12話 転校生
作戦第一【小崎の気を楓に向ける】
今日は憂鬱な月曜日、俺は電車に乗って登校する。
電車が同じだということもあり、毎朝冬野さんと登校している。
今日も春らしい風が吹き、学校の最寄駅の近くも、桜が満開だった。
俺と冬野さんは桜の並木道を通り抜け、少し遠回りして学校へ向かう。
カップルを見て少し気まずくなる時はあるが、大体は楽しく登校している。
クラスメイトからはたまに、カップルかよ!とバカにされる時があるが、それらは全て冬野さんが跳ね除けてくれる。
こういう時に、自分の不甲斐なさが感じ取られる時がある。
俺って、、、と少し凹むとすぐに冬野さんが慰めてくれる。やっぱり冬野さんは優しい!!
学校の前に聳え立つ大きな桜の気から桜が舞い散り、改めて春が来たんだな、と実感する。
今まで引きこもりだった俺は季節など関係が無かった。
季節は大体ソシャゲのガチャで確認していたぐらいだった。
そんな俺の横には、同じゲーマーなのにも関わらず、こんなにも華やかで可愛い女性がいる。
ネットでは同じ立場にいる。しかし、現実では正反対の生活を送っていた。
しかも近くで。
俺が毎日尊敬してやまなかった人、そしてその能力が羨ましくてたまらなかった人が隣にいる。
去年の11月までは、こんな生活は考えられなかった。
どうせこのまま腐っていくんだ、、、と思っていた。
大学も行かず、友達も出来ず、人生の大半を送るとされている社会人へとなって、社会の闇を見て再び絶望するのだと、ずっとずっと自分の部屋の中で考えていた。
でも、現実で俺が話している事を近くで笑ってくれる人がいる。
「よおぉぉぉぉぉッス!!先輩!!!」
「どへぇぇッ!!!」
後ろから思いっきりタックルしてきたのは、俺の後輩兼友達の優斗くん。
今日はいつもと違ってジャージ姿で登校していた。
スポーツをやっていそうな体つきをしているせいか、朝練へ向かっている生徒のように見え、登校時間を間違えたのではないかと少々焦りそうになった。
「朝からなに?」
「楓の事、どう思うッスか?」
突然の質問に状況整理が追いつかず、フリーズする。
質問の意図が理解できなかった。
「なにが言いたいんだ?」
俺は質問の意図を聞く。
すると、これは言ってはいけなかった言葉のようで、いやぁあのぉその、、、などのあやふやな言葉だけを残してどこかへ走り去っていってしまった。
冬野さんは隣でポカーンとした表情を浮かべていた。
それもそのはず、この会話は大体20秒程度のものだったからだ。
いつも穏やかに暮らしている冬野さんからしたら、光速のような会話だったようだった。
そんな話は置いといて、などと俺は仕切り直し、今のは無かったことにする。
その後は教室までいつも通りの日常会話をしながら向かった。
教室に着くと、いつもとは違う空気が漂っていた。
よく見ると、俺の机の周りに集まっている感じがした。
何かを感じとった俺は今日にバックで、一年教室へと向かう。
すると、いつも1番初めに来ているはずの、楓が居ないが、机にスクールバッグだけがかけられていた。
俺の嫌な予感とやらが的中した。
気を重くしながら自分の教室へと向かう。
状況は変わっていなかった。少し変わったとすると、その場に冬野さんが入り、冬野さんがその場を仕切っている感じがした。
近づきながら、人の隙間を通りぬけ、俺は自分の席へと向かう。
案の定、楓がそこに座っていた。
満面の笑みで座っていた。
なぜだろう、絶対に関わりたくない。と心の底から思ったが、ここまで来てしまった以上後には引けない。
「え?なにしてんの?」
俺が聞くと、またもや意味不明な回答が返ってきた。
「私、急に小崎くんの椅子に座りたかったからです」
すると、急に立ち上がり、楓ちゃんは帰って行ってしまった。
本当に意味がわからない。
「小崎!どういう事だよ!あの可愛い子知り合いなのか!?」
クラスメイトに体を揺らされながらそう言われた。
「うん、、、」
「じゃあ紹介してくれよ!!な、俺飯奢るから!!」
すると、周りの男子たちがそれに便乗して「俺にも紹介してくれ!」などと俺に言ってくる。
そこに冬野さんが割って入って、俺の周りにいた集団を解散させた。
「あの子、誰?」
少し尖ったようなイントネーションだった。
いつもの冬野さんと違う声がした。声が低くて、ずっしりくる声だった。
「昔の友達、、、て言えば伝わりますかね、、、?」
俺が、慎重に言葉を発現する。
それに対して、またもや冬野さんが俺に問いかけてくる。
「彼女、、、って感じの関係じゃないよね?」
「はい、、、え?今なんて、、、」
俺が冬野さんに聞き返すと「あーー」と言って誤魔化していた。
そこまで深く掘り下げないでおこうと俺なりの適切な判断をとり、一限目の授業を迎えた。
俺と冬野さんは席が離れている為、冬野さんが俺と話すには歩いて来るしかない。
だから、今まで本当に無縁の存在だった。
「はい、みんな座れー」
先生が教室に入ってきた。
教卓にメモを開き、黒板に文字を書き出し始める。
そこに書かれたのは【坂上 大地】という文字。
「みんな、転校生を紹介する」
先生がそういうと、クラスメイトが近くのやつと話し始める。
特に女子がうるさかった。
「入っていいぞ〜」
ガラガラガラ。
古い扉が開いた音が静かな教室に響き渡った。
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
不定期で2話、3話投稿もしていけたらなと考えています。
評価ポイント、ブックマーク、してくれると執筆のモチベーションになるので嬉しいです!!!




