第十二幕 姫君の力の見せどころ
「こんなところにほんとにオリンズがいるのか?」
「うん」
がさがさと両手で茂みをかき分けながら、私達はひたすら前へと進む。
私の前方をリクが道をつくってくれているから、結構楽だ。
どうやら歩きやすい山道からかなり外れ、オリンズ様は獣道を通っていったみたい。
葉っぱとかで怪我とかしてないといいけれど……。
それに山賊やクマなんかとの遭遇など、あぶない事も多いし。
でも良かったわ。精霊がいてくれて。
絶対、私達だけならこの森の中彷徨ってたもの。
でもさ、オリンズ様どうして山なんかに来たんだろう? しかもこんな時間に。
「なぁ」
「ん~?」
「あの鳥、変じゃないか?」
リクは私達を案内してくれている瑠璃色の鳥を指す。
鳥は私達のペースに合わせてくれていて、私達が休憩のために休むとちゃんと止まって待ってくれる。
「へ~。良く気づいたね」
誰が見ても鳥にしか見えないのに。
「あの鳥、やけに鮮明に見えないか? 月明かりとランプの明かりがあるとしても、異常にはっきりと見える。一体、あれはなんだ?」
「教えたら私の秘密教えなきゃならないから、今は教えてあげない」
「は? なんだよ。それ」
「どうしても知りたいなら、私がここから居なくなる時に教えてあげ――って痛いんだけど」
鼻つぶれるかと思ったじゃんか。
リクが急に立ち止まったせいで、私はリクの背中に顔面をぶつけてしまった。
「……お前、いなくなるのか?」
「そりゃあね。最初っから、代わりの人が見付かるまでだし。だから代わりの人見付かって、お金が貯まったら自分の国に帰るよ」
数年足を踏み入れられなかったけど、早くハイヤードに帰りたい。
ギルアみたいに大きくもないし発展もしてないけど、自然に囲まれたハイヤードが私は大好き。
それに、家族とだって逢いたいもん。
あ~。懐かしい。あの山に囲まれた国。何もないけれども。
「リク~?」
リクはずっと先ほどの態勢のまま、固まったきり。
なんだこいつ。もしかして私が居なくなるかもしれないのがさみしいの?
いや、でもそんな情がわくほど一緒に居なかったし。
「……行くぞ」
「え? あ、うん」
私は首を傾げたが、あまり気にする事無く足を進めた。
*
*
*
――まいったな。
茂みからなるべく気配を消し、外の様子を伺う。
そこには男が数人、松明を手にピンク色に咲いている花を摘んでいるのが見窺えた。
彼らは花を摘んでは大きな麻布につめるのを何度となく繰り返している。
こいつら、夜光華狩りの連中か……
夜光華というのは暗闇の中であの淡くピンク色に光っている花のこと。
主に香水や製油の原料として使用され、品のある香りから貴族令嬢に愛用されていた。
でもそれは以前の話。
こういう山深い所でしか生息していない事、それからこの華自体希が数が少なく希少なため、元々高値で取引されていた。
そのため採取者が増加し、花が激減。
現在では生息している所があまりなく、今では採取禁止命令が出ているぐらいだ。
従って彼らのしている事は違法。
――さてはあいつら、裏で売るつもりだな。
「リノア」
「何?」
リクが、小声で話かけてきた。
焦るわけでもなく、表情はいつもと変わってない。
「お前、見付からないようにここに隠れていろ」
「えっ、どうして? あっ、もしかして正面突破する気?」
「他に方法ないし、見逃すわけにはいかないからな」
相手はざっと見て、10~15人ぐらいみたい。
空らの腕前がわからないけど、この人数ならなんとかなるかも。
「わかった」
マギア持ってきて正解だったな。
私は、愛剣を包んでいる布を取り払う。
すると、月の明かりに埋め込んだ魔石とマギアが輝く。
この間魔石一個使っちゃったから、なんか少し不格好かも。
「まさか、その装飾品で戦うとかぬかすんじゃないだろうな?」
「そのつもりだけど?」
「ばっ――」
私はリクの口を手で塞ぐと、あの男たちの様子を伺った。
良かった気づかれてないみたい。
唇に人差し指を当てながら、ゆっくりと手を離す。
「バカかお前!! これはどう見たって装飾品だろ!! 切れるのか? それにそもそもお前は、剣が使えるのか!?」
「ちゃんと切れるよ。それに使えるから持って来たんじゃん」
「いいか。護身用にならったっていう程度じゃ話にならない。実際の戦闘は予想外の出来事が起こるんだ。それに、あの一番大柄な男いるだろ? あいつには賞金がかかっている」
「へ~。んじゃあ、あの男私が倒すから」
そしたら賞金は私のもの。
ラッキー。ハイヤードまでの資金稼ぎにはちょうどいいじゃん。
「お前、人の話聞いてたのか?」
「聞いてたわよ。私の事は気にすんなって。リクより強いかもよ?」
「んなわけあるか。いいか、助けてって言っても助けないからな」
「いいよ、別に」
だってそれはないし。
あいつらそんなに強敵って感じじゃないもん。
「じゃあ、さっさと倒してオリンズ様迎えに行きますか――」