94、ダンジョンお宝鑑定団
「ひいっ……」
その恐ろしさに思わず小さな悲鳴を漏らす。
俺の数メートル先にいるのは、ふらふらとおぼつかない足取りで通路を進むゾンビだ。しかしゾンビちゃんのように比較的きれいなゾンビではない。皮膚は血を吸って膨らんだようにぶよぶよ、一部は肉からずり落ちて地面に引きずりながら歩いている始末。ゾンビとはいえ、ここまで腐敗が進んでいるものは珍しい。上階の知能なきゾンビにもここまで熟成された者はそうそういない。
新鮮なバラバラ死体にはすっかり慣れたものだが、こういったタイプの死体にはまだ慣れていないらしい。
直視しているのがキツくなり、誰かに丸投げすべく声を上げようとした瞬間。
「お、いたいた。おーい!」
その朽ちかけた姿からは想像できないほど俊敏な動きで手を振りながらゾンビがこちらへと向かってくる。その恐ろしい姿にそぐわない妙な明るさに声を出すのも忘れて唖然としていると、ゾンビは自分の顔を指さした。
「なにビビってんだ、俺だよ俺!」
腐りかけた肉の奥で輝く細長い釣り目、そしてその胡散臭さ漂う声には聞き覚えがある。
俺は恐ろしさも忘れてゾンビの腐りかけた顔をじっと見つめ、そして恐る恐る口を開く。
「……先輩、ですか?」
するとゾンビはニッと笑い、大きくうなずいた。
彼は新米冒険者だった頃の俺の命を救った恩人、そして数週間共に旅をしたこともある冒険者時代の仲間である。
以前我がダンジョンにやってきたときは運よく逃げおおせることができたが、やはり冒険者などろくな死に方をしないものなのだろう。善人とは口が裂けても言えない小悪党ではあるが、このおぞましい姿にはさすがに同情を禁じ得ない。
「……まぁ、アンデッドも慣れればそう悪くないですよ。そんな不貞腐れた顔してないで、腐らず第二の人生楽しみましょうよ」
「違うわ! これは変装だ」
先輩は勢い良く言うなり、顔にぶら下がった皮膚をカーテンのように持ち上げる。腐った皮膚の下から現れた先輩の顔は乾いた血で薄く汚れてはいるものの、いたって普通の、血の通った人間のそれであった。
「なんだ紛らわしい……で、なんでまたそんなことを?」
「よくぞ聞いてくれた。これを見ろ」
先輩は纏ったボロ布の小さなポッケから小さく折りたたまれたペラペラの紙切れを取り出し、それを俺の前に突き出してみせる。新聞を切り取ったものらしいその紙には『歴史的大発見! 神殿の屋根裏から古文書発見』との見出しが躍っていた。歴史ある教会から千年以上前のものと見られる手紙が見つかったことを報じる記事のようだ。
「へー、凄いですね。この発見で古の時代の人々の生活や信仰を窺い知ることが――」
「そんな小難しい話はどうでも良いんだよ! 大事なのは古い建物からメチャクチャすげーお宝が出てきたって事実だ。これを見て俺は考えた。どこを探せばお宝があるのか」
冒険者なんだから冒険しろよ、というツッコミを入れる暇もなく、先輩は目を輝かせながら熱弁を振るう。
「そこで閃いた。何百年、下手すりゃ何千年生きているアンデッドの棲家を探せばさぞかし素晴らしい骨董品があるんじゃないか、ってな」
「……で、アンデッドに化けてうちで宝探しってワケですか」
ようやく読めてきたぞ、先輩の浅はかな考えが。
俺は険しい表情を作り、自分勝手な期待を胸に抱いた先輩へ冷たい声で宣言する。
「探したってそんなものありませんよ。もしあったとしても先輩に渡す義理はありません」
「そんな、あんまりじゃないか! わざわざ羊の血を被り腐った豚の生皮被ってこんなとこまで来たんだぞ!」
「そんなこと頼んでません」
「一体なんの騒ぎだ」
このまま押し問答が続くかと思われたそのとき、背後から足音とともに怪訝な声が飛んできた。
恐る恐る振り向くと、数体のスケルトンを従えた吸血鬼と目が合った。彼は俺のすぐ横にいる先輩に視線を移すなり、露骨に顔を歪める。
「う……な、なんだお前」
よせば良いのに先輩は腐った肉の下で愛想笑いを浮かべ、アンデッドたちを恐れるそぶりも見せず果敢に口を開く。
「これはこれは! 実はわたくし廃品回収業者の者でして」
「は、廃品……?」
「ええ! 不要になったものを今なら無料でお引き取り致しますよ!」
鼻息荒く前のめりになる先輩。一方、吸血鬼は鼻と口を手で覆い、わずかに体を仰け反らせている。
先輩と吸血鬼たちの間には不自然なほどの距離感があり、吸血鬼たちがこちらへと近付いてくる様子は一切ないどころか、むしろ後退りすらしてしまいそうな様子である。
「あ、あれ? 思ったより食いつかないな」
「その姿にドン引きしてるんですよ」
察しの悪い先輩にそう教えてやるも、彼は首をかしげながら不機嫌そうな声を上げる。
「はぁ? なんでアンデッドにドン引きされなきゃならんのだ」
「このメンバーの中で一番化物なの先輩なんですけど、自覚ないんですか。でもまぁ、これはこれで好都合です。下手に近付かれて人間だってバレたら殺されますよ」
「ふうん……なるほどな」
先輩は低い声でそう呟くと自ら足を踏み出し、吸血鬼のもとへと歩み寄っていく。
「ちょ、先輩!?」
「さぁどこですか、骨董ひ……じゃなくて、廃品の置き場所は!」
「ち、近付くな!」
吸血鬼は悲鳴にも似た声を上げながら先輩を拒絶するように一歩二歩と後退りをする。だが先輩は容赦なく早足で吸血鬼との距離を詰めていく。
「近付かないと廃品置き場がどこだか分かりません!」
近付けばその分人間だとバレる危険も増す。もし人間だとバレれば先輩などいとも容易く殺されてしまうだろう。先輩と吸血鬼の間にはそれほどまでに大きな力の差がある。
にもかかわらず、先輩の行動には躊躇というものがまるでない。自分が死ぬわけないと心の底から思っているようだ。金に目がくらんだ欲深い人間というのは本当に恐ろしい。
結論から言うと、このチキンレースに勝ったのは先輩のほうであった。
「分かった、案内する! 案内するから!」
腐敗し、朽ちかけた肉塊の接近に耐えられなかった吸血鬼は早々に音をあげた。
ここでも先輩は自らの悪運の強さを証明したのである。
********
「おお、これは宝の匂……じゃなくて廃品の匂いがぷんぷんしますねぇ」
ガラクタで溢れかえった棚がズラリと並んだ倉庫を前にして先輩は目をギラギラ輝かせる。
「だが年末に大掃除したばかりだし、不必要なものなどほぼないぞ」
「へぇ、そうですか……」
宝(かもしれないもの)に目を奪われ、生返事をする先輩。近くの棚にあった、ややくすんだ金色のいかにも古そうな燭台をさっそくとばかり手に取る。
「勝手に触るな!」
ぴしゃりと飛んできた吸血鬼の声に先輩はとぼけた表情で返す。
「え? だって廃品ですよねこれ?」
「ふざけるな廃品なものか! 買ったばかりなんだぞ」
目を吊り上げ、牙を剥いた吸血鬼は先輩の手からすごい勢いで燭台を分捕る。
先輩はというと、燭台を握ったポーズのまま口をぽかんと開けた間抜けな表情を作り、独り言のように呟いた。
「は? 買ったばかり……?」
「そうだよね、大掃除の時そんなの見なかったよ。どうしたの?」
尋ねると、吸血鬼は緻密な彫刻の施された美しい燭台をしたり顔で俺の前に突き出す。
「アンティーク風燭台だ。良いだろう」
「チッ、なんだアンティーク『風』かよ……」
早速当てが外れ、がっくりと肩を落とした先輩は小さく小さく悪態をつきながらふらりとほかの棚の前へと歩いていく。
先輩はもはや燭台への興味を失ったようだが、俺はむしろこの燭台が気になって仕方がなくなってきた。俺は吸血鬼の目をじっと見つめ、低い声で静かに尋ねる。
「なんでせっかく買った大事な燭台をこんなとこにしまいこんでるのさ」
「よく考えたら蝋燭なんて使わないからな。邪魔になってしまった」
「だからものを買うときにはもっとよく考えろっていつも言ってるじゃん」
「あー……こらっ! 勝手に触るなって言ってるだろう!」
わざとらしく俺から顔を背け、吸血鬼は倉庫内をうろつく先輩を叱り飛ばす。説教から逃れるための行動であることは疑いようがない。
吸血鬼の鋭い声にも動じず、先輩は部屋の隅に置かれた鉄の処女の腹部についた取っ手に手をかける。オシャレな像かキャビネットだとでも思っているのだろう。先輩は女性の姿を模した、一見金属製の像にも見える巨大な処刑器具の戸を開いた。
その瞬間、思わず顔をしかめたくなる強烈な臭気と共におぞましい光景が目に飛び込む。
「ギャアアッ!?」
鉄の処女の腹の中に広がる想像を絶する地獄絵図にさすがの先輩も腰を抜かして地面に尻餅をつく。
突き出た無数の棘や内壁は鉄錆に覆われ、底には異臭を放つぐずぐずに崩れた肉塊がこんもりと山になっている。ズタズタになった布や白っぽい欠片、黒い糸のようなものから、それが元は人であったのだろうということが辛うじて分かった。
「うわっ、なにこれ?」
「……洗うの忘れてた」
吸血鬼は苦笑いを浮かべながらバツが悪そうに頭をかく。呆れたことに、血を搾り取るだけ取って後始末をしなかったらしい。
笑い事じゃないだろう、と説教の一つでもしてやりたい気分になったが、どうやら先輩はそれどころじゃないらしい。
「……ッ」
先輩はすごい勢いで扉を閉め、地獄絵図を鉄の処女の中に封じ込める。
そうだった。このような生活をしているため感覚が麻痺していたが、人間にとって今のは精神に大きなダメージを与える光景に他ならない。
鉄の処女から漂う異臭にも当てられたのか、先輩は口を押えて地面に座り込んだままなかなか立とうとしない。下手に刺激を与えれば今にも嘔吐してしまいそうである。
だが不運というのは連続して起こるものだ。
その強い匂いにおびき寄せられて倉庫の扉を開けるものが一人。ゾンビちゃんである。
「ニク……?」
彼女は動けない先輩へ躊躇なく近づき、そのドロドロの体に顔を近づけてふんふん匂いをかぐ。
「お、おい。これどうすれば……」
もはや吐き気と戦っている場合ではない。先輩は怯えた目でゾンビちゃんを見下ろしながら、チラチラと助けを乞うような視線を俺に向ける。
「堪えてください。下手に動くと逆に危ないかも」
と、言ったそばからゾンビちゃんは先輩の首元にガブリと噛み付いた。
「ギャーッ!?」
「うわああっ! ゾンビちゃんなにしてんの!?」
「んー、マズイ!」
もちゃもちゃと咀嚼しながら、ゾンビちゃんは眉間にシワを寄せる。先輩の味がお気に召さなかったようだ。おかげでゾンビちゃんからの追撃は無さそうだが、先輩はそんな事を喜んでいる余裕はないらしい。
先輩は細長い目を見開き、首を押さえてジタバタと地面を転がりまわる。
「ひいいいいっ! 痛い! 痛いいッ!?」
「落ち着いてください、『皮一枚』無くなっただけですから!」
ゾンビちゃんが食べたのは顔からぶら下がった豚の皮のみ。もともと血塗れなので分かりにくいが、新たな出血の跡は見られない。彼の悪運はここでもいかんなく発揮されたのである。
もちろん痛みなどなかったはずだ。しかし恐怖からか、ゾンビちゃんに噛まれた跡を念入りに確かめている。
「ギャーギャー騒ぐな、どうせ死なないんだから」
大袈裟に転げ回る先輩を見下ろし、吸血鬼が呆れたように口を開く。
そうだった。先輩のもくろみ通り、吸血鬼もゾンビちゃんも先輩のことをアンデッドだと思っているのだ。
上手く騙せてはいるが、先輩の策は正直あまり良い手ではなかった。このままではいつ冗談混じりに致命的な攻撃を与えられるか分かったものではない。本物のアンデッドならば問題ないが、先輩は少々頸動脈を傷つけられただけで死んでしまう脆い生き物なのだ。
ここは何か対策をしておく必要がある。
「い、いやいや吸血鬼! この人は俺らと違ってかなり低級のアンデッドなんだよ。だから普通の死体とおなじで、傷つけられたり食べられたりしても再生しないんだ。そうでしょ? ね?」
「え? ……あ、ああ! そうです、ワタクシしがない低級アンデッドでヤンス!」
先輩は手を揉みながら小物感たっぷりにゲヘヘと笑う。
その板についた小悪党ぶりもあってか、吸血鬼も納得したらしい。怪訝な表情から一転、哀れみのこもった視線を先輩に向ける。
「そうだったのか。それはすまない」
「ウエエエ……アイツ豚ミタイナ味スルよぉ」
「こら、失礼なこと言うな」
顔を歪めて先輩を指差すゾンビちゃんを吸血鬼はピシャリと叱りつける。
実は的を得ているゾンビちゃんの感想に俺たちはただただ苦笑いを浮かべるばかりだ。
とにかくこれで一安心……と思った矢先。更なる問題が倉庫へと足を踏み入れた。
『お詫びにどうぞ』
そんな文言の載った紙を掲げながら、スケルトンが湯気の立つ串揚げを先輩に差し出す。スケルトン特製、ネズミ串揚げだ。
「う……こ、これはこれは……」
先輩は小刻みに震える手でゆっくりとスケルトンから串揚げを受け取る。
もちろん先輩はこの串揚げに使われた肉がネズミであることを知らないし、見た目だけならその辺の屋台の食べ物よりよほど美味しそうである。
とはいえ、やはりここはアンデッドダンジョン。しかも先輩は先ほど鉄の処女の中に広がる肉塊地獄を見たばかりだ。アンデッドの作った得体の知れない食べ物を口に入れるような余裕は当然ない。
受け取るには受け取ったが、先輩はなかなかそれを食べようとしなかった。
「なんだ、ゾンビなのに肉に飛びつかないのか? 同じゾンビでも随分違うんだな」
吸血鬼はそう言って先輩とゾンビちゃんとを見比べる。
ゾンビちゃんも両手に串揚げを握り、すごい勢いで肉を頬張っていた。これではますます先輩の立場が悪くなる。
「食べるなら早く食べた方が良いぞ、お前の串揚げを3分守るために小娘に10本の串揚げを与える必要がある。手持ちの串揚げがなくなった瞬間、小娘はお前の腕ごと串揚げを奪い取るぞ」
「ひえっ……」
ゾンビちゃんは両手いっぱいに持った串揚げを今のところ大人しく頬張っているものの、その目はしっかりと先輩の串揚げに向けられている。まるで隙を伺う猛禽類だ。
「食べないと怪しまれますよ。大丈夫、人肉とかではないんで」
「……分かった、分かったよ」
スケルトンたちの注目を一身に浴びながら、先輩は大きく深呼吸をする。そして次の瞬間、毒でも呷るのかと思うほど鬼気迫る表情でネズミ串揚げに齧り付いた。
「うぐっ!?」
先輩は唸り声を上げ、ピタリと体の動きを止める。俺は慌てて先輩に耳打ちをした。
「は、吐いたらダメです! ダメですよ!」
「う……うう……」
先輩は目を見開き、そして大きく口を開ける。
「美味い!」
先輩の口から出たのはネズミ肉ではなく、串揚げに対する賛美の声であった。
「なんだこの野性味溢れる刺激的な味は! こんなの初めて食べるぞ!」
『気に入ってもらえて良かった』
『新作ネズミ串揚げ』
スケルトンたちも先輩の反応に満足そうに頷く。串揚げ肉の正体をサラリとバラす文言が目の前にあるものの、幸か不幸か先輩は串揚げに夢中でその紙にも気付かない。
俺は先輩から紙を隠すためさり気なくスケルトンの前に移動しつつ、スケルトンの言葉の疑問点について尋ねる。
「新作って? いつものとなにか違うの?」
するとスケルトンは誇らしげに胸を張り、サラサラと紙にペンを走らせる。
『ダンジョン産錯乱キノコパウダーをまぶしたよ』
『いつもの串揚げに刺激をプラス』
「さ、錯乱キノコを!?」
「ウギャアアアアァッ! オッジョベロベボンナ!!」
驚きのあまり声を上げたその瞬間、俺の声を掻き消すほどの大絶叫がダンジョンに響いた。
慌てて振り向くと、岩から伝説の剣を引き抜いた勇者のごとく串を高く掲げて誇らしげに胸を張っている先輩が目に飛び込んできた。その目はギラギラ怪しく輝き、ここではないどこかを見つめている。
「ちょっ、大丈――」
「ウキマャッヒャハー!!」
もはや俺の声など届いていないのだろう。先輩は棚に無茶苦茶に体をぶつけながら倉庫を飛び出していく。バタバタという足音と共に、先輩の奇声は徐々に遠ざかっていった。
先輩が消え、なんとも言えない微妙な空気だけが倉庫には残された。俺たちは顔を見合わせ、ぽつりぽつりと話し始める。
『パウダーかけ過ぎた?』
『いや、そんなことは』
「なんだアイツ、ゾンビのくせに随分感受性が高いんだな」
「あはは……」
錯乱キノコを人間に使用したのは初めてだ。まさか、死なないよな?
少々不安に思わないでもないが……まぁいいか。考えたって仕方がない。
先輩の事がどうでも良くなると、次は先輩の狙っていた「骨董品」について妙に気になってきた。
「そういえば、うちって骨董品とかあるの?」
「骨董品?」
「いや、やっぱり長く生きてるとそういうのも持ってるのかなって」
「あるわけないだろう、そんなもの。古いだけの退屈な馬鹿高いガラクタを買うわけもないし、新品が骨董品になるまで一つの道具を後生大事に持っておけるほど退屈な生活をしていない」
「ま、そうだよねぇ……」
腕がもげても首が飛んでも再生するアンデッドと違い、物はすぐに壊れてその上治らない。日夜喧騒に包まれるこのダンジョンで再生能力を持たぬものが五体満足で「長生き」できるはずもないのだ。
「そんな古いもの、人間だってアンデッドだってそうそう――」
その時、倉庫へと入ってきたスケルトンを見て俺は言いかけた言葉を飲み込んだ。
スケルトンの頭蓋骨が、なにやら他のスケルトンとだいぶ違った形をしていたのである。
その頭部にあるのは茶色っぽい朽ちかけた頭蓋骨。体とはアンバランスなほどに大きく、その歯はノコギリのように尖っており、口は獣のそれのごとく飛び出ていて、眼窩は横に付いていた。明らかに人の頭蓋骨ではない。
「そ、それは一体どうしたの?」
尋ねると、スケルトンは恥ずかしそうに頭を掻きながら一枚の紙を俺たちの前に突き出した。
『今頭蓋骨が在庫切れで、これしかなかった』
「……なんだか変な形だな。しかもだいぶ古そうだぞ。一体どこで手に入れたんだ?」
『ダンジョン拡張工事の時土の中から出てきた』
スケルトンが事も無げに言ったその言葉で、俺の中の疑惑は確信へ変わった。
「……それ、古代竜の化石じゃ……」
骨董品は、案外身近な場所に埋まっているのかもしれない。




