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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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竹林の森イベント ようやく見せた本気


「覚悟してください」


 走り正面から菖蒲に高速の連撃を叩きこみ、そのまま勢いに身を任せ一直線に蓮見の方に歩いて近づく朱音と小百合に接近していく。


「スキル『アクセル』」


「あら? 菖蒲を抜いちゃったの?」


 美紀の接近に「ふ~ん」と感心するように朱音が呟く。


「小百合?」


「はい」


「このままダーリンの所まで行きなさい」


「わかりました」


 その会話に美紀が力強く地面を蹴って邪魔する。


「させません! スキル『破滅のボルグ』!」


 美紀が持っていた槍を小百合に向けて投擲する。

 腰から白雪の短刀を抜き、そのまま四人がいる敵陣に突撃。

 朱音の前まで大ジャンプをして一気に距離を詰め白雪短刀を下から上へ振り上げる。

 その際、後方に下がって回避しようとした朱音の足を自分の足で踏み、地面に固定する。

 そして逃げれる範囲を限定しての攻撃は、腹部から胸元までを傷つけることに成功する。朱音の身体から赤いエフェクトとが血のように溢れ出る。


 そのまま白雪の短刀を真横から反撃をしようとしていた小百合たちに投げ、美紀は重心を素早く整え攻撃に移る。

 幼馴染がある日見せてくれた異例。

 武器がなくても戦えるその強さ。

 それに憧れ追いかけた姿。


「まさか……!?」


「別に武器がなくても相手を怯ませることは可能ですから」


 空気を切り裂く音と共に美紀の拳が朱音の腹筋を強打。

 続いて間髪入れずに左回し蹴りが朱音を襲う。

 どれもキレがあり、一日二日で手に出来るものではない。

 運動神経が幾らよくても不可能な領域で放たれるソレらは……。


「言わなかった。怖かったから。でももういい、私は――」


 対蓮見対策。

 好きだから絶対に負けたくないし失望されたくない――恋心が生んだ執念でもあった。絶対に自分が強くないといけないという自尊心が生んだ活路。


「紅が届かない領域に既にいる!」


「……ん?」


 コロコロと何かが転がる音が聞こえた。

 それは美紀が朱音に対する攻撃をしながら地面に転がした手榴弾。

 この戦法は第二回イベントで蓮見が敵に囲まれた時よく使っていた自爆エスケープ。

 だけど今の小百合たちには意味がない。

 なぜなら爆発を無効化できるから。

 朱音だって受け身を取り求める結果は手に入りにくいはず。

 それでも美紀に迷いはなく、到底ただの女子高生とは思えない突きと蹴り。

 それらを冷静に受け流す朱音の実力はやはり相当な物。

 だがハイレベルな格闘戦はすぐに終わる。

 手榴弾が爆発し土煙が舞う。


「スキル『――』」


 とても小さい声は爆発音でかき消れ、その中を動く影に狙いを定め小百合と優香と優奈が矢を放つ。


「彼女……速いです……」


「これは……彼のようです……」


「間違いありません……これは私たちと同じです!」


 その言葉に驚く優香と優奈。

 だけど驚くよりも警戒するべきだった。


「遅いわよ?」


 優香と優奈の首が地面に転げ落ちる。

 その時小百合が見た美紀は既に白いオーラはなかった。

 だけど――。


「手榴弾は私たちに対する攻撃とエスケープなどではなく自分のHP調整とその狙いを悟らせないためのカモフラージュですか!?」


「まぁね」


 土煙舞う中からの暗殺者のように攻撃してくる美紀の攻撃をギリギリのところで躱す小百合。もし小百合が神災モードじゃなかったら反応が遅れ今頃妹たちと同じ運命を辿っていたかもしれない。


「菖蒲! ダーリンは後!」


「はい!」


「小百合を援護しなさい」


「わかりました」


 朱音の言葉に乱れた指揮系統が立てなおると思われた瞬間――朱音と合流しようとしていた菖蒲の背後から気配を消し近づく存在が一つ。


「油断しましたね? 私殺気抑えるの得意なんです」


 土煙の中でありながら僅かな敵の気配や音を頼りに状況を判断していく美紀。

 自分の殺気を思いのまま操る彼女の実力は既に学生レベルを超えていた。

 少なくとも菖蒲から見た美紀はそうであって――油断もなにも聞いていた話と全然違い過ぎてわけがわからないでいた。なぜなら警戒していたとはいえ本来なら防御が間に合うようにある程度は不意打ちに備えて行動をしている。だけど蓮見と同じ領域で動ける人物はこの世界では小百合シリーズと蓮見の四人だけ。その思い込みが――生む。


「しまっ――」


「すみません」


 背後から心臓部を的確に貫いた白雪の短刀は菖蒲をこのゲーム世界から排除した。

 美紀の速さの秘密は――。


「神災モード……ダーリンと同じ?」


「はい。厳密には同じスキルを併用しても紅には届きません。でも召喚獣の力を使えば届きます。紅が敵に回った場合、同じ土俵に立つ必要があるとずっと考えていましたので」


 この世界で神災の最大の抑止力と呼ばれる美紀。

 それを自らの力で体現した彼女の本気は――ルフランを超える。


「召喚獣? そんなのいつ……あの時」


「はい。私の召喚獣は憑依型で自身のステータスを上げる能力を持っています。派手さはありませんが、かなり強力です」


「なるほど。例えるならそれはダーリンの神災モードのようで違う、疑似神災モードってわけね。ふふっ、ったく面白いことするじゃない、里美ちゃん反撃行くわよ?」


 ここに来て朱音が微笑んだ。

 蓮見以外の相手に始めて。

 それは朱音が認めたことを意味する。

 自分を楽しませるだけの実力があることを――。

 美紀はこの時知った。

 朱音の微笑みは見ただけで背筋がぞっとするぐらいに巨大。

 そんな相手にいつも笑顔で楽しそうに立ち向かう彼はやっぱり凄いと。

 自分は今勝ち負けを最優先している。

 とてもじゃないけどこの状況を楽しむ余裕はない。

 だけど蓮見はいつも楽しんでいた。

 何だかんだいつも心には余裕があったのだろう――悔しい。

 朱音を前にしてまさか自分の方が弱かったと知って。

 心の余裕それは自分にどれだけ自信があるかに比例するとしたら。

 もしそうなら私がゲームを通して益々恋心が強くなった理由がわかる。


「ふっ、やっぱり紅は凄いや。最後まで私に驚きをくれる」


 自然とこぼれた笑みは悪いものじゃなかった。


 槍の回収をする余力はないと判断した美紀はそのまま白雪の短刀を手にけむり玉を投げ朱音に奇襲を仕掛けた。




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