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エピローグ

見つめている花壇に咲き誇るラナンキュラスやアネモネ等の花が季節の訪れを告げている。

それらの花々を見下ろしながら、私は口を開いた。


「『今度こちらに来るときは、貴方様の式です』。まさか本当に貴方の言う通りになるなんてね。人生ってどう転ぶかわからないわ」

半回転して後方へと視線を向ければ、教会前にて女性が跪き微笑んでいた。

祝福の鐘を鳴らす教会をバックにまるで絵画に描かれた女神像のようなその人は、ゆっくりと深々に頭を下げ祝福の言葉を紡いでいく。


『おめでとうございます。シルク様。お召しになられているドレス、良くお似合いですよ。珍しいタイプのドレスですね』

「ありがとう」

私が着ているドレスはキキ様デザインのウェディングドレス。

ベアトップでデコルテを見せるタイプになっていて、サファイアで作られたリノアの花を模したネックレスが目立つようになっている。

生地にはグローブと同じように真珠が縫い付けれてあり、光によりキラキラと輝いていた。


「やっぱり長いのより丈の短い方がいいわ。なんと言っても歩きやすいもの」

丈は膝丈でそのためリクには最初しぶられたけれども、なんとか認めて貰ったあのデザインのままだ。


「今度は旦那様が逃げないといいけどね」

『まぁ!』

私は笑いながらあの頃を思い返していた。

初めてここ――プレサに強制的に連れて来られた時の事を。


アカデミーの卒業祝いとして仕立ての町ビエルに向かうはずが、なぜかここに連れてこられたかと思えば、ウェディングドレスを着せられ、いきなりの結婚宣言。

しかも賭けに負けたからとか言われたら、誰だって反発するわ。

私が銀の悪魔と呼ばれていたから余計に。

それに後から知ったけれど、新郎逃走してたし。


「私が結婚なんて夢みたい……」

本日私はリクと結婚式を挙げる。この場所で。

てっきりギルアでかなぁって思っていたけれど、私の問題も解決したのでここで盛大に挙げることにしたの。王族族の式は、格式あるプレサが定番と二国間で一致。

と、そこまでは良かった。問題はそれ以降だ。


ラズリとリクが揉めに揉めたんだよね……

式に関するありとあらゆる事で対立していたっけ。

え? そんな事で? っていう事柄まで。

やれブーケは寒色だ! いや暖色だ! とかさ。

それでもなんとかこの日を迎えられた。


「なんだかいろいろあったけど、あっという間だったわ」

「――おい! 美談で終わらせるな」

「あっ、リク」

声のした方を見れば、リクがこちらに向かってきていた。

銀に瑠璃を混ぜ込んだような色をしたタキシードを身に纏い、その晴れの衣装も虚しいぐらいに大股で。

せっかく格好いいのに、少しは優雅に歩いてきて欲しい。

なんか勿体ない。残念王子になっちゃっている。


「機嫌悪いね」

「当たり前だ! 五年だぞ。五年っ! それをお前はあっという間って言ったんだ。

最初は一年の約束だろうが。それは理解出来る。お前も精霊と契約出来き、問題も解決出来た。だからお前の家族に、もう少し家族でいる時間をと泣きつかれた時は納得したんだ。だがそれがもう一年もう一年と延び、結局五年だぞ! 五年! 十年と減らず口を叩くお前の弟を説得したんだぞ!?」

「でもこれからはずっと一緒にいられるよ? リクの隣に私はいるから」

「約束しろよ」

「勿論っ! これから先の未来はリクと共に」

私はそんなリクの手を持ち薬指に口づけを落とす。

いつかリクが私にやってくれたように。

これから結婚式で指輪の交換のため、婚約指輪は外している。

だから何も嵌められいないそこは、リクの体温を感じる場所。


「……お前は本当に!」

リクはそう呟き私を掻き寄せると、体をすっぽりと包み込んだ。

いつもなら嬉しいけれど、さすがに今は駄目。

キキ様オーダーのドレスは生地が柔らかく、繊細ですぐ痛むし皺になっちゃうから。


「リク。式まだなのにドレス皺になるよ」

「今はお前に口づけする方が優先だ」

そう言ってリクは私から体を離すと、こちらに腕を伸ばし頬に手を添えた。

けれども少し俯き、それを拒否。


「グロスとか剥がれるから、禁止」

「直して貰え。誓いのキスまで我慢しろっていうのか?」

「そうして下さい」

「却下」

「我が儘言わないでよー」

「これからは我が儘言える距離だからな。問題ない」

「……そうだね。これからは我が儘も甘えることも出来る。会いたい時にも会えるわ」

「あぁ」

私は目を閉じリクの口づけを受けようとしたけど、どうやらそれは許されないようで。


「姉上。姉上~? どちらにいらっしゃいますか? もうすぐ式が始まりますよ。あっ、もしかして式が嫌なんですか? それなら即撤収致します。共に帰りましょう」と私を捜す声が風に乗り届けられ、リクが唸ったからだ。どうやらやっぱり式までお預けみたい。


「また最後の最後まであのシスコンに邪魔されるのかよ……もう二児の父親なんだから、いい加減卒業しろっていうのに……あいつ、いつ卒業するんだ? 俺達に子供が生まれてからか?」

リクは肩を落とすと天を仰いだ。

それを見て私は思わず笑いが零れる。



これからは今までの分……いや、今までの分以上にもっと幸せになろう。

過去の事は忘れられないし、未だに夢に見てうなされるけれど、でも隣にリクがいてくれる。

今度は二人一緒なので二倍楽しい事が起こるはずだから。



姫君的メイドライフはこれにて本編終了です。

途中二年ほど間が空いたりとエタりかけたけれども、なんとか完結できて良かったです。

読んで下さった方、お気に入りに入れて下さった方、評価入れて下さった方、感想・レビュー書いて下さった方、ありがとうございました<(_ _)>

お礼代わりになるかわかりませんが、近々番外編をupする予定です。

それからブログ掲載の番外編もこちらに少しずつ移していきたいなぁと…


今連載中の「半強制結婚宣言」や、他の碧威の作品にてこれからもお付き合いして下さる方達は、引き続きよろしくお願い致します。


2013.10.25

歌月碧威



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