明と聞いて、大げさに聞こえるかもしれないが世界が終わったように感じたんだ。それからお前に目覚めて欲しくて片時も離れたくなくてずっと傍で呼びかけて。お前が目覚めたら、神に感謝した。神なんて信じてなかったのに……――俺、どうしたんだ?」

いや、どうしたって聞かれてもむしろこちらが聞きたいんですけど?

そりゃあ、さすがに心配するだろ。

それに対し何を疑問に思っているかわかんないよ。


「なんかよくわかんないけど、別に疑問に思う事ないんじゃない?普通、心配するでしょ」

私だってリクが怪我したとか聞いたら心配するって。

もちろん、それがロイだって同じ。

自分が知っている人が怪我したとか聞いたら、普通心配するさ。


「そうか、そうだよな。今までこのような事感じたことなかったが、普通だよな」

「そうそう。あんま深く考えることないって」

私の言葉にリクは納得したのか、頷いた。

たぶん、今まで怪我した人とか周りにいなかっただけだって。

もしかして、リクってもしかして天然なのかなぁ?


「なんで王子は納得なさるんですか!?シルクもシルクで、お前も気づけよ!!」

叫ぶというか嘆くというか言葉を発すると、私達を見て頭を抱える。

「は?何が?」

「ロイ、どういう意味だ?」

私とリクはロイを見つめる。

なんなのよ?一体。

私達が首をかしげていると、バルト様はお腹から笑ってそれを見ていた。






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