一日の過ごし方 ~朝~
【いつも通りの朝】
街外れにある、小さな薬屋。
最近5歳になったアルシアは、祖母のマルダと2人で暮らしている。
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まだ薄暗い朝の5時半。
アルシアは眠そうに目をこすりながら身支度を整える。
部屋にかすかに残る薬草の香りが鼻をくすぐった。
『ふぁ〜……』
大きなあくびをして、階段をとことこ降りる。
「おや、今日は一人で起きられたのかい?」
『……ぅん。でも、まだ眠い……』
「えらいねぇ。目覚ましにミントティーをどうだい?」
差し出されたカップを両手で包み、ちびちび飲む。
『ん……ちょっとしゃっきりしたかも!』
「ふふ、それなら上出来さ」
早起きするのには理由がある。
朝6時〜10時の短い時間、街の病院に仕事に行くからだ。
「今日はパンを焼いたから持って行きな」
『わぁ〜い!ありがと!』
アルシアはパンを受け取り、腰につけた布袋にしまう。
袋の中には、乾燥ハーブと小瓶がいくつか入っている。乾燥ハーブは「疲れたら噛みなさい。元気が出るよ」と仕事をするようになってマルダに渡された。
初めてハーブを噛んだとき、気分がスーッと軽くなったのに驚いて――
『マルダ!なんか頭が良くなった気がする!』
そう言ったら、「食べすぎるとお腹を壊すからね」と笑われた。
それからアルシアは、ハーブに夢中になっている。
料理やお菓子、飲み物にハーブを入れてみたり、お気に入りの香りのハーブをオイルにして、香りを楽しむ実験を繰り返している。
最近完成したのが、香り付き傷薬。
マルダが売っている傷薬とは効能が弱いので、薬としては売れない嗜好品になる。
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『よし準備バッチリ!』
「頑張っておいで」
『うん!じゃあ行ってくるよ』
マルダに手を振って玄関を出る。
『ロロ、おはよう!』
玄関先で、番犬のロロが待ちきれない様子で尻尾をばたばた振って待っていた。
仔馬ほどの大きな体をもつロロは、アルシアを軽々と背に乗せて走ることができる。鋭い鼻と耳で危険を察知してくれるので、頼れる相棒だ。
「わんっ!」
ロロは大きな頭を低くして、アルシアが乗れるように体勢を整える。
『……ふふ、今日もかわいいね!』
ロロは「早く早く!」とでも言うように、鼻先でアルシアの肩をつついた。
『ちょっ、くすぐったいってば!わかった、わかった!今乗るから!』
アルシアが背中によじ登ると、ロロは待ってましたとばかりに勢いよく駆け出した。
『わぁっ!ちょっと!もうちょっと優しく走ってよー!』
「わふっ!」
と短く鳴くと、速度を少し緩めてくれる。
『ありがと、ロロ。……でもやっぱり速いね。風が気持ちいいや!』
大きな体にしがみつきながら、アルシアはにこにこと笑う。
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無事に病院に到着。
ロロは荒い息を吐きながら、背中から降りたアルシアの方に顔を向けた。
『ロロ、今日もありがとうね。ほんとに頼りになるなぁ』
「ふんっ!」
と胸を張るように吠え、尻尾をぶんぶん振る。
アルシアはロロの首に腕を回し、ぎゅっと抱きしめる。
ロロは満足そうに目を細め、喉を鳴らした。
『えへへ、よし!じゃあ行ってくるね!』
ごろりと寝そべるロロを後ろに残し、アルシアは病院の裏口へと駆けていった。




