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私の旦那様達は魔物です。  作者: 春夏秋冬巡
一章 異世界にて魔女になっちゃいました。
6/11

六話

 前以上に気合を入れて真面目に勉強していると、早いものでもうすぐ半年経つ。

 同じ時期に召喚された小百合達だが、人間と同じようでそれぞれ特色が出てきた。

 柳美は四人の中で戦闘能力が高く、周辺に生息している魔物なら一人で倒せるくらいの腕を持っている。

 桜花は四人の中で魔法センスが良く、魔法の研究を独自にして新しい魔法を作り出している。

 桃花は四人の中で回復魔法や魔法薬の腕が良く、怪我をする度にあっという間に治してくれる。

 そんな中、一人冴えないのが小百合だ。

 武術は苦手で魔法もいまいち。

 魔法薬や魔法道具の作製もパッとしなくて、家事もそれなりにこなせるものの平凡だ。

 他の三人と比べると明らかに見劣りする。

 せめて勉強くらいはと真面目にやっても、元の頭の違いからなのか桜花には及ばない。

 一生懸命になればなるほど、力の違いを見せ付けられる。

 こっそり練習して努力しても及ばないので、自分が酷く惨めで心が折れて何度も止めようと思ったが続けていた。

 いつか、報われるかもしれない。

 淡い期待を胸に小百合なりに真面目にやってきた。




「そろそろ契約魔法をするわよぉ」

 授業終わり、榎奈の一声で疲れが嘘のようにすっ飛んだ。

 逸る心を抑えながら、授業で習った内容が思い出す。

 契約魔法は魔法の一種で、主に魔物と契約して使役する魔法を指す。

 契約には種類があり、榎奈が八手としているのは主従契約だ。

 他には婚姻契約、短期契約などがある。

 婚姻契約は文字通り、結婚して一生涯寄り添うもの。

 人間と違い滅多に離婚はしないとのことで、小百合は少し興味を惹かれた。

 短期契約は期間が設けられている契約で、主従契約とは違い魔物にも色々と権利があるのが特徴。

 新人の魔物使いがやるもので、初心者の小百合達もまず短期契約する。

 気が合えばそのまま契約を続行してもいいし、気が合わなければ契約を続行しなければいい。

「下準備があるから一週間後くらいかしらん?」

「召喚する魔物は、やっぱり精霊ですか?」

 柳美は珍しくそわそわしながら尋ねた。

 勿論、気になるのは柳美だけではなく小百合達も同じだ。

皆、期待を込めた目で榎奈を見つめている。

「そうよん。精霊は火のサラマンダー、水のウンディーネ、地のノーム、風のシルフ。それぞれ自然を司り、契約して加護を得られると自然魔法が使えるようになるわぁ。属性は皆で決めてねぇ」

 ウインク一つして足早に席を外してしまう。

いつもならもっとアドバイスをくれたり、面白そうだと言って口出しするのに、珍しくさっさと出て行ってしまったので困惑してしまうが、今の関心は精霊にあるので別段気にしなかった。

自然と輪の形になり、それぞれ興奮気味に話し出す。

「ね、ね、ドキドキするね?」

 頬を染めて嬉しそうに桃花が声を上げると、柳美も首を縦に振る。

「ああ。楽しみだな」

「やっと、自然魔法が使えるようになるわ」

 ふふふふふ、と怪しげな笑みを上げるのは桜花で、小百合はちょっぴり距離を取る。

 どうせ、新しい魔法のことを考えているのだろう。

 桃花とは違った種類の笑顔は見ていて人の恐怖心を煽る。

「あの、属性はどうする?」

 悦に入っている桜花が暴走して新しい魔法をぶっ放しそうなので、小百合は怖くて早く本題を切り出す。

「私は火がいい。それか、風。桜花はどうだ?」

 攻撃力のある柳美に、火の精霊は気が合いそうだ。

「あたし? 火以外なら何でもいいわ。桃花は?」

 口ではそう言っても知的な桜花には地の精霊か水の精霊だろう。

「私は風か水かな? さっちゃんは?」

 宝具の武器が弓だから、桃花には風の方が合っているかもしれない。

「私は地かな? 一番大人しそうだし」

 攻撃力がある火は怖いし、自由気ままそうな風は振り回されそう、クールそうな水とは合わない気がする。

「そう。じゃ、柳美が火で桃花が風、小百合が地、あたしが水。いい?」

 四人の要望は分かれているので、揉めることなく決めることができた。

 恙無つつがなく終わったが、三人ともまだ興奮が冷め切れず動こうとしない。

 一人部屋に戻るのも悪いと思い、小百合も何となく留まった。

 他愛ないお喋りの中、桃花が無邪気に爆弾を投げた。

「ねえ、ねえ。そろそろ、進路って考えてるのかな?」

 小百合の頭が真っ白になる。

「そうだな、半年後には出て行かないといけないからな」

 顎に手を当て、少し考え込む柳美に桜花は力強く言う。

「あたしは、学校に通おうと思ってる」

「学校?」

 思ってもみなかったことを言われ、小百合達はぽかんとした表情で桜花を見る。

「ええ。三大大国の一つ、魔法大国のユピテルの国立ユピテル魔法学園にね」

「魔法学園?」

 鸚鵡返しに尋ねる桃花は興味を惹かれているようだ。

桜花は地面に簡単な世界地図を描き、ユピテル国に丸をつける。

「首都はここで、あたし達がいるのはこっち」

 首都には×を、神殿がある場所に○をつける。

 地図を見ると結構離れている。

「あたし、まだまだ魔法について知りたいの。それなら、専門的な所に行った方がいいでしょ?」

「桜花らしいな」

 口元を綻ばせる柳美に桜花は一笑する。

「そういう柳美はどうするのよ」

「私は旅に出ようかと思う。色々な場所を巡り、この世界を見て回りたい」

 巡る場所は決めてはいないものの、柳美も将来のことを考えていた。

「う~、私もお姉ちゃんと同じ学校に行こっかな?」

 桃花は唸りながら、恐る恐る桜花を見る。

 まだ、上手く歩けず車椅子に乗っている桃花は、姉である桜花と一緒にいたいらしい。

「別にいいんじゃない。専攻とかは考えているの?」

「やっぱり、私は回復が得意だからそっち関係かな。うん、魔法薬の授業があるといいなぁ」

「そうね。じゃ、後で榎奈に聞いてみましょ」

 桜花も桃花が一人になるのを不安に思っていたらしく嬉々として了承する。

「小百合は?」

 話を振られるが小百合は答えられない。

「小百合?」

 返事のない小百合にいぶかしみ、柳美が声をかけると慌てて顔を上げる。

「あっと、ごめんね。ちょっと、体調が悪いから先に部屋で休んでくるね」

 早口に捲くし立てると背を向ける。

「顔色悪いわ。早く休んだ方がいいわね」

「送ってこうか?」

「元気になる薬いる?」

 親切にしてくれる三人に首を振り、その場を後にする。

 年下の子達が将来のことを考えていて、どうして自分はそこまで気が回らなかったのだろう?

 唇を噛み締め、苛立ちを押さえきれずに右手の爪を左手の手首に食い込ませる。

 そもそも、地球にいたときも進路を決められずにいた。

 高校卒業後、勉強するのが嫌で専門学校に入ったが、就職先を考えずに選んだ為に卒業後に気づけばニートになっていた小百合。

 慌てて求人広告を探すも不安ばかりが先走って、就職せずにフリーターに落ち着いてしまう。

 そのままズルズルと働き、気がつけば二十四歳になっていた。

 早く就職しなきゃと思うものの、実行する気が起きなくてゲームや漫画、小説、ネットに現実逃避をする日々。

 怖い。

 最近は鳴りを潜めていた漠然とした不安がムクムクと膨れ上がってくる。

 武術も魔法も勉強も家事も他者と比べて見劣りするのに、本当に自分は精霊と契約することができるのだろうか?

 一人だけできなかったらどうしよう?

 鼓動が速くなり、血の気が引いていく。

 呼吸するのも辛くて苦しくて涙が出てきて、今までの努力は報われないかもしれないんじゃないかと心の中で誰かが囁き、否定する材料のない小百合は打ちのめされ夕食に出ることができなかった。




 結局眠れず、思考はどんどんネガティブに暗くなっていく。

 朝、いつものように畑仕事をしようと身支度を整えてから部屋を出て歩いていると、目の前が暗くなり体が傾いた。

 倒れると自覚するよりも早く、意識は沈んでいく。

「小百合!」

 桜花の声が聞こえたような気がしたが、小百合には届かず気を失った。


早く契約する精霊さんを出したいです。

でも、登場するのは八話目。

次回出てきません。

一応、最初の旦那様になります。

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