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Second Life Online  作者: 三日
39/53

38話 リベンジ



 突然周囲に響く爆発音。

 何が起こったのかと、音源へと目を向けたミオがそこで見たのは、先ほどまでユーリが進んでいた方向の空に、もうもうと煙が上がっているところだった。


(何、が……)


 ここで困惑しつつも、周囲への警戒を失わなかったのは、ひとえに戦闘プレイヤーとしての実戦経験のたまものだろう。

 ミオは即座に周囲を見わたし、今の現象の原因を探した。

 するとすぐに、ここに来るまでに進んできた石の道、その脇に生える木々の間から黒いマントを着た男が出てきた。

 見覚えのある……というか忘れようがない男だ。


(ッ! 昨日の……)


 それは、先日闘技場にて突然襲ってきた男だった。

 今日はフードを被っておらず、真正面から鋭い視線がミオに向けられている。


「よぉ、ガキ。昨日の続き、しようや」


 こちらを警戒しているのか、はたまた余裕なのかは分からないが、どうやら昨日と違って、いきなり戦闘に入りはしないようだ。

 それでもミオは即座に臨戦態勢を取れるようにと、ウエストポーチへと手を伸ばす。


「……いつから、ここに?」


 その質問に込められている意味は、どうしてここに居るのか、だ。

 尾行されていたならば、気づけた筈だとミオは考える。現に昨日は尾けられていたことを察知することが出来ていたのだ。

 ならば、考えられるのは先回りされたか、偶然同じ場所に居合わせたかだ。

 この内、前者は無理だろう。今日この時この場所にミオが来ることを察知できたものなど存在しないのだから。


 ならば、残るは後者なのだが、この広い世界で二日続けて同じ人物に会うなど偶然で済ませ居ていいのか、ミオには疑問だった。


「はっ、今日は気付かなかったのかよ。

 俺は町からずっとお前の後ろに居たぞ」


 しかし、その答えはミオが無いだろうと考えていたもの。

 得意げに語るマグナに対して、ミオは僅かに目を見開いた。


(ッ、尾けられてた!?)


「どうして、私がこのエリアにいるって……」


「別にてめぇを狙ってこのエリアに来たわけじゃねぇよ。町で獲物を探してたら、丁度よく見つけただけだ。

 ま、余計な邪魔も一緒だったが」


 そう言いながら、彼は先ほど爆炎が上がった空中に視線を向け、それにつられてミオも同じ場所へと目を向けた。

 空には未だ煙が、耳には爆音の余韻が残っている。ただそれだけの要素で、ミオには充分に先の爆発の威力が理解できた。

 昨日、今日とで、ミオはユーリというプレイヤーの強さをわずかながらに知ることが出来たが、それでもあの爆発をくらってはただでは済むまい。


「……どうして、あの人を攻撃したの?」


 心なしか、ミオの目つきと声音にわずかな険が宿っている。

 それも仕方がないだろう。自分を狙っていたその巻き添えで関係ないものが巻き込まれたのだ。良い気分ではないだろう。


「あん? 言ったろうが。

 邪魔だったんだよ。昨日みたいに横から手出しされちゃ厄介だからな」


「それなら……今攻撃する必要は無かった。

 あの人は、もう帰るとこだった」


 邪魔だといっても、今のタイミングでユーリを攻撃する必要は無かった。

 ユーリは丁度この場を去るところだったし、放っておけばミオは自然と一人になったのだ。


「あいつが消えんの待ってたら、てめぇもログアウトしてたじゃねぇか」


(ログアウト……?)


 その言葉を聞いて、ミオは一瞬どういう意味か分からなかった。

 ログアウトしようとした覚えなどないし、自分は先ほどからこの場所から移動すらしようとしていなかった。

 やろうとしていたことなど、単にウインドウを開いてコトネに連絡を取ろうとしただけ――


(……あ)


 と、そこまで考えてミオはようやく察しがついた。

 客観的に見て、その人がウインドウを開いた場合どういう目的で開いたかなど知りようは無いのだ。

 先ほどユーリはこの場所から去ろうとしたところであったし、そのタイミングでミオもウインドウを開けば、それはログアウトしようとしたと思われても仕方がない


「……で、質問はもう終わりか?

 無いならさっさと武器出して構えな」


 どうやら、いい加減に質問に答えるのが面倒になってきたようだ。言葉に若干の苛立ちがにじんでいる。

 だがミオは、その苛立ちとは関係なしに、目の前の男の態度に違和感を感じた。


「今日は、不意打ちはしないの?」


「ハッ、嫌味ったらしいガキだな」


 嫌味ととられて仕方のない発言では有ったが、ミオとしては純粋な疑問からくる言葉だった。

 ミオとしては、昨日の一件から、目の前の男が平気で不意打ちを行える者であると分かっている。

 そんな男であれば構えを促す前にいきなり襲い掛かってきても不思議ではない。

 むしろ、そうした方がらしいと言えるだろう。


「てめぇみたいなガキにそんなセコイ手必要ねぇ。

 今日は格の違いってやつを教えてやるよ」


 そう言われ、ミオの目元が一瞬ピクリとひくついた。

 しかしそれだけで、明らかな挑発行為を行われても、ミオは何も言い返さなかった。

 

 ミオは先日敗北したばかり。見下されるのは当然のことであるし、何を言っても負けた事実は変わらない。

 今のミオの中で占めているのは、相手の挑発に対する反論を探す事でもなければ、見下されることを潔く受け入れる事でもない。


(今日は……勝つ!)


 ただ勝利することだけを考え、ミオはポーチから巨大な剣を抜き放つ。


 その光景に三人分の視線が向けられていることに誰も気付かないまま、ミオのリベンジマッチが始まった。







 ようやく、次回久しぶりの戦闘回に入れそうです。

 

 本当はユーリ君の戦闘を書きたかったのですが、設定上、彼と同レベルのキャラってなかなかいないんですよね。

 早いとこ彼の見せ場を作らないと、主人公として影がだんだん薄くなっていくなぁと若干焦っております。

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