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Second Life Online  作者: 三日
6/53

5話 おみくじ



 アクセス数を見たところ、思いのほか多くの方に読んでいただけているようで、嬉しい限りです。


 まだまだ未熟で稚拙な文章ですが、今後ともよろしくお願いいたします。



 ユーリは街に戻ってくると、まず着ていたコートを脱ぎ、ストレージ内にしまった。

 今まで着ていた白いコートは耐寒性重視の防御力が低い服だったため、戦いの中でボロボロになっていたのだ。

 知り合いしかいないのであればともかく、街中でいつまでもそんな恰好でいてはさすがに目立つ。

 ユーリはウインドウを開いて新しい白いコートと、ついでにパーティーの共有ストレージからおみくじを取り出した。


 ユーリは取り出したコートを片手に持ち、おみくじの内2枚をコトネとカケルの二人にわたす。


「はい、二人の分」


「これ、なに?」


「ほ~、これが報酬のおみくじか。初めて見た」


 カケルが渡された紙をしげしげと眺める一方で、コトネは差し出された紙が何なのか分からないでいる。

 カケルがすでに、おみくじという言葉を口に出しているので必要ないかもしれないが、ユーリは一応コトネの疑問に答えた。


「クエスト報酬のおみくじ。このおみくじの結果によって、今年一年のLUC値に補正がかかるんだ。

 ちなみに凶とかは入ってないらしいから、マイナス補正の心配はないよ」


「LUC値が上がると何かあるの?」


「んー……カジノで勝ちやすくなったり、倒したモンスターから質の良い素材が取れたり、とかかな」


 基本的にランダムな確率で結果が出る類のモノには、LUC値によって補正がかかる仕組みになっている。

 ちなみにLUC値は他の攻撃や防御の能力と違ってSpを振り分けての強化ができない。

 基本となる数値が年ごとに決まり、その後は日ごとにその基本数値から若干の増減がされる仕組みだ。

 

 今回のクエスト報酬のGpとRcの額は、神話エネミー討伐クエストにしては決して高くない。

 Gpに関しては、低級の神話エネミーを倒して得られる平均Gpは1万~2万と言ったところ。

 今回はその中でも弱い部類であったため、7000Gpで妥当だろう。

 Rcに関しても1時間程度で終わる手軽さと、敵の強さから考えれば適正額だと言える。


 しかし、妥当と言うだけで破格とは言えない。

 にも関わらず、このクエストが予約制になるほどの人気を誇るのは、このおみくじが有るからだった。

 意図的に数値を変えられないLUC値を、強化できるアイテム。そんなものが報酬に含まれているのだから、人気があるのも頷けるだろう。


「へー」


 コトネは感心した様子でおみくじを開いていく。カケルの方は二人が話している間に開けてしまったようだ。


「お、大吉」


 どうやらカケルは大吉を引いたらしく、嬉しそうにしている。


「ああ、クエストの難易度が高いほど良い運勢が出るらしいからね。コトネも多分大吉だよ」


 ユーリが説明している途中、ちょうどコトネがおみくじが開き終ったようだ。

 開いた中身は大吉。ユーリの言った通りだった。


「なんだ、そうなのか」


 ユーリの言葉で若干がっかりした様子で、カケルはおみくじの詳しい内容に目を落とす。


「ていうかこのおみくじ、恋愛運とか金運も書いてあるけど意味あるのか?

 なんか大吉とか書かれてるわりに、他の項目が良く無さそうなんだけど」


「さぁ? 現実でのおみくじ代わりくらいに考えたらいいんじゃないかな」


「え、なに。この大吉ってうわべだけ? 外だと凶なの? 俺」


 開いた時の嬉しそうな様子はどこへやら。

 少なくとも大吉で喜ばせてから落とされているあたり、彼の運勢は良く無いように思える。


「……後で外でもおみくじ引いたら?」


(そこは、気にするなとか言ってあげようよ。兄さん)


 もう一度おみくじを引いて、そこで凶を引いたりしたら悲惨だろう。

 それこそ、今年一年の運勢が悪いと追い打ちをかけることになる(凶を引けたらそれはそれですごい確率だが)。


「えっと、どういう事が書かれてるんですか?」


 おみくじの内容など、人に話せば笑い話になって適当に流されるだろう。そう思ったコトネはカケルに内容を聞いてみた。


「ほれ」


 カケルは手に持ったおみくじをコトネに差し出す。

 どことなく口調がぞんざいなのはショックが大きいのか、それともコトネと打ち解けてきたのか、判断に困るところだ。


「どれどれ」




【仕事・学業】

 あなたがいくら努力しようとも、周囲はなかなかそれを認知しないでしょう。

 しかし結果が出ないと諦めてはいけません。

 得るものが少なかろうとも、失うものまで大きくする必要はないのだから。



【友情】

 人の影に埋もれて、存在感が薄れるかもしれません。

 他人への嫉妬は止めましょう。その人が持つ何を望もうとも、あなたには無用の物。

 自分には自分の輝ける場所が存在するのです。



【恋愛】

 失敗を恐れるばかりで好機を逃してはいけません。

 人の出会いは一期一会。望んだ時にはもう遅く、後悔するのが人の性。

 受け身の姿勢で得るのは後悔のみ。行動の結果、得られる傷を勲章と思いなさい。




 おみくじというよりも人生相談みたいな内容だが、ここまで見た限り、たしかにあまり良い運勢とは言えない。

 そう思いながら、コトネは残り一つの項目に視線を移す。

 



【金銭】

 うん、まぁ……頑張れ。

 



「これだけ!?」


 あまりにも不意を突かれた内容に、コトネは声を出して驚いた。普通ならばふざけて書かれた文章だと思うだろう。

 しかし金運以前の三つがまともなものだったため、助言もできない程にひどいのかと、勘ぐってしまう。

 ウケ狙いだと言われても、どこまでが冗談か分からなくて笑えない。


「これって、笑うところだと思うか?」


 おみくじを引いた本人も、どういうリアクションをとればいいのか分からないようだ。


「まぁ……頑張れば良いんじゃないんですか? そう書いてありますし」


「いや、頑張れって何を?」


「……とにかく頑張ってください」


「なんか、面倒だからとにかく頑張れで押している気がするのは気のせいか?」


 その言葉にコトネは軽く目をそらした。


(わかりやすいな。おいっ!)


 そうは言われても、実際どういう言葉を掛ければいいのか、コトネは分からなかった。

 カケル自身、たかがおみくじ一つで本気で落ち込んでいるわけでもないだろう。

 

 本気で慰めの言葉を求められているわけでもなく、かといって笑い話としてからかうにはコトネとカケルはまだ関係が浅い。

 そういう会話は、コトネよりも付き合いの長いユーリの方が適しているだろう。

 しかし当の本人は、おみくじの内容にはほとんど興味が無いようで、ただ二人のやりとりを眺めているだけだった。



「それで、カケルはこれからどうするの?」


 二人の会話が途切れた瞬間を見計らい、ユーリが口を開いた。


「僕はこれから約束があるから、ここで解散する予定だったんだけど」


「あー、そうだな。暇だしもうしばらくはこっちで適当に歩き回るわ」


 せっかくの大晦日なのだから、しばらくは賑やかな雰囲気を楽しむのも悪くないだろうと、カケルは思った。


「あ、だったら私も一緒に行っていいですか?色々と見て回りたいんですけど道に迷いそうなので」


「ああ、別にいいぞ」


 カケルとしては、元々当てもなく歩くつもりだったのだから、連れが一人増えても問題は無い。


「それじゃあ、僕はもう行くから。じゃあね」


 ユーリはそう言うと、二人に背を向けて歩き出した。


「おう、じゃあな……って、あ!」


 カケルはユーリに向かって軽く手を振ると、ふと途中であることに気が付いた。


「ちょっ、待て」


 ユーリを呼び止めようとカケルが声を上げるも、ユーリにはその声が聞こえず、そのまま歩いて行ってしまった。


「あー、行っちまった」


「どうしたんですか?」


「いや、あいつクエスト報酬引き出さないまま行っちまったんだけど」


「あ!」


 今回のクエスト、自分たちは何もしていないのだから、報酬を受け取る資格はユーリにある。

 二人はそのように考えていたのだが、当の本人は報酬を引き出さずに行ってしまった。


「ったく、さっきストレージからおみくじ取り出してたし、忘れてたってことは無いと思うんだけどな」


 実際のところ、ユーリは報酬の事を忘れていたわけではない。

 ユーリに限らず、トッププレイヤーのほとんどは、ほぼ毎日ソロでダンジョン奥地に潜っているため、 一般的なプレイヤーとは有する知識が偏っている。

 つまるところ、良く言えば浮世離れしている。悪く言えば世間知らずということだ。


 ユーリの中では、パーティーで得たクエスト報酬はメンバー全員で平等に分けるもの、というイメージが定着している。

 自分達で分けなくても、時間が経てば自動的に分配されるのだから、別に急いで報酬を分ける必要も無いか、というのがユーリの考えだった。


「はぁ、後でメールしとくか」


 そう言うと、カケルは視線をコトネの方に向けた。


「んで、どこか行ってみたいところとかはあるか?」


「えっと、私は土地勘を身に着けたいだけなので、どこに行くかはおまかせします」


 特に要望もなく行き先を丸投げするというのは、気遣っているようで相手を困らせる回答だ。

 コトネの方に悪気はないのだろうが、それでも任されたカケルとしては悩んでしまう。


「んー、とりあえず出店でも回って適当に買い食いするか?」


「はい」


 そう言って、二人は人でにぎわう通りに向かって歩いて行った。



 ユーリは二人と別れた後、しばらく街灯に照らされた小さな通りを歩いていた。

 出店で賑わう大通りから多少離れ、人混みも少なくなってきた通りの端で、ユーリは力強く地を蹴り、大きく跳躍する。

 そして近くの壁や看板を踏み台にさらに跳躍を繰り返し、建物の屋根の上まで登って行った。


 今ユーリがいる都市、『アークガーデン』は現在発見されている都市の中でも最大級の都市の一つである。

 総面積、約2,000平方Kmという広さを誇り、プレイヤーの拠点やNPCの住居が、数ある都市の中でも最も多い。

 それだけの規模の都市となると、当然移動にも時間がかかる。


 この世界には車やバイクがあり、自由に乗ることができるが、それはあくまで他人に迷惑を掛けないというモラルの上での話。

 仮想世界全域でそのような自由を許していては、ルール無用の無法世界になるだろう。

 そのためこの世界では、地域ごとに様々な規制がされているのだ。

 ある地域で許されていたことが別の地域では禁止されている。そういうことが多々ある。


 結局何が言いたいのかというと、アークガーデンでは規則のため車などの利用は、一部の例外を除き、できない決まりとなっている。

 そういった事情から、多くのプレイヤーは移動のために自らの足を使わなくてはならず、多大な時間がかかってしまうのだ。


 もちろん、ユーリもそういったプレイヤーの一人。

 普通の道を歩いていたのでは、目的地まで到着するのにかなりの時間がかかる。

 走ろうにも人混みの中では他の人に迷惑をかけてしまう。

 ならば、とユーリは人気の少ない屋根の上を走り目的地まで向かおうとしたのだ。


 幸いなことに、この世界の家は丈夫な造りになっているため、屋根を踏んでも軋むことが無い。

 ユーリの行っていることは、相応の身体能力があるプレイヤーならだれでもやっている事だった。


 現在のユーリの速度、時速にして約70Km/h。100m走に換算すると、5秒程度で走りきれる速さだ。

 屋根の上を走っているため道を迂回する必要もなく、ユーリはそんな超人的な速度でひたすら真っ直ぐ走り抜ける。

 10分程走り続けたところで、ユーリは街外れにある屋敷の前に到着した。


 それほど大きな屋敷ではない。

 外から見た限り、二階部分は無いが屋根裏部屋ぐらいなら有りそうな造りの洋館だ。

 街外れということもあって周囲は林になっており、ペンションのような小洒落た雰囲気がある。

 

 ユーリは特にノックなどもせずに、両開きになっている扉を開けて中に入っていった。





 おみくじの内容とかはぶっちゃけ適当です。

 本編の中で今後このネタに触れることは、多分ありません。

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