一日の過ごし方(お仕事)マリー
【真夜中の出来事】
〜マリーの視点〜
夜は嵐のように過ぎていった。
診療時間を終え、カルテの整理や薬の準備をしていたその時――病院の扉が勢いよく開かれる。
騎士団が負傷者を抱えて飛び込んできたのだ。
「急患だ! 空いてる部屋に通してくれ!」
「!!」
「ひどい怪我……一体何が?」
「魔物が現れて暴れた! 早く部屋を準備してくれ!」
夜の担当はマリーを含む看護師が3人と、医院長が1人だけ。
わずかな人数で応じるには、運び込まれる負傷者はあまりに多すぎた。
「……こんな数を、うちだけで?」
思わず漏れた問いに、騎士団員が険しい声で答える。
「仕方ない。ここには魔物の魔素の影響を強く受けた者たちを運んでいる」
「なっ……!」
「被害が広がらぬように、協力してほしい」
その強い口調に、マリーは言葉を失った。
「神官様は……いつ来られるんですか!?」
マリーは思わず声を荒げた。
「まだ分からない。……本当なら、今すぐにでも呼びたい。だが、王都での式典に人員を割かれていて、こちらに回せる余力がないんだ」
「そんな……!」
怪我だけでも酷いのに、魔素の影響を受けたままではさらに危険だ。
マリーは唇を噛み、どうにか耐えるしかない現実に胸が締めつけられる。
そんな状況で、この病院で預かる――
マリーは焦りを胸に、患者に全力で対応した。自分ができる最大の協力を。
痛みに呻く騎士たちをなだめ、包帯を巻き、薬を届ける。
その合間にも息をつく暇はなく、病室の空気や設備の安全を何度も確かめた。
目まぐるしく時間が過ぎていく。
一体いつ浄化に来てくれるのだろう……
不安と焦りで、胸が押しつぶされそうになる。
ようやく応急の処置が一通り終わり、あとは魔素の浄化を待つだけという段階にこぎつけた。
「私、ちょっと横になります……」
「わたしも……体調が優れなくて……」
他の看護師二人は、疲労のあまり休憩室へと下がっていった。
マリーは心配しながらも、静かに背中を押す。
「あなたたちも、神官様に念のため浄化していただきましょう」
そう言い残し、マリー自身は休まずに、患者のカルテ整理や薬の準備を続けた。明日の担当へ引き継ぐために。
ーーそんな時。
何も知らないアルシアが、元気いっぱいに出勤してきたのである。
いつも通り、前髪を豪快に跳ねさせながら笑顔で挨拶する姿に、マリーの心はふっと軽くなった。
「……よし、あと少しだわ!」
気持ちを奮い立たせて仕事を続ける。
今日は余裕がなく、アルシアの仕事ぶりを見に行くことはできない。けれど、いつも丁寧に手を抜かず働いてくれる子だと信じて、マリーは引き継ぎの資料を片付けに集中した。
(……できるだけのことを…)
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その後、神官が病院に訪れた。
そこで、アルシアが行った患者への小さな行動が、静かに奇跡をもたらしていたことを知ることになる――




