カインとローゼリリー
いっけなーい! 殺意、殺意☆
やあ、久しぶり転生者☆ローゼリリーだよぉっ!
…………よし、落ち着いた。なんか、疲れてんのかな、私。
大丈夫、私は正気だ。
ただ殺意が湧いただけである。
「カイン? 私、シャーリアに帰りたっ、」
「駄目」
即答。帰りたい。とてつもなく帰りたい。
今すぐ帰って、ナギララを抱きしめたい。
「ねぇ、カインってば〜! そろそろ離してよ〜」
「やだ。ロゼったら、すぐどっか行っちゃうんだもん」
猫のように頰を私の首筋にぐりぐりと押し付けながら、うーうー文句を言う、カインに私は思わず口元を押さえる。
……勇者、可愛い……なんかいい匂いもする。
いや、可愛い言ってる場合じゃない。なんだ、匂いて。変態か。
でも、アーヴェル国勇者物語、勇者パーティー箱推しの私には、今の可愛さは殺す気だろう……。
「ね、カイン。どこにもいかないから」
「ロゼはすぐ、嘘つくから!」
帰りたい。
___遡ること一時間前。
どこか上機嫌なキースに連れられて、カインの部屋へ向かった。
色々と話をして、これからのことを尋ねられた。
ずっと普通だったのだ。うっかり、シャーリアに帰りたい。そうこぼすまで。
まぁ、ともかくカインがベッタリくっついて離れない。
くぅ、可愛い……!! 可愛いよ、勇者。
暫く、このままているしかない。
……これが、普通の少年のカインとローゼリリーの最後の触れ合いになるかもしれないし。
ローゼリリーなら、今、自分の事を好きでいてくれる大切な人が将来凄く重いものを背負うことになるって知ったら。
どうするのがいいのか。
そんなことを考えていて、ふとカインが静かなのに気が付いた。
「カイン?」
「んぅ……にゃぁ……」
え、嘘? 可愛い、寝てる。
え? 寝てるよ? 天使?
なんなの、にゃぁって? え、今、言ったよね? にゃぁって。
「え……可愛いの擬人化?」
にゃぁ……? かんわいいっっっ!!!!
叫びたくなるのを必死で抑えながら、私はゆっくりと背中に回されていたカインの手に触れる。
「……傷だらけだなぁ……」
すっごく痛そう。
あ、そうだ!!
「大切な貴方に癒しを。
『クーウェリーヴァ』」
フワリとした光が、カインの周りを包む。
それを見てから、私はゆっくりとカインの背中に回していた腕を片方解きサラサラの金髪を撫でた。
「一生懸命な所も君の良いところだけど……頑張り過ぎは駄目だよ」
カインの髪を撫でていると、頬に涙が伝うのがわかる。
前世の記憶を取り戻す前から、ずっと大好きで、大切な、私の幼馴染み。
……お母様がいなくなったあと、泣きじゃくって手がつけられなかった私を守ってくれた、私だけの騎士。
……私は、知ってる。7年後、この優しい人は、この世界を背負う勇者様になる。
それまで、あとどのくらい。
「……私は、貴方のそばに居られる……?」
9歳の11月。
ローゼリリーこと、私が死ぬまで、あと、3年。




