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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

狂っていた

「痛みって愛だと思いませんか?」


凪の前で殺人鬼はそう語った。今外の世界を騒がせている小さな小さな殺人鬼。ニュースや新聞も彼の話で持ちきりだ。なんせ学校内で二名の生徒を殺害し、そのまま帰宅途中の公園で一名を殺害している。公園で現行犯逮捕されたが、その衝撃は平和ボケしている世間を震撼させた。

その殺人鬼が今目の前にいる。その顔はヘラヘラ笑っている訳でも、怒っている訳でもなく、ただ真剣な顔で透明な壁越しに凪に疑問を尋ねている。真剣な顔で聞いているのだ。学校では聞けなかった事を冷たい檻の中で。


「ど、どうしてそう思うの?」


絞り出すように問いかけると、まだ少年の面影が残っている顔を少しだけゆがませ、すぐに何事もなかったかのように真顔に戻った。そんな表情の変化を見て、今更ながらこの子が高校一年生だということを思い出した。


「先生に恋人はいますか?」

「...いないわよ」

「じゃあ兄弟とか姉妹とか、両親はいますよね?」

「まぁ、そりゃ」


凪の両親は元気に今も過ごしている。兄も最近会っていないだけで多分元気だろう。別段普通の両親の元に生まれて、何不自由なくここまで育てて貰った。そしてそれは今目の前にいる殺人鬼。トウヤもそうであったはずだ。少なくとも家族などから暴力は振るわれていなかったはず...だと思うのだが。


「その人達のこと、好きですか?」

「まぁ、家族のことは好きではいるけど。それがどうして痛みと愛の話になるの」


冷静に、なるべく感情を顔に出さないように話しかける。前に来た生徒指導の先生は怒鳴って早々に面会が終わったと聞いた。だから慎重に。相手が対話を続けてくれるように笑顔で話しかけ続ける。この子から発言が引き出せるように。


(学校に全くの責任が無かったのだと!!)

その言葉さえ引き出せたら良いのだ。


「トウヤ君は、殺した三人の事を愛してたの?」


するとトウヤ君は貼り付けたような笑い顔をした。


「愛してたから殺したんじゃありません」


そう言うとトウヤは歌うように、上機嫌に語り出した。


「そもそも愛って何だと思います?好意の延長なのでしょうか。よく無償の愛とは言うけどそれじゃあ相手に対価を求めたら愛とは呼べないのか。性欲が絡んだものを清い愛と大人達は呼ばないくせに世間を見ればセックスばっかりじゃないか。誰も彼も綺麗なものを愛と呼ぶけど、それじゃ愛に汚いものなんて存在しないのか。違う。そんなはずないだろ。愛とはゆがんでいるものだ。愛とは気持ち悪く、傲慢で、どうしようもないものでも良いはずだろ。」


彼は何だ。今目の前で、肩で息をしながら話している彼は、まるで世界に認められていないだけの真実を見付けてしまったかのように話し続けた。その瞳には私なんて映っておらず、自分の意見を認めない世界に向けて吐き捨てているようにも見えた。まるで無垢な少年の顔から赤黒い泥が次々と溢れるように話し続ける。


「だから僕は愛した。友人を全身で受け入れるようにナイフを突き立てた。恋人を抱きしめるように首を絞めた。家族と団欒する時のように一発ずつ思いを込めて拳を振り下ろした。」


学校のせいなんかじゃない。家族のせいでも友人のせいでもない。

これは生まれながらのモンスターだ。


「あ、別に捕まったことに不満はないですよ。だってしょうがないですもんね。僕の愛は認められてないようなんで。でも大丈夫です。もう皆ここにいますから。」


この子はどこか壊れている。

私は背中がいつの間にかべったりと湿ってしまっていることに気がついた。今すぐここから逃げ出したい。自分の中で何かが叫んでいるようだった。


「愛してたから殺したのかと聞きましたよね。それはNOです。なんせ殺すことが、痛みを与えることが僕にとっての最大の、最高の愛情表現なので。愛したかったから殺したんです。殺したことで愛を確かめられるんです。僕にとっては。だから殺しちゃいました。一方的に無償の愛をもって。ねぇ、先生。先生は痛みって愛だと思いませんか?」


私はこの場から去るために決断した。最後に教師として聞くべきことを聞くために身体中の水分を唇に集める。そして大きく一息つくと、口を静かに開いた。


「それで学校の責任はないのよね?」


殺人鬼は何も話す事無く自分の居るべき檻に帰って行った。


どうも。在間トウゲンです。

ここまで3晩連続で短編を公開しているのでぜひまだ見ていない人は他の作品を見ていってください。

一週間ほど短編を公開したら、長編もぼちぼち書いていくつもりなのでよかったら覗いてみてください。

それでは、また。

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