プロローグ
信じられないことが起こった。
学園の中庭、少年二人に押さえつけられ地面に這いつくばる少女。
地面に広がった美しい金色の髪は彼女を押さえつける少年達に踏みつけられ雪のように白い肌は土で汚れた。
いきなりの出来事に目を見開く赤毛の少女。
少女は慌てて駆け寄るが、その肩を掴んだ手によって引き戻されてしまう。
引き寄せた少女を愛おしそうに見つめる灰色の瞳、陽の光に照らされきらきらと光る銀色の髪。
とても人のものとは思えない、妖精だと言われれば信じてしまいそうなほど美しすぎる容貌を持つ少年は少女に囁く。
そして始まる、愚かとしか言いようのない茶番劇。
地に伏す金髪の少女に向けて罪状を突きつけ、侮蔑の言葉を投げつける少年。
身に覚えが無いと反論するもその言葉は聞き届けれることはなく、少年達から更なる侮蔑を向けられる少女。
罪状を否定し、やめてくれと懇願するも優しく諭すような言葉で拒絶される赤毛の少女。
そして舞台の熱は高まり、多くの非難と僅かな好奇の視線の中で最高潮を迎える。
「エステル・バルトヘッドっ!公爵家に名を連ねながら嫉妬に狂い愚行を繰り返した貴様を王家に迎え入れるなど考えただけでも悍ましいっ!!今この時をもって貴様との婚約を破棄する!!!」
その宣言に少女は深い悲しみに目を伏せる。
「貴女のような女性こそ王家に相応しい、これからの時を私は貴女と共に歩んで行きたい。身分など関係ない、愛していますシャルロット・セリアス。貴女を我が妻として迎えたい」
その言葉に少女の意識は漂白し表情が消える。
少女たちが積み重ねた努力も育んだ思いも、傲慢と独善に踏みにじられて舞台の幕が降りる。
『このっ、うつけどもがっ!!!』
そして、響き渡る異国の言葉を合図に物語は第二幕へ。