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第十幕 あちらも姫で、こちらも姫

「――聞いたよ、シルクちゃん。リクイヤードとやり合ったんだって?」

「すみません。あまりにもあの王子の性格が悪かったのでつい……」

出されたお菓子に手を伸ばしながらバルト様に返事をすると、「シルク!!」と咎めるロイの声が後方から耳に届く。

ロイってばバルト様がせっかく座って良いって言って下さっているのに、自分は騎士なのでと言って申し出を断って私の後ろに控えている。


「申し訳ありません、バルト様。シルクには後でちゃんと言って聞かせますので」

「よいよい。ぜひ、うちの息子の性格を矯正してやってくれ」

バルト様は笑いを噛み殺している。



ここは城内に数ヶ所存在する応接室の一つ。

会議が出来るんじゃない? ってぐらい広いテーブルに椅子が20脚。

それから、壺などの装飾品だけといういたってシンプルなつくりだ。


「あの、国王陛下。シルクの事なんですが」

「話は聞いたのかい?」

「はい。シルクから大体。ですが、やはり問題だと思います。シルクの事情はおわかりですよね。それもあってシルクは他の王族より狙われやすいのです。もしシルクに何かあったら、この国はあの重度のシスコン……いえ、とても姉思いのラズリ=ハイヤードの攻撃にあってしまいますよ。それにハイヤード公国にはシドもいます」

「おお、ラズリ君か。彼は実に優秀だと聞くな。バーズが時折嘆いているよ。息子の成長が速すぎて、もう追い越されてしまったとね。シドというのは君たちの友人であの名高い暁の獅子の事かい?」

「はい。彼らだけではなく、ハイネとカシノ――漆黒の魔女率いるグランス国と科学の国ピネル国も敵にまわすでしょう」

「あぁ。彼女らはアカデミー時代のシルクちゃんとロイの友人だったね。もちろん、シルクちゃんの身の安全は心配ごとの一つだ。そのため、城の強化を図るなど気をつけているよ。それに――」

バルト様の声は、ノックの音で途切れてしまう。


「失礼いたします」

扉が開けられ入ってきたのは、あのスレイヤさんだった。

スレイヤさんは、私を視界にとらえると目を大きく見開き私を指さした。


「なぜ、ここにいるんだ!?」

……そうなりますよね。


「以前のご無礼をお許し下さい。ギルア国第一王女、スレイヤ姫」

私は立ち上がると、礼をとった。

最初メイドの噂話で聞いた時は、すっごく驚いちゃった。

彼女はれっきとしたこの国の姫。

王位の継承から退き、今は騎士団の副隊長をしているらしい。


「いや、こちらこそすまなかった。あのハイヤード公国の姫だと知らずに無礼を働いてしまって。……というか、そもそもなぜ姫がここにいるのだ? それにその格好、まるでメイドじゃないか?」

「はい。メイドとしてここで働かせて貰っています」

「はぁ!?」

彼女は最初茫然と私を見ると、次に自分の父親を睨んだ。


「どういうことですか!? あなたは自分のやっている事がわかってるんですか!? 一国の姫にメイドやらせるなんて!!」

「その話でお前を呼んだんだ。シルクちゃん。一応護衛としてロイとスレイヤを外出時など、必要な時につけさせるよ」

「はい、ありがとうございます。――あ」

鐘の音が鳴り響くのが室内まで聞こえて来る。

やばいっ!! 昼休み終わっちゃうじゃんか!!


「すみません。私、もう仕事なんで行きます」

「あぁ、すまないね。貴重な昼休みだったのに」

「いえ。あのできれば眼鏡をかけて縄で縛られていた人にも、口止めをしていただきたいのすが……」

「縄で縛られた奴かい?」

「スレイヤ様なら、わかると思います」

私はそう告げると、部屋の外へと飛び出した。

次の仕事は、2階の東棟っと。

急がねば!!











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