1 拾ったタイムマシン
私は小さい頃からよく学校帰りに物を拾う。
途中までは仲良しの美穂とおしゃべりしてるんだけど、道が分かれて一人になるとつい視線が下に行くから色々見つけてしまう。
小学生の時はキレイな石ころとかビー玉とか、壊れたキーホルダーなんかを見つけると大喜びだった。
お金はめったに落ちてないけど五百円を拾ったこともある。
去年、小六の時、私はウズラの雛を拾った。
後から聞いたけど、近くの神社で縁日があったらしい。
私はもちろん喜んで持って帰った。でもママにうちでは飼えないでしょと怒られて、撃沈。
結局、学校の飼育小屋で飼ってもらえることになった。
名前はチェリー。拾ってきた私の名前、さくらからみんながそう付けてくれた。
一年経った今でもすくすく育っている。
坂西中学校と坂西小学校は飼育小屋とか花壇のある裏庭はつながっているから、今でもチェリーの顔を見に裏庭によく行っている。
その前にも猫を拾って、誰か飼ってくれる人がいないかご近所を回ったこともある。犬も。
うちでは飼えないって言われるの分かってるし、動物を拾うのは大変なことだって分かっているんだけど、捨てられているのを見ちゃうと放っておけないんだよね。
そして今日、私は今までで一番すごいものを拾ってしまった。
最初は携帯電話か、小さな時計かなと思って手に取った。
画面は安っぽいモノクロの液晶になっていて、数字が並んでいる。
西暦、と日付。それから時間。昨日のだ。カレンダー付きの時計なのかな。
裏を見ると折り畳まれた紙がテープで丁寧に留められている。
なにか書いてあるみたい。
なんとなく人がいないかきょろきょろと周りを確認して、道の隅っこのブロックに座って紙を開けてみた。便箋にビッシリと並んだ細かい字。
書いた人の性格が分かる気がする。・・この人、絶対すごい神経質だ。
『これを拾ってくれたあなたへ。
これはタイムマシンです。行きたい日付と時間を合わせてボタンを押せば、その時間に行くことができます。ボタンを押した時の場所とほぼ同じところに着きます。タイムリミットは一時間。
時間内にもう一度ボタンを押して、元の時間に戻らないといけません。
戻ってくると、行った時間の分だけその場で眠ってしまいます。
ボタンを押す場所にも注意してください。
もし一時間を過ぎても戻らなかった場合、身の安全は保障できませんので、くれぐれも気をつけてください。
このタイムマシンは、これを拾ったあなたのものです。
どう使っていただいても構いません。
あなたの思うように活用してください。』
なあに、これ・・・?
あんまり非現実的な内容にポカンとした。
タイムマシン? この小さな時計が?
えー? ばかじゃないの? どこの誰がこんな暇なイタズラをしてんのよ、まったくもう。
そう思いながらも、まあせっかく拾ったんだし、とりあえず持って帰ろう。
ということで、小さなタイムマシンらしき物を手提げカバンにすべりこませて、家へと急いだ。