瞳
「私、カエル探してくるね。」
「あ、ええ。あまり遠くへは行かないでね。」
「はぁい。」
結局、逃げた。こんな空気は吸いたくなかった。
オレンジ色の空を背景に、カエル達が鳴いている。
1匹、2匹、3匹、よん…
びっくりした。
いきなり視界の中に少年がとびこんできた。
「だ、誰や。見ない顔やな。」
十色村の子だろうか。
やけに田舎くさい格好をしている。
「な、なに。あんたこそ誰?」
ついさっき引っ越して来たばかりですけど?という自分でも性格悪そうだと思う目で睨みつけた。
しろいTシャツに紺色の短パン。
サラッとした黒髪が夕日に照らされて光っている。
少しつり目なその透きとおった瞳は私をじっと見ていた。
「あんた、ここの住人?」
さすがに旅行などで、こんな格好はすまいと聞いてみた。
「あぁ、ここで産まれてここで育った。」
やっぱり、私の服とはどこか違う雰囲気を感じる。
そういえば、小5のちょうど今と同じ時期に都会の小学校に少年が転校してきたのを覚えている。
その少年も透きとおった瞳をしていて、かっこよかった。文武両道で女子からの人気も高く、すぐにたくさんの友達をつくっていた。
名前は…「と」からはじまっていた気がする。
その少年と同じ、とは言わないが彼も若干似たような
雰囲気を放っている気がする。
半年でまた転校してしまったが…。