8話 昔の記憶
1月11日の朝、起きた時から夢のことばかり考えていた。
変な夢だった。俺が中1に戻って誰かと話している夢だった。
中学の頃、誰とも話さずに過ごしてきた俺は、親や先生に心配されるほどのコミュ障だった。
「このまま社会に出たら、どうなってしまうのか」と毎晩俺が寝ていた後、話していたと聞いたことがある。
コミュ障な俺は、ネットが大好きだった。
自分の話を聞いてくれる人がいた、自分の過去や今を忘れて誰かと話ができる。
そんなネットが大好きだった。
ある日のこと、俺は帰宅部だったので4時半には家に着いて、いつものようにパソコンをつけて、掲示板サイトを開いた。
そこで、色々な人が投稿しているところに、どんどん書き込んでいっていた。
そんな中に、ある一つの気になる話題を見つけた。
『高校三年間、誰とも話さなかった俺』面白そうだったので、開いてみると、そこにはその人の人生が語られてあった。
その人は、大学一回生。そこそこ頭も良かったことから、かなり有名な大学に行ったと書かれてある。
ゲーオタで、pcゲームに一時期ハマりすぎて、人生が狂ったらしい。
オンラインゲームを一日5時間やっていたらしく、ネットでの評価は高かったらしいが、現実世界ではどんどん廃人と化した。
『ネットにハマりすぎて、抜け出すことができなかった』そう書いてあった。
「俺と同じだ」
感情が口に出た。
俺の指はすぐさまキーボードに移った。
『どうすれば抜け出せる?』
と投稿主に質問してみた。
すると
「抜け出すことは不可能。誰かに救ってもらうしかない」
と返ってきた。
この時俺は絶望した、後戻りできない現実に。
俺はこの投稿者主と同じ人生を歩むのだろうか、、、。と思い高校デビューを果たすべく、高校は地元から離れた学校にした。
そして、高校1年の現在。
中3の時にハマったムニムニが今では全国2位に、しかし高校デビューは果たせなかった。
〜〜〜〜〜〜〜
俺は朝、過去に浸りながら、色々な事を考えていた。
冬野さんのことをどうするのか、とこをどうするのか、そんなことを考えていたら、午前中は全く新曲を詰める気にはならなかった。
そんなことを考えている間にも順位は変わっていっている。
冬野さんがAPしてから、他の上位勢のやる気に火がついたのか、ミス1まで詰めている人が多くなってきた。
そんな上位勢を片目に俺は最近、戦線離脱し始めている感じがした。
心のどこかでゲームをやりたくない気持ちがあるのか、最近は全くと言っていいほどやっていない気がする。
前までは、リアルでの用事が少なかったということもあり、かなりやりこんでいた。
しかし最近は、嬉しいことにリアルでの用事が増えて、ゲームどころでは無くなってきた。
ネットでは今も、攻略方法などの情報が出回っている。
俺の部屋の隣で聞こえる音は、タブレットのタップ音か、キーボードの操作音しか聞こえてきたことがない。
まして、シャーペンの音が聞こえてきたら奇跡どころの話ではなくなる。
「にいにい、お菓子食べますか?」
ノックもせずに入ってきたのは、いつも通りのとこだった。
朝からお菓子を食べるとこは最近、肥満気味になってきている気がした。
「いや、俺はいいけどさ、とこお前太った?」
俺がそう聞くと、とこがこっちを睨みつけてきた。
「だからにいにいはお友達ができないのですよ。女性に対してデリカシーのかけらもない発言は控えといた方が身のためだと思いますよ」
と、引き気味かつ冷静に答えてきた。
その冷静さに、俺も少しビビった。
流石にもう少し大きくキレてくるだろうと思っていたが、精神面で攻撃してくるタイプだった。
ちなみにみかんにこんなこと言ったら、物理的な制裁を加えられるとこになる。
それだけはマジ勘弁。
「うぅ、、、。何も言い返せない、、、」
友達がいないという言葉に少し俺に刺さり、俺は言い返せなくなった。
いや、ちょっとまでよ、、、?この前家に行った冬野さんの存在を完全に忘れていた。
「いや、俺には友達はいるぞ。miyukiさんという強力な友達が」
その俺の発言に、何も言えなくなったとこは部屋の扉を勢いよく閉めて、自分の部屋へと逃げていった。
そして、10秒後にはタブレットのタップ音が聞こえ始める。
俺のタブレットに通知が入った。
『新曲、にいにいよりも早くAPしてやるです』
この発言には少し驚いたが、とこは全国50位。2位の俺なんかに勝てるわけがない。
そんな余裕をかましながら、俺は朝ごはんのエナドリを流し込む。
この時、俺は知らなかった。とこの底力というやつを。
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