ワクワクとドキドキの観客席と運営室!?
全ての行動を上から見ていた者たちは息を呑み込んだ。
ここに来て正しく理解したからだ。
「まだイベント始まったばかりだよな?」
「そうだな」
「貴方の言いたいことなんとなくわかるわ」
「私も。フィールド破壊なんて無茶苦茶をするプレイヤーはきっとまだ奥の手を残している気しかしないって」
「俺的には小百合シリーズの攻撃だけでなくあの突如襲い掛かる神災にも咄嗟の反応で的確に対処してるあのメンツをアイツが従えている時点で今回の【神災の神災者】が無敵にしか思えんのだが……」
などと観客席では早くも蓮見がイベントの主導権を握り小百合シリーズを圧倒しているように見え始めていた。客観的に近くで見た者たちにはそう映っていた。実際にアナウンサーもどう実況していいのか戸惑っている理由は早くもイベントが終わりそうな雰囲気がなんとなくしていることもあるのだろう。
だが――そう思わない者たちもいた。
それが今回【神災の神災者】を力でねじ伏せると心に誓った者たちだ。
沢山の機器が動き、空調管理がされた一室。
そこはゲームの運営をメインでしている五人がよく仕事で使っている部屋。
と、言っても今回のようにやることをやった後では次の仕事がくるまでは暇なので休憩室ともなっていたり、忙しい日には仮眠室になっていたりと多くの用途で使用される部屋でもあった。
今はイベントの結果が出るまでは暇なので観戦部屋として使用されている。
そこでは数分前から五人が紅茶と茶菓子を楽しみながらイベントを見守っていたのだが、
「あれ? ちょっと待って。なんかもうイベントクライマックス迎えてない?」
「そんなわけないでしょ」
「なんかサーバーがさっきからイエロー飛び越えてレッドになろうとしてるんだが」
「サーバーちゃんだって黄色の日や赤の日だってあるわよ。私だってそういう特別な日ってあるし」
「いや人間のお前と同じ発想はあかんだろ」
「それに”さゆりん”たちはまだ元気だし大丈夫よ、きっと」
「でもお前……あの男もまだ元気にしか見えないぞ?」
「そう? ならまだイベントはクライマックスを迎えないだろうしもう少し落ち着いて見守りましょうよ」
焦る男に対して余裕の女。
この差は一体なんだろうか。
同じ立ち位置でありながら、親密な二人ですら既に意見の食い違いが起き始めた運営室。そこには四人のメンバーと統括する《《男が》》一人いる。それが社長に見栄を張り今回のイベントを企画した主犯とも呼べる――《《責任者》》である。
「そうだぞ。まだイベントは始まったばかり少しは余裕を持ったらどうだ?」
各々が仕事で使う席に座っているため、後方から聞こえてきた責任者の声に反応するようにして前方にあるモニターから椅子を回転させ身体の向きを変える四人。
「今回は社長と関係会社の社長も別室にいるんだ。俺たちの貫禄というものをだな――」
責任者の言葉を遮るようにして。
「あんた……なんでそんなに汗かいてるの?」
「なんで扇風機付けてんだ?」
「この部屋今二十三度で熱くないよな?」
「ハンカチびちょびちょじゃん……」
四人が責任者に対して心情をぶちまけた。
「ば、ばかを言うな! 俺はま、まっ、まだまだ余裕だ! それに今回は朱音さんたちもいる。俺たちが負ける要素はないんだからな!」
はぁ~、とため息が重なる四人。
何故だろう、どうしてこんなにも頼りがない男が上司なのだと……。
そう思わずにはいられない四人だが責任者の言っていることは全て事実なわけで大人げないと内心思うほどに今回はかなり難易度を上げていた。簡単には攻略出来ないし突破口も見つけれないほどに。だから今回は勝てなくても実力を証明できればプレゼントを与えることにしたわけだが。
ただ異次元を超えし男相手だとこれだけやってもどこか不安が残るのは皆同じだった。
「そうイベントの難易度は間違っていないし問題ないはずだ」
「問題はそこじゃないって感じかしら?」
「そうだ。地下にはマントルがあってだな……序盤でこれだと過去を見るに終盤に掛けその倍は最低でも負荷が掛かる展開がきてだな……もしそうなると……」
その言葉に苦笑いしか出来ない四人。
どうやら現実は大人の想像すら超えた方向に向かって行く可能性が大いにあるらしい。
「落ちるのか? やっぱり今回は落ちるのか?」
「いや多分だが……計算上アイツが変な方向に進化をしても大丈夫なはずなんだが小百合たちがアイツと同じ戦術を使うとアイツが倍の力を使うような計算になるってことをだな……今気づいた!!!」
四人から視線を外してチラッとモニターの先に居る小百合たちがしようとしている光景を見て責任者がドヤ顔で四人に視線を戻して伝える。
「だけどそうなった場合でも希望はある。まぁ後は紅茶でも飲んで祈るとしようじゃないか……俺たちの秘密兵器《力の象徴》の|秘密兵器である《小百合シリーズを超える》朱音さんがあの男を完全制御してくれることをさ」
既に小百合を筆頭に三人の巫女が反撃の一手を打ち始めていた。
蓮見の神災を受け切った三人の一手は神災返し。
空に浮かぶ巨大な三つの魔方陣は七瀬が先ほど蓮見に与えた力そのもの。
サブの武器が短剣と杖の巫女は素早く武器を持ち換えて今まで蓮見しか扱うことをしなかった力を三人で協力をすることでその倍以上の力で各々が扱えるように調整されていた。
「「「さぁ、挑戦者の皆さん行きますよ。水爆!」」」
三人の言葉は運営室にいる五人の耳にハッキリと聞こえる。
HPにまだ余裕がある三人が見せる笑みはきっと彼女たちも戦いのギアを上げ始めたことを意味しているのかもしれない。




