表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/114

閑幕 王子と謎の訪問者 2

「なぜお前がこれを持っている?」

自分の腰に下げていた剣に手をかけ、男の反応を見た。

すると、男はそんな俺の様子を見て奴は喉で笑う。


「まだわかんねぇの?――これマギア

「そんな戯言信じるか。剣が実体を持つなんてあるはずないだろ」

「戯言ってね……悪いけど、俺をその辺の剣と一緒にしないでくんない?俺はあのお方が創りし物」

マギアは俺をよけると、室内へと入る。

そしてソファへと体を埋めた。


「あのお方……?」

俺は扉を閉め、マギアとは反対側の席へと座る。

「もしかして知らないのか?シルクの旦那のくせに?」

「偽物のな」

俺はそもそも愛だの恋だのという感情は持った事がない。

俺が今関係を持っている女達も割り切って付き合っている奴らだ。

誰かと深くかかわるなんて面倒。


……だったんだが、なぜか俺はシルクを匿ってしまっている。

普通ならこんな厄介な話、即刻親父に押しつけるのに。

それなのに自ら首を突っ込んでいるという、異常事態だ。


「偽装結婚って言ったって知っておけよ。自分の嫁の事だろ。あのお方というのは、精霊王・ツェルドラード様だ。俺はあのお方が、最愛の姫君を守るために創られた剣。姫は剣なんて使えないからな。護衛の騎士を付けるしかない。だがあのお方はルチル様を寵愛なさっていたので、人間の力だけじゃ信用がおけなかったらしく、俺を他の精霊同様姫の護衛に加えた」

「どっかのメイドをする庶民的な姫は剣を振りまわすが?」

こいつが本当にマギアなら、こいつの主は姫なのに剣を使う。

しかも口が悪いし、気づけばあいつのペースになっている。

誰かあいつに慎ましさというものを教えてやって欲しい。


「……あれは別だろ。別。お前、あの暴走女を姫のカテゴリーに入れるなって」

マギアは声を大にして言った。

暴走女って、お前の主だろうが。

わかるなら、少しなんとかしろよ。


「普通の姫は剣なんて持てないから、俺が今のような姿でお守りしていたんだ。今は力が弱っていて実体を常に持つ事が出来ない。だが今日のような満月の時だけは、こうして一時的だが実体を持つことができるんだよ」

「あぁ、今日は満月だもんな」

窓からは見事な満月が雲に隠れる事無く、地を照らしている。


「だからこうして挨拶に来たんだ。せっかく動けるんだからな。あと、それから宝石貰いに」

「は?」

後半は何だ、後半は。

マギアは本体の剣をテーブルの上にのせた。

そして一か所を指差す。


「ほら見てみろよ。俺の本体。魔石無くなってるだろ?あいつバーズ様に誰かと結婚させられそうになってさ~、途中でこれ使ったんだよ。こんなんじゃ、俺の美しさが半減するだろ」

「結婚?あいつが?」

急に胸が締め付けられるような感覚に陥ったかと思うと、今度は真っ黒の黒い感情に襲われる。

あいつが俺以外と結婚だと?

誰だがわからない相手に俺は、苛立ちを覚えた。


「へ~。なんだ、そういう事」

マギアは俺を見て、口角を上げる。

そしていきなり笑い始めてしまう。


「なんだ?」

「ん~、芽が出たんだって思っただけ。頑張れ。かなり振りまわされるから」

「何言ってんだ?」

「その内わかるさ。まぁ、うちの姫をよろしく頼むよ」

そう言ってそいつは目を細めまた笑う。

その意味に俺が気づくのはこれからまだ先の話。

俺がシルクの事を自覚した時だ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ