30 プレゼント作り
「よーし、じゃ、俺はお前の成功を祈りながらちょっくらゲームしてるから。
飛ぶ時には声掛けろよ」
「あ、今夜はちょっとママにプレゼントを作るから、飛ぶのは明日にするつもり」
「いつも思うけど、おまえって義理堅いよな。なんかもらったらお返しとか。
ま、お母さん喜ぶな。がんばれよー」
はるにいが自分の部屋に戻った後、私は本棚の隅から古い手芸の本を何冊か引っ張り出した。引き出しの奥の方、確かこの辺りに・・
「あった!」
手の平に乗るくらいの小さな透明なアクセサリーケースの中には、九種類のビーズがきれいに区切られて入っている。
去年くらいに本で見て、 ビーズアクセサリーを作るのがマイブームだったんだ。
この前うさぎの編みぐるみもらったし、私もママになにかプレゼントしたいなあって。ちょっとしたものでも、 きっとママなら喜んでくれるって思うから。
気軽な気持ちでやってみたけど、久しぶりに触るビーズ細工は思ったより難しい。
テグスが手から滑り落ちちゃって、何度も通したビーズがバラバラになった。
一時間以上かけて、ようやくお花のモチーフを付けた指輪が完成した。
「はあー、やっとできた。むずかしいなあ、こういうの」
・・もし、もしもママが、六年前のママが今そばにいてくれたなら、一緒にビーズのアクセサリー作ったりできちゃうのかな。ママ、すごく上手そう。
ビーズだけじゃなくて、編み物とか、刺繍とか、キルトとか。手芸は好きだから、やってみたいことはたくさんある。
無駄に膨らんでく、私の勝手な妄想。
だけど、この計画が上手くいって、ママが今と同じ道を選ばなければ、この妄想だって夢じゃないのかも・・
だめだめ。あんまり期待しすぎると、がっかりするんだから。
私は、私が今できることを精一杯やる。それだけ。
プルプル頭を振って、浮かれた気分を落ち着けた。
できた指輪を自分の左手の親指にはめてみる。
ママの中指は私の親指と同じサイズのはずなんだよね。うん、カワイイ。
私はきれいな折り紙で手紙折りをして指輪を中にいれた。
はっと気づいたらもう十時。 どうりで眠い。
あ、でも宿題、まだ残ってるんだった。しかも国語のドリルもある。
やばっ!
今精一杯やらないといけないのは、勉強みたい・・・。はぁ。
・・・結局、お布団に入れたのは十一時半だった。




