ウェイク編ー5
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風紀委員室に連れて来られたハルトは少し躊躇いながら中へ入った。
中はダンボールや備品などで散らかっていて少し埃臭い。
「とりあえず座ってくれ」
パイプ椅子に座ったハルトはどうして自分に風紀委員の仕事を手伝ってほしいのかその理由についての説明を待つ。
「さっきも言ったけど風紀委員の仕事を手伝ってくれないか」
「その理由はなんですか?」
「君が私と同じSランクだから」
「それだけですか?」
「あと、ユズキから君は体術も得意だと聞いてね。なるべく異能を使わず問題を解決したい」
「なるほど」
「ちゃんと礼もするから暇なら」
「申し訳ありませんがお断りします」
そう言うとハルトは座っていたパイプ椅子から立ち上がり、風紀委員室の出入り口に向かって歩き出す。
「理由を教えてもらえるか?」
「言えない事情です」
「……そうか」
「では、失礼します」
断られる可能性を考えていたツキミは不敵な笑みを浮かべるとわざとらしく話出す。
「そういえばもし風紀委員の仕事を手伝ってくれたら今晩ミートスパゲティを作ってやるとユズキが言っていたな」
その言葉を聞いた瞬間、風紀委員室のドアを開けようとしていたハルトの手が止まる。
「ミートスパゲティ……だと!?」
ハルトの大好物であり、特にユズキの手作りミートスパゲティには目がない。
それを知っていたツキミは最後の切り札として用意していたのだ。
「手伝ってくれたミートスパゲティを食べれたのに残念だな」
「手伝います」
見かけより単純な男である。
計画通り彼を一時的に風紀委員に引き込むことができたツキミは腕を組み、満足気に微笑む。
「早速仕事について説明する」
「はい」
「今回の仕事は校内のパトロールと問題が発生した場合、事態が悪化する前に仲裁に入ってくれ」
「分かりました」
「もし異能の撃ち合いに発展した場合は迅速に対処しろ」
「つまり、こちらも異能を使ってもいいということですね?」
「使っても構わないがなるべくなら使わず無傷で無力化しろ」
「随分と難しいご注文ですね」
「毎年怪我人を出してるから何とかして平和的に解決したい。それに……」
「それに?」
「クロウナ様の息子なら容易く相手を無傷で無力化できるだろ?」
「……その言われ方は好きじゃありません」
義理の母として自分を育ててくれていることには感謝しつつもクロウナのことを毛嫌いするハルト。
「ここにある異能輪郭をお借りしていいですか?」
「構わないが自分のを使わないのか?」
「はい、自分の異能輪郭では手加減できないので」




