隣にいて欲しい存在
今までどんな時も――そうだった。
周りが勝てないと思っていた相手に大胆不敵に挑み、沢山の壁を幾度となく乗り越えてきた。
そんな蓮見をずっと近くで見てきた美紀の眼は動揺した蓮見の目をしっかりと見ている。
「私はね、別に今ははすみぃが色々な人に惹かれてもある意味仕方ないってもう諦めてるしそれがはすみぃって思ってるから、またか……はぁ~、ぐらいにしかもう思わない」
容赦ない言葉に蓮見の心が締め付けられる。
まるで目に燃えない何かに心臓を掴まれた気分になった蓮見は自業自得だよな、と心の中で反省する。
美紀も自分の言葉になにかを思ったのか早くも少し熱が収まり始める。
相手のことをよく見て理解しているからこそ、多分感情的に怒るという行為だけではなにも解決しないし無駄だと諦めたのかもしれない。
「別にはすみぃは今誰かと付き合っているわけでもないし目移りするだけならなにも問題ないと思うよ? でもね、私は私の隣で活躍するはすみぃが好き。はすみぃは朱音さんに負けて朱音さんの隣にいたいの?」
その言葉は蓮見の目に見えない場所に何かを語りかけられたように奥底に響く。
それは蓮見にとっては、まるで離れたくないと美紀が言っているように感じられる言葉のように感じられた。
前から好きで今も好きな相手は美紀のはず……。
でも最近自分が誰を好きか分からなくなってきていたのもまた事実。
それは冗談だとわかっているのだが周りの女の子たちが普段なら高嶺の花のはずなのになぜかそれでも自分と仲良くしてくれるから。
それに可能性をちらつかせてくるから。
それが本気か冗談かは置いといて。
ただ恋愛に初心な男にとっては惹かれるだけの魅力がりそれらは何かしら皆違う物であるというわけで。決して悪意があってそうなっているのではない。相手のことを知れば知るほど相手の良い面や今まで見えなかった面がありそれがまた魅力的な一面を持っていたりするのでそう感じるだけ。言い方を変えれば相手の本質を今まで以上に見れているというわけで大きく言えば人として成長したからこそ、新しい悩みがいつの間にか生まれていたわけで。
もしかしたらそれは恋ではなく人として惹かれているのかもしれないが、まだ若人の蓮見にとってはそれがいまいちわからない。ただ大きな部類で好きか嫌いかの二択で言うなら皆好きと言えるだけで。
だからかもしれない。
美紀の夢を応援すると言いつつ朱音の言葉にあんな反応をしてしまったのは。
「私はねはすみぃが嫌じゃないならこれからもずっと一緒にいたいと思っているよ?」
そんな蓮見に真っ直ぐに自分の気持ちをぶつけてくる美紀。
「だって私にとってはすみぃはね特別な存在だから。だから今回は勝つよね?」
彼女の言葉に嘘はなく、躊躇いはなかった。
なぜなら彼女の言葉は全てが本音でそれを望んいるから。
いつもなら恥ずかしくて絶対にこんなに面と向かって素直に言う事はできなかったはずと思う美紀。
でも朱音の行動力を前に美紀は知らず知らずのうちに焦りを覚えていた。
このまま自分がモタモタとしていたらいつか本当に……と。
後悔するぐらいなら羞恥心に蓋をして頑張って攻めあるのみと。
もう二人だけの駆け引きなどしている場合ではないと、美紀の中で何かが切り替わるきっかけがさっきあった。




