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Second Life Online  作者: 三日
21/53

20話 意外な出会い



 書いては消してを繰り返し、結局しっくりくる展開が書けませんでした。


 本来まだ登場させるつもりのなかったキャラまで登場させちゃうし、今回はあまり納得できない出来ですが、これ以上遅れるのもまずいと思ったので、とりあえず投稿します。


 遅れて申し訳ありませんでした。

 


 デート、言い方を変えると逢引き。それは親しい男女間において、待ち合わせをして遊びに行くことである。

 近頃では恋人といった関係に限らず、友人や兄妹間においても、その単語が用いられることがある。

 そういう意味では、現在のユーリとコトネの状況も、デートと呼べるのかもしれない。

 

 …………二人の居る場所が、カジノでさえなければ。


 ガッシャン、ジャララララー


 コインが流れる音。喜びや嘆きなど様々な人の声。

 そんな騒がしい音に満ちた絢爛な内装のカジノの中、ユーリとコトネの二人は立っていた。


「……ねぇ、兄さん」


「ん、なぁに?」


「すごく今更な質問なんだけど……どうしてカジノに来たの?」


 本当に今更である。本来このような質問は、目的地に到着する前に言うものだろう。

 まぁそれに関しては、自分で明確な行き先を提案できない人間が、人の意見に口出しして良いのか、というコトネなりの葛藤があったわけだが。


 しかしユーリは、特にそのことを気にした様子もなく、淡々と質問に答えた。


「カジノなら遊びながらお金を稼げるし、暇つぶしにはちょうどいいでしょ?」


「えぇ~……」


 ユーリの発言はある意味で合理的なのかもしれない。しかしそれは、あくまで確実に利益を出せるならばの話だろう。

 ただでさえコトネは初心者で所持金が少ない。そんな状況で、安易に賭け事などしたくないというのが、正直な気持ちだった。

 

 そのことを伝えようかと口を開きかけるが、コトネは口を開こうとしたところで逡巡した。


(ここまで来て、別の場所がいいなんて、ちょっと勝手すぎだよね)


 わざわざ連れてきてもらって何もしないでは、ユーリに無駄骨を折らせたことになる。

 数秒の沈黙の後、とりあえずはカジノ内を回ってみようと、コトネはユーリと二人で歩きだした。



 歩いて数分もすると、最初はしぶしぶといった感じだったコトネも、そのうちにそういった様子はなくなっていった。

 コトネは今までカジノに来た経験などない。そんな初めて見る景色に対して好奇心を覚えるのも、当然と言えば当然だろう。


「昼間なのに随分人が多いんだね?」


 コトネはあまりの人の多さに、ふと疑問を感じた。

 普通、カジノといえば、夜に賑わっているようなイメージが有る。

 最初は、カジノ内に配置された、飾りのようなNPCかと思ったが、視界に入る人たちは、皆何かしらのゲームをプレイしており、そうは見えない。


「あー、多分理由はこれじゃない?」


 質問に対し、ユーリは一枚のポスターの前で立ち止まった。

 コトネがポスターに視線を移すと、そこにはでかでかと派手な文字が書かれていた。



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―――――――――――



 コトネは広告に一通り目を通したことで、周囲の人の多さに納得する。

 福引の景品がどのような物かは分からないが、おそらくは期間限定と書いてあることからも入手困難な賞品なのだろう。それ目当てに多くの人が集まるのも頷ける。


 そして一人納得したコトネに対し、ユーリは付け加えるように口を開いた。


「それに、今の時期だと、丁度おみくじでLUC値上げた人も多いだろうしね。

 その分人も多いんじゃない?」


「おみくじって、大晦日のあのクエストの?」


 コトネは大晦日に受けた七福神クエストの報酬について思い出す。

 おみくじについてユーリが説明する際、LUC値が上がればカジノで勝ちやすくなると言っていたのは、コトネの記憶に新しい事だ。


「そう」


 コトネの質問に、ユーリは短く首肯した。

 

「けどあのクエストって、予約制であんまり受けられないんじゃ……」


「僕らが受けたのは、最高ランクだったから定員が少なかっただけだよ。

 もっと低いランクのクエストなら、もっと大勢が申し込めるんだ。その代り、おみくじの効果も低くなるけどね」


「え、じゃあここに居る人たち、皆クエストを受けた人たち?」


「全員じゃあ無いとは思うけどね。

 少なくとも、あっちのコーナーに居る人たちの大半はそうじゃないかな?」


「あっち?」


 ユーリはしゃべりながら、離れた場所にある、扉を指で示した。

 開かれた扉から見える内部は、何やら機械的な光がチカチカトしており、今いる場所とは雰囲気が違うのが見て取れる。


「ほら、こっちにあるゲームはトランプとか、ルーレットとか、いかにもカジノって感じでしょ?」


 そう言いながら、二人は揃って周囲を見渡す。


「うん」


「こういう実際に対戦相手がいて、自分で作業するゲームはリアルラック……って言うか、プレイヤーの実力が試されるんだよね」


「え、じゃあ、あっちのゲームって……」


 察しの良いコトネは、ユーリの言葉から、区画分けされたゲームの違いについてなんとなく予想が出来た。


「あっちのコーナーは、カジノって言うか、ゲームセンターに近い感じかな。

 筐体みたいのがあって、コンピューターを相手にするようなものばっかりだよ」


 例えばポーカーであれば、実際にカードを引く形式だと、実際にいいカードを引けるかはその者の運しだいだ。

 しかし、画面に向かってプレイするような形式の場合、手札はコンピューターが自動配布するため、プレイヤーの能力として設定されたLUC値の補正が効くのだ。


 そのことをユーリが一通り説明し終わると、コトネが口を開いた。


「じゃあ、私たちはあっちのコーナーに行った方がいいってこと?」


「ん、まぁ、それが無難だろうね」


(そういうことはもっと早く言ってよ)


 自身の言葉を肯定するユーリに対してコトネは、先ほどまでこっちのコーナーを回っていたのはなんだったのか、という気分になった。

 しかし、そんなコトネの気持ちを知ってか知らずか、ユーリは更に言葉を続ける。


「まぁ、こっちのコーナーでも自信のあるゲームが有ったらやってみたらいいんじゃない?

 ……約二名、おみくじを持ってるのにこっちでゲームしている人がいるし」


「え?」


 後半、付け加えられた言葉に対してコトネは疑問符を浮かべる。

 コトネがユーリの方に顔を向けると、彼はコトネの方ではなく、どこか別のところに視線を向けていた。

 今度はその視線の先に顔を向けると、そこには二人の青年が椅子に座り、トランプを手に持って対峙している姿が有った。


 青年の一人は黒いスーツを着た、黒髪の青年で見覚えはない。

 しかし、もう一人―――あちこちにハネた赤髪が特徴的な青年の方は、コトネにも見覚えがあった。


「カケルさん!?」


「んぁ?」


 自身の名前を呼ばれたことで、カケルはコトネの方に顔を向け、彼女らの姿を確認すると驚いたような表情を見せた。


「よぉ、お二人さん。お前らも来てたのか」


 カケルは軽く手を挙げながら、ユーリ達に声を掛けた。


「まぁ、ね。まさか、一昨日あったばかりなのに会うとは思わなかったよ」


 ユーリはそう言いながらカケルの方に近づいていき、コトネはその後に付いていく。


「意外なのはこっちの方だっつうの。お前、普段カジノなんかにゃこねぇだろ。しかも妹まで連れて……どういう風の吹き回しだよ?」


 カケルは先ほどまでトランプをしていた相手を放って、ユーリ達の方に体を向けた。


「いや、コトネってまだ初心者だし、ここでお金を稼ごうと思ってね」


 ユーリの返答に対し、カケルは呆れたような表情を作る。


「……初心者いきなりカジノに連れてくるとか、相変わらず思考がぶっ飛んでんな―――あ! それともコトネって、賭け事とか得意なのか?」


 現実世界で賭け事が得意であったのならば、別に初心者でカジノに来てもおかしくは無い。


「い、いえ。私、ギャンブルなんて、まったく……」


 しかし、コトネは、突然話を振られたことに焦りながら、否定の言葉を口にした。

 カケルはそれを聞き、再び呆れた表情をユーリに向ける。


「おいおい……大丈夫なのか?」


「んー、多分、大丈夫」


 心配そうなカケルに対し、ユーリは特に不安がるでもなく、返答を述べた。


(その自信はどっから来るんだよ?)


「それよりも、聞きたいんだけど」


 内心でツッコむカケルに対し、今度はユーリの方から質問が上がった。


「ん、何だよ?」


「カケルって、シドと知り合いだったの?」


「シド?」


 ユーリの口から発せられた聞き覚えのない人名? に対し、カケルは疑問符を浮かべるばかりだ。

 

 カケルが「誰だ、それ?」と思っていると、突然ユーリの質問に答える第三者の声が響いた。


「いや、この男とは先ほど知り合ったばかりだ」


 声の主は、先ほどまでトランプを片手にカケルと向かい合っていた、黒いスーツ姿の青年だった。

 

 スーツ姿の外見もそうだが、その落ち着いた口調から、大人びた雰囲気が感じられる。

 先ほど、トランプの邪魔をされて、蚊帳の外に追いやられたというのに、気分を害した様子もなく、そのことがより一層、その印象を強くしていた。


 カケルは、その青年とユーリとを見比べている。


「え、あんたら知り合い?」


 その問いは、カケルだけではなく、傍でそのやりとりを見ていたコトネも内心で思った疑問だった。

 そして、その問いに対し、二人は揃って頷いた。


「ちょっと、シドに話があるんだけどいいかな?」


「あ、ああ。何なら座ったらどうだ?」


 ユーリの言葉に対し、カケルは自分の隣に置かれた椅子を引きながらそう言った。


「うん、ありがと」


 ユーリは引かれた椅子に座りながら礼を述べると、今度はコトネの方に顔を向けた。


「ちょっと待っててもらってもいいかな? 何なら先にあちこち回ってきてもいいけど」


「ううん、いいよ。ここで待ってる」


「そう? それじゃあ、はい」


 コトネが待っていることを告げると、ユーリは更に自分の隣の椅子を引いた。

 どうせ待つなら座るように、と言いたいのだろう。


「あ、ありがと」


 コトネは先ほどのユーリと同じように、礼を述べながら席に着いた。


 そして、それらのやりとりが終わったのを見計らい、青年―――シドが口を開いた。


「さて、話とはなんだ?」


「いや、一昨日はどうして来なかったのかな、と思って。

 メールは届いてたでしょ?」


「あれか。一昨日は用事が有ったのでな。

 絶対に来いとも書かれていなかったので、別にいいかと思ったんだが」


「用事?」


 用事という言葉を聞いて、ユーリは訝しげな表情になる。


 シドという青年は担当者持ち、つまりは≪エニアグラム≫の一人だ。彼らにとって、最重要となる目的はゲームクリア―――神の討伐である。

 一昨日行われた会議は、そのための数少ない情報を得るための限られた機会だ。

 で、あるにも関わらず、それを放っておくほどの用事と言うのがユーリは気になった。


「ふむ……まぁ、貴様なら大丈夫か。

 あの日クエストの後、こちらの担当から依頼が有ってな。今日もその調査でカジノに来ている」


「あ、そっか。そういえばシドって、こっちで稼いでるんだっけ?」


 ユーリ達の会話を聞いていたコトネは、どういう意味か分からずに首を傾げている。

 

「私は貴様ほど、現実で恵まれてはいないのでな」


 しかし、シドがその言葉を口にした瞬間、首を傾げていたコトネは、鋭い目つきでシドを睨みつけた。

 シドもその視線に気が付いたのだろう。彼はユーリの方からコトネの方へと視線を移す。


「……何が気に障ったのかは知らんが、そう睨まないでほしい」


 しかし、睨まれているというのに別段焦った様子もなく、シドはコトネに対してそう言った。


「……あなたは―――」


 何かをこらえるかのように呟くコトネの様子に、シドだけではなく、ユーリとカケルの二人も彼女の方へと顔を向ける。


「―――あなたは現実の兄さんの事を知っているんですか?」


「兄さん? ほぉ……なるほど」


 兄という言葉を聞いて、何か納得したような様子のシド。

 再びコトネが質問を繰り返す前に彼は、続けて答えを述べた。


「詳しくは知らないな。

 妹がいるということ。現実で金銭に困っていないことぐらいは知っているが」


「ッ! それだけであんな言葉を―――」


 激昂しコトネが怒鳴ろうとした瞬間その瞬間。


「コトネ」


 ユーリの呼びかけが彼女の声を遮った。

 

 コトネがユーリの方を見ると、彼は視線をどこへ向けるでもなく、テーブルの上を見るように顔を僅かに伏せていた。


「……取り乱してすみませんでした」


 ユーリに制止されたことで、コトネはただ謝罪を口にするしかできなかった。


「いや、私も気付かぬうちに無神経なことを言っていたのだろう。すまんな」


「いえ………」


 気まずい空気が場に流れる。

 その雰囲気を何とかしようと思ったのだろう。会話の外に居たカケルは、多少強引に話を切り出した。


「な、なぁ。さっきあんたが言ってた依頼って、どういう依頼なんだ?」


 空気を切り替えるきっかけともなる質問だ。

 当然、シドもその言葉に軽く答えるだろう、とカケルは思ったのだが、意外にもシドは答えに悩む様子を見せた。


「……まぁ、貴様も違うようだし、話してもいいか」


 シドはそう呟くと、テーブルに肘をついて手を組んだ。

 そうして居座りを直してから、わずかに間をおいて、シドは口を開く。


「私が受けた依頼は、最近発生している通り魔に関する調査だ」



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