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悪魔が考えた様な悪魔的な契約を悪魔みたいな奴と結んだバカがいるらしい。誰だろう?

どうぞ今回も気軽にページをめくってもらえたら嬉しいです!


エンティティーに電話をかけた、その瞬間だった。

ダンパッドの画面がバチバチとノイズを放ち、視界の中にもジリジリとした干渉が走る。

思わず目を擦り、手を退けると――目の前には、いつの間にかワインの入ったグラスを片手に、机に腰掛けた人物がいた。

漆黒のスーツ、あいも変わらず何故か見えない顔、そして口元には余裕の笑み。

「いやはや、初手から電話をかけてくるとは……さすがに予想外でしたよ」

“エンティティー”は、くつくつと喉を鳴らしながら、赤いワインを口に含んだ。

「それで――私に何の用だい?」

「ちょっとDPが足りなくてね」

「ほう、それはそれは。なるほど“融資”して欲しいのだね」

“エンティティー”は愉快そうに笑って手を叩くと机の上に一枚の紙が現れた。

それは羊皮紙にも似た手触りの、どこか現実味に欠ける質感の契約書。

「では、まず簡単に口頭で私を説得してみて下さい。その上で」

“エンティティー”の声色が変わった。まるで舞台の仮面を脱ぎ捨てたように、どこまでも冷ややかで、重い。

「融資をするかどうかを判断します」

ワインを置いた“エンティティー”は、まるでやり手のビジネスマンのような雰囲気を纏っていた。

――これは遊びではない。たった一言の気配で、そう理解させられた。

俺は佇まいを正し、ダンパッドをエンティティーに見せながら計画について簡単に説明をした。

単なるダンジョンではつまらないから一階層にダンジョン都市を作りたいこと。

ダンジョン都市には一から作った2種族をおきたいことなど簡潔に説明した。

エンティティーはその間声も発さず考えているようなそぶりを見せていた。

俺の説明が終わるとエンティティーはスーツの中から何の変哲もないペンを取り出した。

「それで、いくら欲しいんだい?」

俺はほんの少し考えて、

「100万DP貨してくれ」

そういうとエンティティーが何故か急に笑い出した。

なんで笑い出したかよく分からず黙っていたところ

「100万では簡単すぎるしリスクもない。それではつまらん。」

エンティティーがそう言い出した。

「私の融資はハイリスクだけどハイリターンなギャンブルのようなものだ。今の計画を聞いた感じ、面白そうではある。そこで」

エンティティーが契約書にペンを走らせて書き終えると俺に差し出した。

契約書を手に取るとそこには

「今回、2000万DPを融資します。その代わり、ダンジョンが開かれて1年以内にこれと同じ額のDPを返済して下さい。出来なければあなたのダンジョンは潰され、新たなダンジョンマスターが選ばれます。」

エンティティーがワインをグラスに注ぎながら説明した。

「私の見立てではあなたのダンジョン計画が全て上手くいけばギリギリ到達可能な額です。」

俺が冷や汗をかきながら契約書を読んでいるとエンティティーはグイッとグラスを煽った。

エンティティーは喉を鳴らしてワインを飲み干すと、グラスをテーブルに置いた音が不自然に響いた。まるで音そのものが空間に刻み込まれたような、不気味な静けさが訪れる。

「さて――どうしますか?」

その声は優しげな響きを含んでいたが、明らかに試すような圧が込められていた。

俺は契約書を睨みつける。

2000万DP。それは桁違いの金額だ。通常の初期ダンジョンマスターに与えられる支援などとは比べ物にならない。だがそれ以上に、1年以内に全額を返さなければ“ダンジョンが潰される”というリスクもまた、常識外れだった。

「……成功すれば、2000万DP分の価値があるって見立てなんだな?」

「ええ。もっと言えば――あなたにそれだけの“創造力と執念”があると見込んだから、私はここに現れたんですよ」

エンティティーは不気味なほど満足そうに微笑んだ。「ただし、その力が本物であるかどうか、見極めるのも私の楽しみなんです」

俺は再び契約書を見下ろす。

確かに――ダンジョン都市を初っ端に造るためには、通常のDPでは到底足りない。

それに、こんな機会はもう二度と来ないかもしれない。

俺は深く息を吸い、そして静かに吐いた。

胸の奥にある恐れを押し込め、契約書に指を添える。

「……受けよう。その契約」

エンティティーの口元がさらににやけた。

「よろしい。では、契約は成立――」

その瞬間、契約書の文字が黄金に輝き、俺のダンパッドの画面に焼き付くように転送された。そして、目の前の空間に“確認”と表示された仮想ボタンが浮かび上がる。

「最後の一押しは、いつでもあなたの意思で」

エンティティーは立ち上がり、背を向ける。

「さあ、選びなさい。これは君自身の物語だ」

俺は浮かぶボタンに手を伸ばした。

ここから先は、もう戻れない。

――だが、それでいい。

俺はダンジョンマスターだ。賭ける覚悟もない奴が、この座にいる資格はない。

「確認」ボタンを押す。

その瞬間、部屋の空気が一変し、目の前が閃光に包まれた。


次に目を開けた時、エンティティーは消えていた。

机の上には契約書の他にダンパッドが煌々と光っていた。

画面を見ると


《契約確認完了》

《エンティティーからの融資:+2000万DP》

《返済期限:730日以内》

《ダンジョン解放まで365日》

《条件:未達成時、マスター権限剥奪およびダンジョン解体》


「開発に1年、稼ぐのに1年。たったそれだけで2000万DPを返せっていうのか……これは投資という名の、死のデスマーチだな」

自嘲気味に笑いながら俺はダンパッドの画面に手をかざした。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

少しでも楽しんでもらえたなら、それが一番のご褒美です。

次の展開もいろいろ考えてるので、よかったら引き続きお付き合いください。

感想や応援の言葉、とても励みになります!

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