4話 みかん
俺は生まれつきの陰キャだ、だから人に話しかけることも出来ないし、まして遊びに誘うこともなかった。
最近、俺には友人と呼べる人ができた。
しかも相手は、クラスの陽キャ女子。
『今日、家来ない?』
ある日突然、こんなDMが来た。
このDMには俺も驚きが隠せず、衝動的にタブレットを壁に投げつけてしまった。
行きたいところだが、俺は今日予定がある。
年末年始だということで、従兄弟が家に遊びにくることになっている。
名前は『遠出 みかん』大学1年、ちなみに俺はこいつが嫌いだ。
絡み方がうざいし、何よりオタクを完全否定するタイプだ。
しかも、今日は泊まりらしい。
あと、今日はとこと初めて会う日だから、余計にめんどくさいことになりそう。
俺が音ゲーしてるっていうのに、隣から話しかけてくるし、イヤホンをしてても聞こえてくるうるさい声。
「今日、みかんがくるんだろ?」
「あ〜!そうそう、お母さん忘れてたわ〜」
俺がお母さんにそう言うと、最近もの忘れがひどいお母さんは急いで部屋の片付けに入る。
みかんが来るまでの猶予は後2時間。その間に冬野さんへ連絡をしておく。
『すいません、今日家に従兄弟が来るので行けません、、、。1月5日とか空いてますか?』
俺がそうメッセージをいれると、5秒後には返信が返ってきた。
『1月5日は空いてるよ!その日にしよっか!』
『はい、よろしくお願いします』
タブレットの電源を切り、片付ける。
アニメ系のグッズを一時避難させておく、あいつが来たら何されるか分からない。
「にいにい、今日来る人って、どんな人なんですか?」
「とにかくうるさい、以上」
俺もとこも騒がしいのは嫌いなので、とこも俺と同様の表情を浮かべる。
俺が『部屋片付けといた方がいいぞ』と忠告すると、とこは自分の部屋に入り、部屋を片付け始めた。多分、身の危険を感じたのだろう。
「今日はみかんちゃんが来るねんなぁ〜、ホンマ楽しみやわ!」
親父がリビングで何かを言っているのが聞こえた。
みかんと親父は昔から気が合い、すごく仲がいい。よく、競馬とか行っていた。
「あんまりハメを外しすぎないでくださいよ」
お母さんは皿を洗いながら、親父に忠告をする。
「おう!去年みたいなことにはせいへんで!」
「とか言って、去年はやりすぎてましたよね?今度やったら、来月のお小遣い無しですよ?」
親父は急に小さな声で「はい、、、」と言っていた。
あれ?なんかこの光景去年も見たような、、、?
とデジャブのような感じもしたが、それは放っておいた。
〜〜〜〜〜〜〜
1時間が過ぎたころには、家は準備が出来上がっていた。
散らばっていたものがすっかり綺麗に収納され、床には転がっているものは一つも無い。
物が整理されているせいか、家が広く思えた。
いつもは閉めているカーテンを全開にしていた。
親父は1時間経っても興奮は冷めていなかった。
玄関の前で、今か今かと待っている。
問題のとこは、、、。
「にいにい!開けないでください!私はもう無理です!嫌な予感しかしません!」
過去一の大声で全力否定、押し入れに引きこもる。
ピロン♪
スマホの着信音がなりスマホを開いた。
『今から押し入れに持ってくる物。』
何だこれ。
そこには、モバイルバッテリー、水500ml8本、エナドリ5本、充電ケーブルなどの生活必需品が書かれていた。
それに対し、俺が否定のメールを送ると、鬼のようなメールの嵐が始まった。
初めは泣きついてくるような文が、途中から内容がガラッと変わり、攻撃的な文へと変わっていった。
俺はこのメールに呆れを感じ、とこのところへ指定の物を運ぶ。
ちなみに後5分ほどで着くはずだが、、、。
ピーンポーン♪
家のチャイムが鳴り響いだと同時に、勢いよく家のドアが開く音がした。
廊下を勢いよく走り抜け、リビングへの扉を開く。
チャイムからリビングまでくる時間、約0.5秒と人間ではないスピードでやってきたのは、みかんだ。俺はこいつが嫌いだ。もう一度言う、俺はこいつが嫌いだ!
「久しぶり〜!!!」
大量の荷物と、胸が大きく揺れる。
そして、みかんは俺にジャンピングハグ。俺は床に倒れる。
さっと起き上がり、みかんが俺の顔をじっとみる。
「なんか、しゅんくんがリクにいに似てきたね〜!」
リクにいとは俺の親父のことである。
ちなみに、お母さんはナナミちゃんと呼ばれている。
「俺が、そうか?」
と言いつつ起き上がると、もう一度ハグをしてきた。
大きな胸がむにゅっと俺の体に押し付けられる。
しかも、みかんはいつも下着を着けない癖があるので、余計に、、、。
「あれ?とこちゃんは?」
みかんはその場に荷物を置き、とこの隠れている押し入れに直行する。
あ、そこは、、、。と俺は心の中で呟き、とこは一瞬にして見つかった。
「あれ?とこちゃんなんでこんなところに居るの?」
「ちょっとあなたは生理的に受け付けないんです!!!!」
「なんでぇぇ!!!」
みかんは涙目になり、俺に泣きついてくる。
とこは押し入れの中で、震えている。
「ちょ、わかったからみかん、離れて。辞めて、ちょ、鼻水が服に、、、」
早速俺の服が鼻水まみれになったところで、お母さんがその場に割って入る。
「はいはい、みんな落ち着いて!しゅんちゃんは着替えてちょうだい」
俺は着替えに行き、みかんは半泣きで食卓テーブルの席へ、とこもいやいや食卓テーブルの席に座る。
とこは、斜め右下を見続け黙っている。
「静かにしてください、、、」
とこが最初にそう言った。
それに対してみかんはただただ「はい、、、」と言うしか無く、その言葉を聞いて、とこは冷静を取り戻した。
こんなやつと、4日も同じ屋根の下で生活しなければならないのか、、、と心底不安になったが、さっきのお母さんを見ている感じ、なんとかやっていけそうな感じもした。
というか、みかんはこれでもマシになった方だ。
去年なんて、開幕早々、家のドアノブをぶち壊し、大変なことになった。
そんな彼女だが、実は優しい面も存在する。
俺より、3つ年上ということもあり、騒がしいところを除けば、世話を焼いてくれるお姉さんだったりする。騒がしいところを【の・ぞ・け・ば】だが。
しかし、騒がしいというデメリットが目立ち過ぎて、そのお姉さんな部分が押しつぶされている感じがしている。
「とりあえず!今日は焼肉でも食いに行くか!」
親父が仕切り直したおかげで、少しみかんにも元気が戻った。
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