少女騎士の初恋
ゲームでのデリア(ナギ)視点。
勇者が旅立った翌日、明朝。
二人だけの修練場に、剣の音が響く。
「デリア、怒ってるのはわかるから落ち着け!」
「……怒ってないし、ルークにはわかんないよっ!」
カインにおいていかれた。
がむしゃらに剣を振りながら、私は悔しさに下唇を噛む。
なんでおいていかれるの?
ーーーわかってる。私が弱いからだ。
なんでもっと強くなれないのか。
『女のくせに偉そうに』
『騎士になれたのだって上官に色仕掛けでも使ったんだろ』
……やっぱり私じゃだめなのか。
『君なら、できるよ。僕の弟子だからね』
だったらなんで私のそばにいてくれなかったの。なんで私を一人にするの、カイン。
ふとルークが剣を降ろした。
「今日はここで終わりにしよう、デリア」
「でもっ……」
「俺は勇者様からデリアのこと頼むって言われてんの」
勇者様。カインが勇者だから。だから私をおいていくの?
違う。ローゼリリー様が生きていたなら、彼は『勇者様』を捨てただろう。
わかりきっていたことだ。私はカインの『唯一』には、なれない。
「っう……ぅっ……っ」
「あ、ちょ、デリア……!」
突然しゃがみ込み泣き出した私にルークが慌てた声を上げる。
「……だいじょうぶ、だからっ……!」
何が大丈夫なのか。自分でもわからないが、とりあえず、口からそんな言葉が出る。
ルークが私の前にしゃがんだのがわかった。
「ったく、カイン……だからあれだけちゃんと言えと……」
カイン。ルークが、そう呼んでいるのをきくのは久しぶりで思わず顔を上げた。
彼の瞳の中の私と目があった。
……あぁ、ひどい顔してるな。
他人事のようにそう思っていると、体が前に傾いた。
目の前に広がるのは、黒。ルークの団服の色。
トントンと背中を幼子をあやすようにたたかれる。
「っ……」
止まりかけていた涙がまた溢れ出した。
……物語のようにキラキラなんてしてなかったし。希望だって一切なかったけど。
それでも、きっとこれは恋だった。
デリア(ナギ)のゲーム開始時の年齢は13歳です。
ルークとカインは同い年です。ルークは、第11部分シャーリアの聖女に出てきたルークです。




