祖父母の家
小4からの親友・春とも一緒に居られなくなったし、正直、不安でしかなかった。私は新しい友達をつくれるのかとか、いじめられたりしないか、とか本当に頭の中がQでいっぱいだった。
Aなんてみつからない。
「ブゥン…」
エンジンが切れる音がした。着いた。
久々のじぃじ達の家は私の不安をかき消した。
さっきまでの緊張はもう行方不明になっていた。
「ピンポーン」
チャイムの音に少し遅れて中から足音がきこえた。
「あら、意外と早かったですねぇ〜。どうぞ、あがってください。」
「おじゃまします。」
敬語の会話を聞きながら私はグランマーを追って、家の中へ入った。
どこか懐かしい匂いが鼻をつつみこむ。
見たことのある景色が目にとびこんできた。
じぃじ達の家に来た時の定位置へ座る。
グランマーは用意してもらったいすに遠慮気味に座った。少し話していると、のれんをくぐってじぃじが氷の入ったお茶を運んできた。
「のぶさん、のぶさん。氷はまだ早いんじゃない?」
「あー…。ここは暑いところやし、冷たい方がええ かいなとおもってなぁ…。すまんのぅ。」
「いいえ。お気遣いなく。」
私はお茶を一口飲んだ。冷たい。
でも、このムシムシとした環境にはちょうどいい気がした。さすが、じぃじだ。
「りっちゃん、(私は花野立夏で"りっちゃん"と呼ばれている)大変だったわね。急に両親と離れてしまって…。」
「あたしの娘も仕事を優先するなんて…。周りのことも少しは考えてくれたらいいのに…。」
「い、いいんだよ。ママも色々考えて今の決断に至ったってことでしょ?あたしもこういうところで住んでみたかったし。」
カエルの声だけになってしまった。
みんな黙り込んでいる。
何とかしなければ、と言葉を探す。
どうしよう。どうしよう。