僕がサイコロを振ったせいで、世界が破滅する
僕は幼い頃に神様の声を聞いた。
神曰く。
「貴方は決してサイコロを振ってはいけない。そうしないと世界が滅んでしまいます」
僕はその言葉を胸に、正月にも双六はやらなかったし、サイコロキャラメルも買う事はしなかった。
このようにサイコロを避けながらも順調に大人になっていっていたのだ。
所が運命の歯車はいとも簡単に狂ってしまったのだった。
複合ショッピングモールで買い物をした時に福引券なる物を貰った。福引と言えばガラガラ回すヤツとの先入観があったが、実際に会場に行ってみるとモニターとボタンが並んでいるだけだった。デジタル化の波がこんな所まで押し寄せていたのだなと思いながら列に並んでいた。
僕の番が来て、抽選ボタンを押した瞬間に後悔する事になった。
「あっ」
モニターに映し出された物は、CGで作られた三つの立方体が回転している姿だった。もしかしなくても、これも分類上はサイコロになる筈だ。
「あっ」
係員が声を上げた。モニターには不規則に転がって止まった赤丸三つが映し出されていた。
『ファンファンファファーン』
「おめでとうございます。特賞の二泊三日韓国旅行です!」
ファンファーレと係員の声が響いた。
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行の飛行機がハイジャックされた。
「この飛行機は香港国際空港に向かって貰う。あと、ケンイチ・オダは連れて行く。そうすれば他の者には危害を加えない」
何故か犯人の要求に僕こと小田憲一が含まれていた。
しかし、空港で待ち構えていた特殊部隊によって犯人たちは捕まったのだった。
▽▼▽
「彼の国はケンイチ・オダの引き渡しを要求しています」
「やむを得まい。あの機密があちら側に漏れるのは痛いが、核戦争が起こるよりはマシだろう」
▽▼▽
僕は椅子に拘束されていた。
「なあ、いい加減素直に教えてくれよ。そろそろ私の我慢も限界になるぞ」
『ダン』
目の前の机にナイフが付き立てられた。
「主任! 大変です」
「どうした」
慌てて部屋に入って来た男と主任と呼ばれた男がひそひそと話している。
「……違い……小さい……織るに田……憲法……健康に一……一緒の……搭乗……」
「謀ったな! すぐに総書記にお伝えしろ」
非常にピリ付いた空気になりました。
漏れ聞こえた事で事情を理解しました。漢字違いの同姓同名と間違えられた模様です。更に『報復』だとか『核』だとかが聞こえて来ました。
どうやら世界の命運は尽きてしまった様です。