蝙蝠の里、羽衣の夢
「ホンマごめん、ホンマごめんな」
そう言いながら名倉はファイブボンバーの爆弾に手をかけた。
「潤ちゃん!やめてよ潤ちゃん!!!」ホリケンが叫ぶ。
「スタジオのみんなを守るにはこうするしかないんや」
爆弾はのこり3秒の大きさのまま、ネプリーグのスタジオにいる全員を嗤うかのようにアラート音を響かせている。
「どうせなら俺1人でコイツを月まで飛ばしてしまったほうがええ……っ」その時、2本の腕で支えた爆弾にもう一つの手が触れる。
「曲がった事が大嫌いなのは、知ってるだろ?」原田泰造がはち切れんばかりの爆弾を支える。
「お前も、わかってるだろ?」
原田は堀内の目を深く見つめる。
堀内の目は、揺れる黒い瞳から一筋の稲妻が走った後、見つめていると世界が止まったのではないかと思うほど不動の眼へと切り替わる。
あのままファイブボンバーが爆発していたら日本は愚か世界中に大きな恐怖が訪れただろう。東アジア諸国は崩壊、大きな地殻変動により地球の地軸は8°傾くはずだった。
それをあの時防げたのは3人しかいなかった。名倉だけでは大気圏までの推進力はなく、堀内、原田がいてこそ成し遂げられたことだったのだ。
世界は彼らを称えて夏に見える大きな星に名前を付けた。
2055年、今日も空は青く輝いている。