電話にて:美紀とエリカ
今日は少し短いです。次の話に繋げる為です。
「もしもし?」
『あっ、起きてた? 七瀬から聞いてると思うけど明日午前10時にギルドホームに蓮見君と一緒に来てよ』
「わかってるわよ。てか本人の前で絶対本名言わないでよ、間違いなく驚くのと、本名って実は言っていいんだみたいな勘違いする可能性があるから」
『わかってるって。それでさっき七瀬から美紀が焼き餅焼いて可愛い事になってるって聞いたけど大丈夫なの?』
「あんたのせいでしょうが! あんたの!」
せっかく通常運転になった心臓と何だかんだ落ち着いてきた頭が忙しく活動を始める。
先に説明しておくと、もうすぐ日付変更時間である。
ではあるが、美紀の感情は喜んだり、ドキドキしたり、不安になったり、ムキになったりと大忙しである。
『それで蓮見君とは何か進展があった?』
その言葉にさっきの光景を思い出して全身の血の巡りが早くなり、身体が熱くなる。
(落ち着け私。今は一人。反撃するなら今しかない!)
「当然よ。私の為に泣いてくれたわ」
本当はキスをしたことを言いたかったがそれは死ぬほど恥ずかしいので美紀の心の中で留めておくことにする。
それ以前にそれを口にすると、恥ずかしさのあまり平常心が保てなくなりそうだった。
『あら、蓮見君優しいのね。そうよね男の子だったらそれくらい優しくないとよね』
「まぁエリカにはわからないでしょうけど、私に抱きしめられた蓮見はとても可愛いかったわよ。それはもう顔を真っ赤にして」
『ちょっとそれはズルいわよ! 私だってまだそこまでしてないのに!』
「うるさいわね。そもそもエリカが色目を使わなければ私もこんな事にならなかったのよ!」
電話越しでバチバチとぶつかる二人。
『んっ? それはあのツンツン美紀ちゃんが焦っているという事かな?』
何かに気付いたように言うエリカ。
「ぐっ。そっそうよ! エリカ綺麗だし……。でも絶対に蓮見は渡さないから!」
『それは私も同じよ。美紀の事は正直可愛いと認めるけど、それでも私も好きになった以上黙って身を引くつもりはないわ』
「『なら、また明日ね』」
最後はお互いを認め合い、電話を切る二人。
電話を切った美紀はお布団の中でもう一度大きくため息を吐いた。
「やっぱりエリカ落ち着いてるな。心に余裕があるって感じがした……。もぉ蓮見のバカぁ……幾ら何が何でも相手が悪いわよ」
今日は色々とあって精神的に疲れてもうクタクタなので、そのまま静かにそっと目を閉じた。




