再会〜魔術師アベル〜
「ローゼリリー、なんでお前がここに……」
私の声に応えたのは、アベル兄様ではなくスーリラ公爵……父だった。
「……そんなのどうでもいいでしょう。アベル兄様、お久しぶりですわ」
「あ、あぁ、ローゼリリー、久しぶり……?」
駄目だな、兄様困惑しきりだ。
「そもそも、お前の居た領地からここまでは、何ヶ月かかるか……」
「まぁ! 父様、それがわかっていて私をあんな所へ追いやったのですか?」
煩い父にそういうと、父は顔をしかめた。
私は、主にこの夜会の参加者に見せつけるように涙を流した。何故か、ローゼリリーになって出来るようになっていた嘘泣きである。
まぁ、淑女的にはアウトだが……。
見た目が天使だし、良い方に見たほうが考えてくれるだろう。9歳だしね。
なんとなく、そんな気持ちで涙を流していると、リーが、苦笑した後、頭を撫でてくれる。
「……ローゼ様……」
一流の少年暗殺者には、私の嘘泣きもバレてしまっているようだ。
苦笑いを浮かべて頭を撫でるリーに、父と兄様が怪訝な顔をする。
それを見たリーは、にこりと胡散臭いまでに綺麗な作り笑いを浮かべ、ぺこりとお辞儀した。
「お初にお目にかかります、公爵閣下?
レクイム伯爵家次男、リーデル・レクイムと申します」
綺麗な彼の笑みにご令嬢方が、頰を赤らめた。
わー、女誑しだ〜。初めて見た〜。
一方で、一部の人間……主に伯爵家は、顔を青くしている。
これもゲーム知識だがーーーー。
レクイム伯爵家。
今から、約6年前に他貴族の陰謀で貴族としての地位を実質失った家。
不幸な事故で伯爵が亡くなり、貴族としての職務をこなすことが困難となって地位を追われてしまった。
今でこそその名前は社交界から消えているが、一時は侯爵家にも並ぶと言われていた由緒正しき伝統ある貴族家。
リーデル・レクイムはその家の次男。
リーが隠れ家と言っていた家は、おそらくレクイムのものだ。
「レクイム伯爵ですか。はっ、そんな下民が?
ふざけないでいただきたい。貧困民ごときが王城に立ち入るなど……ローゼリリーお前もいい加減にしろ」
家を継いだだけで大した事をせず、国を荒らしている、愚かな父の嘲笑に、アベル兄様が溜息をつき、会場が凍った。
途端に。
ゲームで聞き慣れた鋭い少女の声が聞こえた。
「良い加減に場所をわきまえてくださいませ。
スーリラ公爵。貴方は、もう少し礼儀を知ってから来てはいかが?」
ぴしゃりと言い放ち、騎士に指示を飛ばしたのは。
ツンデレ姫……第ニ王女スピネルだった。




