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霞ヶ関2

どうぞ今回も気軽にページをめくってもらえたら嬉しいです!


首相官邸地下、危機管理センター。

松殿千紗子総理は無言で椅子に腰を下ろし、大画面の地図に鋭い視線を向けた。

国内では“冷徹宰相”。

海外では“東洋のビスマルク”。

彼女の通り名は、実に的を得ていた。

根っからの実利主義でプラグマティック。

タブーなどクソ喰らえの姿勢で、必要とあれば法を一夜で通し、改善点が見つかれば翌週には改訂してみせる。

防衛や外務大臣の要職を歴任してきたときも、日本的な“協調”より“結果”を選び続けた。

外交の席では、アルメリヤ合衆国の国防長官と舌戦を繰り広げたことも一度や二度ではない。

だが、その外見はその猛々しい評判とあまりにかけ離れていた。

身長145センチ。腰まで届く黒髪に、六十歳とは思えぬほど張りのある肌。

一部界隈では“ロリ首相”などと呼ばれているが、彼女と実際会った者は口を揃える。

――なぜか、自分の方が小さく感じた、と。


彼女は米塚内閣危機管理監からのブリーフィングをじっくり聴きながら、細い万年筆で淡々とメモを取っていた。

「そういうことがありまして、ダンジョンが見つかった県では、順次自衛隊が突入するみたいです。」

「それで、一番初めに見つかった新宿御苑に特殊作戦群 (特戦群)が一番槍として出ると。」

「その通りです。」

米塚の声は冷静だったが、書類を持つ手がわずかに汗ばんでいた。

松殿総理は何かを考えているのか黙り込んだ。

米塚は、総理の表情が一向に動かないのを見て、書類を持つ手を無意識に握り直した。


松殿自身は自衛隊の派遣自体は間違えではないと考えていたが、突っついて何が起こるか想像もつかなかった。

だがもしも、中国のように未確認生物がワラワラと出てきて国民を脅かすような事となれば、自分は史上最悪の総理になるだろう。

「鬼が出るか蛇が出るか・・・賽を投げるほか、知るゆえなしか」

口を突いて出た言葉が思ったより大きく響いた。

次の瞬間、センターの空気が、息を潜めたように静まり返った。

そして――。

「1600になりましたので、特戦群一個小隊、新宿御苑内の未確認地下構造物に突入致します。」

モニター越しに特殊作戦群、園田司令官が報告した。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

少しでも楽しんでもらえたなら、それが一番のご褒美です。

次の展開もいろいろ考えてるので、よかったら引き続きお付き合いください。

感想や応援の言葉、とても励みになります!

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