エピローグ
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後日――ある日。
蓮見たちは正式に勝ったと運営が認めた。
同時にサーバーがキャパオーバーの為止まった事実に対しても非を認めた。
蓮見がプレイヤー名で使う紅と言う名は案外世間に広まることはなく、本人も呑気な物で「まぁ、そうだろうな」ぐらいにしか思っていなかった。変わりに本人が知らない所で広まった名は『神紅の神災者』の異名の方。
なぜならその名は朱音が公の場で認めた名でもあったからだ。
学校ではゲームファンが「嘘だろ!?」「アイツが!?」「あの童貞が!?」などと大いに驚かれるも今はそんなことはどうでもいい蓮見には何一つ響かなかった。
それを機に今まで会話すらしたことがなかった女子からも声をかけられたが何故か嬉しいとは思えなかった。
隣の席は今は誰も居ない。
あの日運営から認めれられた美紀は両親を説得して学校を休学し朱音が持つ別荘に泊まり込みで修行を付けて貰うため飛び立った。
そう海外である。
前にも両親の都合で離れ離れになったことがあるが、ゲームを通して得たかけがえのない時間の数々が今回はあまりにも多かったためにショックを隠せない。
「ごめんね、美紀実はもう家に居ないの。前日蓮見君ともう会えないってずっと大泣きしてたんだけど会うと心が揺らぐから会わない。だから言わないでって口止めされてたのよ」
美紀の母親からそう言われた時は正直ショックを隠せなかった。
窓から見える空の先で美紀はきっと夢に向かって頑張っているのだろうか?
もしそうなら応援してるぜ。
と、心の中で激励の言葉を送る蓮見。
美紀の母親曰く、このまま時期を見て学校を止めて海外で生活を送りながら夢に向かって頑張るらしい。今まで貯めた貯金もあることから金銭面での心配がいらないどころか実は英語も日常会話程度なら難なく話せるハイスペックの幼馴染は多分一人でも問題なく生きていけるだろう。
そして七瀬と瑠香も朱音の判断で昨日学校を休学し海外留学を近々するらしい。
最後の挨拶はなく、Lineでその事実だけが送られてきた。
最後の分には『ばいばい。今までありがとう』と。
詳しく理由を聞こうにも向こうから既読が付くことはなかった。
エリカは夏休み前に大学で出した研究レポートが認められ、アメリカで行われる学会のため渡航。アメリカと言えば美紀が今いる場所。つまり皆はリアルで会えるのか……。皆がそれぞれの道を歩み出した嬉しい時期がちょうど重なった。だから本当は心の底から喜ばなければいけないはずなのに――。
「はぁ~……」
どこか素直に喜べない自分に蓮見は嫌気がさした。
エリカとはもしかしたらと思っていたがあの日以降エリカがゲームにログインすることはなく、美紀や七瀬や瑠香も同じ。三人は噂程度で聞いた話によると大会参加メンバーとして別サーバーでログインしているらしい。確かそのサーバーだけが二つのゲームデーターを共有できる? と蓮見には少し難しい話だったためにようは期待しても会えないってことか、と深くは気にしなかった。
「ねぇ、アンタ大丈夫? 幼馴染なんだし美紀と連絡の一つでもしてるんでしょ?」
美紀の親友の女子生徒――橘ゆかりの言葉に蓮見は。
「してないよ」
と答えた。
そう電話をしても出てくれないのはもうそういうことなのだろう。
美紀は今夢の為に全力を出しており、もう俺を相手にする余裕もないのだろう。
そんな風に思っていた蓮見に橘は。
「アンタはゲームの道を極めないの?」
ふとっ、そんなことを聞かれた蓮見は笑った。
そう言えばあの日イベント前夜――美紀にも同じことを言われたからだ。
「あぁ……俺がゲームをしてたのは美紀に思い出して欲しかったからなだけで」
「なにを?」
「ゲームを楽しむ心」
「ふ~ん」
「だから」
「ん?」
「それを思い出してくれた美紀が夢を追って羽ばたいて、ゲームを通じて出会ったギルドの仲間とも疎遠になった今もう俺がゲームをすることはないかな」
そう――もう蓮見がゲームをする意味は達成された。
そして仲間はもういない。
イベント終わりに認められた少数精鋭でありながら最強ギルドとなった【深紅の実】ギルドは事実上の解散となったのだった。
「そう言えばなんでお前急に話かけてくるようになったんだ? 美紀がいる時は俺を敵対視よくしてなかったけ?」
「あぁ~まぁね」
「まぁ答えたくないなら別にいいだけどさ」
「色々あるの、私にも」
「そっかぁ。そう言えばお前の家今大変なんだって誰かが言ってたな」
その時だった。
「蓮見君! さっきからゆかりちゃんと話てるけどこの問題解けたの!?」
先生の声が教室中に響いた。
問題を当てられ出来たら黒板に板書をすることを忘れていた蓮見は慌てて立ち上がる。
「は、はいぃぃぃいいい! できまひや!!!!」
動揺を隠せないままこの後どうするか困っていると。
「はぁ~。やっぱり普段のアンタは頼りないわね」
と橘が大きなため息を見せながら、ノートに書いた式を見せてくれた。
それとメッセージが書かれていた。
『 ――。
――――。
ばぁ~か。美紀を応援するならしっかりしろ!
もし美紀が今のアンタを見たらどう思う?』
そのメッセージに蓮見はそれもそうだなと心の中で呟いてから黒板に向かって。
そして気合い十分の蓮見は自信満々に。
『 』内の空欄を埋めるため足を動かした。
X=2、Y=3の時『 』内に適切な数字を書き以下の等式を完成させよ。
3XY+6X-4Y=『知らん!!!』
と書いた。
一番簡単で誰でもわかる問題でもいいからたまには華を持たせてあげようと言う先生とそれすらわからないの? ったくしょうがないな~ と言うクラスメイトの思いを無駄にした男がいた。
後で担任の先生に報告がいき、角が生え特別授業を受けたのは蓮見のいい思い出なのかもしれない。。。
今まで長い間お付き合いいただきありがとうございました。
本当にここまで来れたのは読者の皆様がいたからです。
こんな素人が執筆した作品をここまで読んでくれた皆様本当にありがとうございます。
蓮見のゲームをする意味のフラグをいつ回収するか迷っていましたが、去年の夏か秋か少し忘れてしまいましたが(汗)ここにゴールを持ってくると決め、見事ゴールすることができました。
当初は40話程度で終わる予定だった作品がここまで長く続いた事に感謝と同時に再度お礼を申しあげます。ありがとうございます。そう言えば誰かが質問されていたエリカの本名それは『渡辺深紅』です。(深紅)と書いて(しんか)です。登場当初から彼女は蓮見を進化させるヒロイン。すなわち蓮見と美紀に力を貸す存在として二人と行動を共にし始めました。深紅の実ギルドの由来の意味はここにあったのですね~←今更ですが。。。え? 気付いていた? そ、そうですか……それは失礼いたしました笑 ではネタバレも終わりましたし、本作品ではこの辺でお別れとさせて頂きます。最後にレビューを途中でくれた方(名前はここでは伏せさせて頂きますが)とても嬉しく、あの時の声援は多忙で執筆を止めようかと思っていた時に励みになりました。それといつも感想をくれた方(同じく名前は伏せますが)読んでくれているんだな、と感想を通して私に伝わりそれが執筆の励みになりました。お二方にはここで改めて本当に感謝の言葉しかありません。ありがとうございました。皆様もし……次があればその時はまたお会いしましょう。では失礼します。ps:花の品種に蓮やエリカと呼ばれる物があったような気がします……笑




