シャーリアの聖女様
前半、勇者。後半、皇帝視点で進みます。
「ねぇ、カイン。知ってる? シャーリア街に聖女様がいるらしいよ」
馴染みの者のこえに僕は素振りをやめ顔を上げる。
「シャーリア街に?」
シャーリア。そこはあのクソ叔父が治める領地だったような。シャーリアの聖女様、か。
そう聞いて思い浮かぶのは、ただ一人の大切な人。
綺麗な翠の髪と蒼い目を持った幼馴染。
ロゼ。
クソ叔父によって、僕にもわからない、辺境の地に追いやられた、僕の女神。
「その子さ、緑魔法の使い手らしくってさー」
滅茶滅茶可愛いロゼとの思い出に浸っていると、馴染みの者……ルークの声で、現実に引き戻される。
「緑魔法……?」
ロゼの属性は、緑だった。
嫌な予感がする。あの子はすぐ危険に首を突っ込むから。
「その聖女様、名前は?」
思わず問いかけると、ルークは首を傾げた。
「あれ? もしかして、心当たりある?」
不思議そうな顔をしたルークの口は、この世の可愛いもの、美しいものすべて集めたような、僕の愛しい女の子の名前を紡いだ。
「ローゼリリー様、だってさ」
ロゼ……君は何をやってるのかな?
「その子、僕の従妹だよ。ローゼリリー・コーデリアでしょ? なんで、シャーリアに……」
まぁ、そんなのクソ叔父のせいに決まってるけどさ。
心の中で悪態をつき、思わず顔をしかめていると、ルークは驚いたように目を見開く。
ローゼリリーってだけなら下級貴族にいても、コーデリアが付けばまず間違い無く、スーリラ公爵の娘、突如消えた社交界の天使、だが。
シャーリア街に、公爵令嬢がいるのは明らかにおかしい。
「……なんで、天使様が?」
「わかんない。
……ごめん、ちょっと抜けていい?」
「ーーーあぁ、了解! 団長には俺から言っといてやるよ」
察しの良い友人に感謝しながら、自室へと向かう。
来月の第二王女の誕生祭。
その時までに、ロゼの為に出来ることはしたいから。
☆★☆
「へぇ、シャーリアの聖女様、ね」
「はっ、はいっ!」
真っ赤な肉片となったモノを適当に蹴り飛ばしながら、可哀想なくらい怯えた影の者の報告を聞く。
そんなに怯えなくっても、リリーに関わってない限りは、なーんにもしないのにな。
7歳の子供に大の大人が情けない。
「それでーー? ローゼリリー嬢の報告は終わり?」
「は、はい……」
「なら、消えていいよ」
「失礼、します」
あの子の話以外はどうでもいい。
それにしても。
シャーリアの聖女、ローゼリリー。
聖女様……。
「……アーヴェルに盗られるのもヤダし、会いに行っちゃおっかなー!」
ふと、そんなことを思いつく。
聖女だというならばアーヴェルはロゼを逃しはしないだろう。
なら目を付けられる前に、奪っちゃおう。
最近更新頻度減っててすみません。
カインは只今騎士見習いとして、騎士団見習い修練場にいます。




