【夜の街にて】レオン
【夜の街にて】
街の灯りがひとつ、またひとつと消えていく。
昼間の喧騒が嘘のように静まり返った路地を、レオンはゆっくりと歩いていた。
マルダから借りた黒いローブが、夜風に揺れる。
月の光がレオンをいく先を照らしている。
「……このあたりだな」
昼間、魔物が現れたという通り。
焦げた石畳の匂いと、地面に残る獣の爪痕が、まだ生々しい。
レオンは膝をつき、跡を指先でなぞる。
「………まさか街に現れるとは…」
低く呟いたその時――
裏通りの方から、金属が擦れる音と、男たちの声がかすかに聞こえてきた。
「……見回りか?」
息を潜めて音のする方へと移動する。
角を曲がった先、月光の下に、紋章入りの鎧を纏った騎士たちが二人、密やかに言葉を交わしていた。
「これだけの被害で収まってよかったよな」
「あぁ…よりにもよって団長たちがいない守りが薄い時に…」
「偶然なのか…北の森の封印の話もあるしな」
「狙って魔物を呼び寄せたって?」
「…噂だよ。タイミングが良すぎるし」
「それ以上はやめとけ……聞かれたら首が飛ぶぞ」
レオンの眉が僅かに動いた。
(なるほどな…)
月が雲に隠れ、影が深くなる。
レオンは身を翻し、騎士たちの会話が途切れるのを待ってから、暗闇の奥へと消えていった。
その背中は、昼間の穏やかな“兄ちゃん”のものではなかった。
鋭く、戦場を知る者の目をしていた。




