霞ヶ関1
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ところ変わって—首相官邸地下、官邸危機管理センター。
米塚内閣危機管理監は仮眠室からヨロヨロと出てきて、何杯目か分からないインスタントコーヒーを口にした。
もうここまで来ると、コーヒーの味などまるでない。
ただのぬるい水を啜っている様なものだった。
昨夜、緊急で招聘された危機参集チームは中国で起きている事態は国防に関わって来るかもしれないとして情報集約センターから送られてきていた情報を精査していた。
ただ、日本でもダンジョンらしき未確認地下構造物が発見されたと言う報告が直接、緊急閣僚会議中の官房長官の耳に入った事から、内閣の要請で危機管理センターの設置が決まるという珍しいことも起きた。
それは置いといて、米塚は休む間もなく早朝から次々と入って来るダンジョン発見の情報と中国の事態悪化の情報をテキパキと秘書官などともに精査しては各省庁と官邸の方に連絡を回していた。
ようやく三十分ほどの仮眠をとった米塚が、コーヒーを片手に定席へ戻ったところに、杉谷秘書官が近づいてきた。
「あと10分で、首相と数名の閣僚が到着予定です。」
米塚は腕時計をチラリと見た。
時刻は午後3時を回っている。
「新宿御苑内のダンジョンに特殊作戦群が突入するのが16時だったよな。」
「はい、それを映像視察される様です。」
米塚は眼鏡を外し、目の間を軽く摘みながら短く息を吐いた。
その横で、杉谷秘書官が机の上に所狭しと並ぶ鈍器のような分厚いフォルダーの中から付箋のついた紙を抜き出し米塚の前に置いた。
「他県の自衛隊も、追って突入準備に入るとのことです。」
米塚は眼鏡を掛け直すと無言でその紙を手に取った。
たった5分前――熊本に続き、島根でもダンジョンらしき物が発見されたと言う内容だった。
パッと顔を上げるとセンターの大画面に映る日本地図に、新たなダンジョンを示す赤い点が追加されていた。
「これで32個目か・・・。」
「はい。北海道などの広域県や島嶼部が多い県では発見が遅れているみたいです。」
それを聞いて米塚は自身のイラつきを隠すためにグイッとマグカップをあおった。
ぬるい苦味が喉を通り過ぎる。
――遅い
早く全部見つけないと上から圧力をかけられるは、野党、マスメディア、SNSから総叩きに会う。
ただ、警察などはすでに動員可能な範囲で探索を進めている。
残るは、住民からの通報と偶然の発見に頼るしかない。
だが、米塚の頭の片隅では、もっと嫌な予感が湧いてきた。
――本当に各県一つずつなのだろうか、と。
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