竹林の森イベント 悪魔の子とfase3を止めに行く者
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敵の意識がこの戦場で最も危険な男に向いた瞬間を美紀たちは見逃さなかった。
全員が蓮見の一撃を受け既にHPが赤色になっているが、回復するよりも先に流れを作ると言う意味でリスクを承知で突撃。
美紀とソフィと綾香。
そして。
ルフランたちが瑠香と七瀬に合流しそれぞれ攻撃を仕掛ける。
運がよいことに一番蓮見を舐めていた小次郎の姿はなかった。
隠れている様子もないことから、どうやら爆発に巻き込まれて天に帰ったと考えるのが一番しっくりとくることからルフランたちはそう考え、戦力的に少人数で消耗が激しい方の瑠香と七瀬のチームに合流するのだった。
「菖蒲!」
美紀の殺気にいち早く気づいた朱音が視線をあちこちに飛ばして味方を探して叫ぶ。
「わ、わかってます!」
初めてその身で神災を受け、なんとか防御系統のスキルとアイテムを使い耐えた菖蒲。
だけどHPとMPを大きく消耗し回復をしようとしたタイミングでの襲撃に完全にリズムが狂わされてしまう。
さっきまで完全に戦いの流れを支配していた。
だけど蓮見の容赦ない攻撃に流れを全部持っていかれリセット。
もっと言えば初めての経験に身体と脳が順応していない。
そのため対処に手間取る。
だけど菖蒲から見た敵は既に環境に慣れているのか早くも順応を始めているように見える。
その焦りが差となり――普段なら絶対にありえない現象を生み始める。
「今まで見たことがないアレも気になるけど……ッ」
機動力が高い瑠香の攻撃を双剣で受け流しながら蓮見の右手にある物の警戒を強める。
「小次郎は?」
その問いは菖蒲の疑問であった。
幾ら想定外とは言え、たったの一撃で死ぬのは考えにくい。
だけど自分や朱音より爆発の中心部に比較的近かった小次郎がいないのなら……。
と考える菖蒲の心は既に波乱状態で表情には出さないものの蓮見と言う人間が作り出す一撃にそこまでの威力があるのか? そこまで警戒しなければならないのか? と些か納得がいかない様子。
「わかりません」
「ほら言ったじゃないあのバカ。油断するなって」
嫌な予感が当たったと言わんばかりに美紀たちの攻撃が届く前に動き始め、少し離れた所で戦闘を始めたばかりの菖蒲がいる場所にやってくる朱音。
当然それを追いかけるようにして美紀たちもやってくる。
「朱音さんこの後どうしますか? どっちを優先しましょう」
先陣を切った瑠香のフォローにやってくるリュークと七瀬に反撃の一撃を加え朱音は菖蒲と背中合わせになる。
「そんなの決まってる! ダーリンをここで潰すわ!」
「ならここは私が引き受けましょう」
「お願い。ここからはこの子たちの審査は貴女に任せるわ。あのバカは死んだっぽいし。それでダーリンは私が審査する。っても向こうが耐えれればの話しだけど」
「えっと……一応確認ですが手加減はしますよね? 彼はまだ高校生です……し……?」
珍しく微笑み始めたと声を聞いただけでわかった菖蒲の言葉に朱音がいつもより高いトーンで答える。
「と・う・ぜ・ん♪」
「あっ……はい。わかりました……」
言葉と行動が一致しなくなった朱音にもう何も言うことはないと自分の使命を全うすることにした菖蒲が朱音の後をそのまま追いかけようとする美紀たちの前に立ちはだかりギアを一段階あげ、抑えていた殺気を解放し美紀、七瀬、瑠香、ルフラン、リューク、ソフィ、綾香、葉子、スイレンの注意を引き付ける。
「ここからは少々力を込めますので皆さんお覚悟を。スキル『アクセル』」
次の瞬間。
菖蒲が敵陣の真ん中に斬りこみ目にも止まらない速さで全員を攻撃していく。
赤色のHPがさらにギリギリまで減らさていく美紀たちではあったが、
「ようやく本性見せてきたわね!」
菖蒲の攻撃に合わせ槍で攻撃を受け止め、その隙にルフランとリュークが反撃。
「甘いですよ? スキル『ウォーターシールド』」
水の壁が二人の行く手を阻み菖蒲を護る。ならばと綾香とソフィが上空から攻めるも味方の攻撃にほんの一瞬美紀の気が緩んだ隙をついて二人に突撃し返り討ちにしていく。ジャンプしたことで七瀬が遠距離攻撃の準備に入ったタイミングで持っていた双剣をクナイのように投げ牽制。回避行動に移らせたことで物理的に攻撃不可にさせたタイミングで反応がもっとも遅れていた葉子とスイレンに近づきそのまま女同士ということもあり息を乱すことを意図した空気を切り裂く音を纏って放たれた心臓を狙った突きからの投げ技で地面に押し倒して二人を無力化してから先ほど投げた双剣を回収する菖蒲はやはり実力者と認めざるを得ないわけだが、それでも菖蒲の集中力はいつもより欠如していた。幾ら朱音に後を任せたと言っても蓮見の一撃がどうしても頭の隅から離れないのだ。菖蒲の中で最も警戒をしないといけない存在があまりにも未知過ぎて不気味だからである。そしてこの戦場で朱音が最強ならその朱音を倒す可能性が最もあるであろう男が――蓮見かもしれないと思ってしまったのだ。だから無視したくてももう無視できない存在になってしまった。蓮見の作り出す一撃はどの世界にも存在しえなかったオリジナルにとても近く、反応が遅れれば自分たちですら小次郎と同じ運命をたどるのだと直感でわかってしまったから。目の前の彼ら彼女らはその一撃すら利用してやってくる悪魔の子だと、この時菖蒲は思い、そしてそれに敬意を表して七割。そうだ七割。まで力を解放し実力者として立ちはだかることにしたのだった。
だけどこの時菖蒲は気づいていなかった。
彼ら彼女らもまだ正真正銘の本気ではなく、多くのスキルを始め切り札を温存し相手の力量を見極めていただけであることを。
「いい目つきになりましたね」
憂鬱な仕事だなと思っていたが、どうやらそれは杞憂に終わったと微笑むのであった。どうやら学生相手では物足りない、それが勘違いであることには気付いたらしい。




