ウェイク編ー2
2
夕焼けに染まる空の下、黒いスポーツウェア姿のハルトは家の庭で体を動かす。
「私も一緒にしてもいい?」
「あぁ」
「ありがとう」
「チヨはまだ帰ってきてないのか?」
「うん、クロウナ様の家でご飯食べてから帰るってさっき連絡が来たよ」
「なら今日はオレとユズキの2人だな」
「2人きり……」
「ん?」
「な、何でもない!」
思わず大好きな彼との妄想をしてしまったユズキは頬を赤くし、動揺しながらストレッチを始める。
そんな彼女の不自然な様子に疑問を抱きつつもハルトは再び体を動かす。
「そ、それにしても師匠は何してるんだろう」
「最近連絡がないな。クロウナの命令で無茶な任務をしているか女性にセクハラしているか」
「人聞きの悪いことを言うねー」
「っ?!」
「し、師匠?!」
低い声がした方向へ視線を向けるとそこには短い黒髪に右目を眼帯で覆った男性がショルダーバッグを持って立っている。
彼こそクロウナの右腕であり、ハルトやユズキの2人から『師匠』と呼ばれるレゼル・ナタンガ。
「僕の気配に気づかないとは腕が鈍ったんじゃないのかい?」
「否定しませんが、師匠は完全に気配を消すことができるのでそう簡単に気配を察知することはできません」
「異能とは違う身体的な技術だからね。それにしても見ないうちにまた美人になったねユズキちゃん」
眼帯に覆われていない赤茶色の瞳がやらしい目つきに変わっていき、それに気づいたユズキが苦笑いになる。
すると、その視線を遮るように素早く彼女の目の前に立ち、師匠に対して鋭い視線を向けるハルト。
「ユズキが嫌がっているのでやめてもらえませんか?」
「クロウナ様に似て怖い殺気だねー。もちろん冗談だから安心してくれ」
「……」
「しかし、師匠に殺気を向けるとは良い度胸だ」
2人の間に見えない火花が飛び散っているのを感じたユズキは慌ててその間へ入り込み、両手をばたつかせる。
「し、師匠も晩ご飯食べませんか?」
「おっ!食べて行こう!ユズキちゃんの手作り料理は美味しいからねー!」
「あ、ありがとうございます」
「ところで師匠、何か用があって来たんですよね?」
「美味しい晩ご飯を食べたら教えるから安心したまえハルト君」




