皇帝の仮面
ゲームの方のアルベール視点です。
消えた初恋の少女を今日も俺は探している。
今から8年ほど前。俺が6歳の頃。
親に連れられ、リステアーラ皇国の第二皇子として、髪色と目の色を変えて、アーヴェルの夜会に参加したことがある。
6歳だった俺には周りの大人の事もその夜会の意味もよくわからなかった。
だから、抜け出した。
会場に警備が割かれたためか、あまり人はおらず抜け出すのは容易かった覚えがある。
そして、走って走って。ついたのは庭園。
月明かりに照らされた噴水の縁に少女が腰掛けていた。その光景があまりに神秘的で、思わず固まっていると。
その少女に手招きされた。
招かれるがまま隣に座ると、彼女はいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
『ねぇ君、どうしたの? 』
黙ったままの俺に、彼女は首を傾げ思い付いたかのように口を開く。
『私の名前はローゼリリー。ロゼかー、リリーかー、ローゼ! 好きな呼び方を選んでよ。君のお名前は?』
教えてもらうと断る事もできない。
『アルベール……アルくん?』
彼女……リリーは俺の名前を聞くと嬉しそうに笑った。
そのあと、リリーに手を引かれ会場の親の元に向かった。
庭園に来るまでに通った筈の道は、リリーと歩くとすごく綺麗に見えた。
『……もう会えないか? ふふ、そうだなぁ……君が立派な皇帝になったときに、君がまだ私のことを覚えてたら。会いに行くよ、約束ね。アルくん』
そして4年後。彼女は亡くなった。また会うと、そう約束したのに。
ふと昔のことを思い出し、俺は溜め息を漏らした。
鏡を見ると、呪われているなどと言われていた、白い髪が見えて、青と赤の目と目があった。
「リリーに本当の姿、見せられないままだったな」
ぽつりと独り言を呟く。
「おーい、アルベール!」
ふと、彼女の兄の、彼女に似ても似つかない魔法使いの声が聞こえた。
そして俺は今日も、笑顔の優しい皇帝の仮面を被り、前に向かって歩き始めた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブクマ、評価よろしくお願いします。
アルベールって実は俺様キャラなんですが……。
あんまりそう言う描写出来なさそうですね……。
(ローゼリリーには優しい上、猫被るの上手なので)
残念……。