出動2
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竹本のその穴の第一印象は—なんか地下道の入り口っぽいなぁ、だ。
跡地特有の、少し伸びた雑草が風に揺れている。
その中に、不自然な円形の枯れ草地帯があった。
まるで焼け焦げたように黒ずみ、そしてその中心に――穴が口を開けていた。
雨に濡れた土の臭いと、どこか鉄のような匂いが混じって鼻を刺した。
見える範囲では開口部から下に階段が続いている。
階段の材質は黒い大理石のような艶を持ち、壁に等間隔で並ぶランプらしき物が淡いオレンジ色の光を放っていた。
その光は階段の面に反射して、人工的な施設のような印象を与えている。
これだけ聞けば地下道っぽいのだが、どうしても“違う”と思わせる要素がある。
最大の違和感は、雨だ。大雨にも関わらず、穴の中に雨が流れ込んでいる様子がない。
そこにまるで透明な膜が張られているかのように、階段の床は一滴も濡れていなかった。
その強烈な不自然さが竹本を困惑させ、警戒心を引き上げさせた。
二つ目に奥行きだ。開口部から十数段は見える。しかし、その先は真っ暗に塗り潰されたように途切れている。
いくら、大雨とは言え昼間な上、壁にも発光源があるのにそれ以上見えなくなっている。
(……視界の描写距離が途切れている?)
竹本は思わず、ゲームで見たグラフィックバグのような錯覚を覚えて頭を振った。
あるいは――中に何か、光を遮断するガスでも充満しているのかもしれない。
そう思って心の中にメモした。
最後の違和感は、・・・
「何も聞こえないですね」
竹本の横で穴を覗き込む牧副隊長はそう言いながら小石を投げ入れた。
石があのような硬そうな階段に当たりながら、鈍い雨音の他に何も聞こえない。
甲高いカツンみたいな音がするはずなのに、全くの静寂。
竹本は背中がゾワっとするのを感じながら隊員の一人が走ってくるのを見て穴から目を外した。
「隊長。小隊の現地到着および状況を報告しました」
「ご苦労。本管(本部管理中隊)に8特防(第8特殊武器防護隊)の派遣をお願いしてくれ。」
「8特防ですか?警報器は鳴っていませんが?」
「穴の中が分からん。……だが、間違いなく“何か”がおかしい。念のため、用心しておくに越したことはない。」
穴を親指で指差しながらそう答えた。
隊員が敬礼して報告しに駆けて行く中、竹本は本隊が到着するまで現場を整える作業に取り掛かった。
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